表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/16

第7話 場違いな客と…

 街の中、様々な店の並ぶ商店通りの一角にある、可愛らしい装飾と落ち着いた雰囲気のカフェにて、場違いな男が一人紅茶を楽しんでいた。

 店主の大柄な男は、二対の太い腕を組んで難しい顔でその客を油断なく睨み、店員は距離を置いて様子を伺っている。


 カランッと扉が開かれ、付けられたベルの音が店内に響く。


 入って来たのは、黒く長い髪を紐で束ね、額の片側に角をもつ女性だった。

 動きやすい軽装の鎧と腰には刀を装備した女性は、場違いなその眼帯をつけた緑の大男を睨みつけ近寄る。


「アンタみたいなのが、ここで何をしている」

「茶を楽しんでるだけじゃねぇか。そう怖い顔で睨むなよ」

「……迷惑な客が来ていると聞いて来てみれば……」

「なんもしてねぇってのに、ひでぇ言われようだな」


 カラカラと笑う緑の男。


「自分の格好を見ろ。山賊の仕事帰りにしか見えないぞ」

「はっはっは!ちがいねぇ。……実のところ、オメェさんに会いたくてな」


 うって変わって、神妙な様子でそう言う眼帯の男。女性は訝しげな顔で首を傾げた。

 「座りな」と促され、対面の席に座る。


「昨日の仕事でな、オメェさんが探していたのを見つけたかもしれん」

「なに?」

「赤い髪をした混血の嬢ちゃんを、いつもの商館に売り渡した。今頃は、身綺麗にされてんじゃねぇかな」

「……その娘が、ウィステリアだと?」

「あぁ…確かそんなふうに呼ばれてたぜ?」


 女性は、眉間に皺を寄せ考えこむ。


「……一体、何が目的だ?」

「そう怖い顔で睨むなよ。俺ぁ単に、オメェさんのファンなだけさ。鬼姫」

「黙れ。次その名を口にしてみろ。その片目を潰してやる」

「おー怖っ」


 肩をすくめ、目を逸らす眼帯の男。


「ヘカトンケイルの旦那!茶をもう一杯頼む!緊張で喉が渇いてしかたねぇや!」

「オッズ、あまりツバキを揶揄うのはよしなさい。──それと、私のことを"旦那"って呼ぶんじゃない。ヘカティって呼びな」


 そう言って、凄みをきかせながらも、慣れた手付きで紅茶を入れる、店主ヘカトンケイルことヘカティ。


「すまない。私の分も頼む」

「はいはい。…ツバキ、あまり熱くなっちゃダメよ?」

「わかっている」


 険悪な空気の中、運ばれて来た紅茶に口をつける二人。


「ああ…それともう一人、妙な野郎も売ったんだ」

「妙な野郎?」

「ああ。オメェさんと同じ、黒い髪のガキでな。てんで素人だったんだが、やたら頑丈でよ。見た目は人族だったんだが……そうだ、情報を売りに来た奴いわく、戦いの神だそうだ」

「なんだそれは……」


 ますます、胡散臭いと言いたげなツバキ。だが、オッズは構わず続ける。


「素人なりに、こっちの隙を見て斬りかかってきやがってよ、それなりに肝は座ってやがった。それに、首を折る寸前まで締め上げたつもりが、まるで生の丸太でも握ってるみてぇな感触でよ……ありゃあ、ひょっとするかもしれんぜ」

「…………」


 ツバキはオッズを睨みつけたまま、ポケットから金貨を一枚取り出し、テーブルへ置いた。


「ヘカティ。悪いけどつけといてくれ。急ぎの用が出来た」

「わかったわ。気をつけていってらっしゃい」


 ツバキは答えず、店を後にした。


「───っはぁ!!やっべぇ……死ぬかと思ったぜ……」


 息を大きく吐き出しながら、脂汗を浮かべるオッズ。その手は少し震えていた。


「そう思うんなら、なんでわざわざあのコを挑発するようなマネするのよ」

「今更俺がアイツにヘーコラしたってウソ臭えだけだろうが。これでいいんだよ」

「変な意地なんてはらなきゃいいのに。バカね」

「謝ったところで、アイツは許したりしねぇし、俺も許されるとは思ってねぇ……ただ……」


 そう言いながら、カップの中で揺れる紅茶を眺めるオッズ。


「ただ?」

「……これで少しは、あの敵意を鎮めてくれりゃあ、有り難えんだがなぁ……いつ斬られるか怖くて仕方ねぇ……」

「……自業自得でしょ、それ」


 ヘカティの言葉に、オッズは笑って「違いねえ!」と返した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ