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第2話 穢れた巫女

食事は終わり、俺はウィステリアから詳しい話を聞いた。

 現在、この村は外からやって来る人に近い姿をした、亜人と呼ばれる奴らの奴隷狩りの被害にあっているのだそうだ。

 村人達も対策を講じてはいるそうだが、相手の方が数が多く、徐々に戦える者は減らされ、攫われる者は増え、かなりの危機的状況だと思われる様子が聞かされた。

 藁にも縋る思いなのか、それとも本当にそう信じていたのかはわからないが、対策の一つとして、村で信仰されている"戦いの神ガゼル"の再臨の儀が執り行われ、そして現れたのが俺だった、らしい。

 ウィステリアはそのガゼル神を祀る、村最後の巫女の血族なんだそうだ。


「期待させて悪いけど、俺がその戦いの神だとは思えないな」

「……そう…ですか……」


 かなり意気消沈してる…いや、俺がさせてしまったのか。しかし、適当に調子をあわせても神様のフリなんて、ましてや戦いの神の役割ロールなんて出来る気がしない。


「あー…そういえばさっき、混ざりモノの巫女って言われてたけど……」


 話題を変えようと気になった事を聞こうとして……怒るような、泣いているような顔になったウィステリアを見て、俺は自らの失敗を悟った。


「ゴメン!言い訳だけど、俺ホントなんもよく分かってなくてさ……」


 こういう時は素直に謝るが吉だ。


「……いえ、こちらこそ申し訳ありません。神様に気を使わせてしまいました。わたしは……穢れた亜人の血が混じった、不出来な巫女なのです……」

「穢れたって……」

「巫女であった母は、奴隷狩りに捕らわれ、父はそんな母を買ったのです………父は……亜人…でした……」

「…そう、なんだ……」


 つまり……そういう事、だよな……。

 ウィステリアは、亜人とのハーフって事か……。


「でも、それで穢れた巫女だなんて……ウィステリアは何も悪くないだろ?」

「……そう…かもしれません。ですが、神聖なる巫女の血筋に…亜人の血が混ざってしまった……わたしは、罪の子なのです……」

「だからそれは──」

「ごめんなさい。…いえ、ありがとう…ございます……わたしは、大丈夫です」


 そう言って、微笑むウィステリア。

 なんだそれは。

 ありがとう?なにがありがとうなんだ。

 さっきのおっさんの言葉を思い出す。『混ざりモノの巫女でもなんとかなるもんだな』だと?

 神に縋って、その再臨にウィステリアに頼っておきながらなんて言い草だ。

 ……ああ……だから、彼女は先程あんなに意気消沈してしまったのか。

 俺が、神様じゃないとなれば、その血のせいだと責められるのか。

 まだ、そんなにウィステリアの事は知らない。だけど、さっきの短いやり取り、彼女の態度、瘦せ細った手足。差別を受けているのは、間違いない。

 ──ふざけてる。


「気が変わった。俺が─俺はガゼルだ。

 巫女ウィステリア、何をして欲しい?」

「え…?」

「ほら、俺は神様なんだろ?なら、巫女の君が願い事を俺に言うのは当たり前じゃないか。まぁ、残念ながら神様の力はもってないから、そんなに大した事は出来ないけど……」


 記憶は未だに曖昧なままだけど、それでも出来る事はあるはずだ。

 俺は、この娘の力になってやりたい。


「えと……それでは、村にやって来る亜人を、追い払って下さい。お願い申し上げます」

「わかった。出来るだけの事はやってみるよ。……こんな情けない事しか言えない神様で、ゴメンな」


 安請け合いし過ぎだろう。そんな風にも思う。

 だけど、構うもんか。

 俺を()()()()()()()のだから、少しぐらい贔屓したっていい。

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