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Extended Universe   作者: ぽこ
人と人との結びつき

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134/135

単位ってどうやって集めるんだっけ…? -1

毎週、月曜日と金曜日に更新中!


ルネアは学園から貸与された個人研究室に籠り、魔法薬の調合に没頭していた。

理由はいくつかあるが、最も大きいのは単位取得のためである。


新薬を開発し、レポートとして提出し、それを販売へと繋げる。さらに流通経路や量産体制まで整え、広く普及させることができれば、一気に大量の単位獲得が見込める――その見立てだ。

もちろん手間も時間もかかるが、一定の段階まででも十分な評価は得られると踏んでいた。


そしてもう一つは、大会出場に向けた準備だ。

大会では自作の魔術薬の使用が認められている以上、準備しておいて損はない。何より、ここはルネアの得意分野である。


そうして数日間、研究室に籠りきりの生活を続けていると、リリアンが困ったように眉を下げながら、食事と共に新しい情報を運んできてくれるようになった。

姉の世話を焼くのはさぞ大変だろうと、どこか他人事のように思いつつも、推しに世話をされているこの状況を、ルネアは内心で密かに喜んでいた。


「お姉さま、準備はいかがですか?」


「ええ、順調よ。一応、身体を大きく動かすようなことは避けた方がいいと思って、この子たちを使うことにしたの。」


そう言ってリリアンに差し出したのは、新たに調合したポーションだった。


________________________________________

透明化霊薬インビジビリティ・エリクサー

 使用者の姿を一定時間不可視化する。攻撃時、または被弾時に効果は解除される。

________________________________________


提出用のレポートをリリアンに見せると、彼女は感心したように瞳を輝かせた。


「まぁ……やっぱりお姉さまは天才だわ!」


「ふふ、ありがとう。でも、まだ不完全なのよ。効果時間が一分から十分までばらつくの。使っていると、切れそうなタイミングは感覚的に分かるから、致命的ではないのだけれど。」


「それでも、すごいです!!」


興奮気味のリリアンの頭を優しく撫でながら、その反応に癒やされつつ、ルネアは黙々大会の準備を進めていった。



***



大会当日。

晴天の下、ルネアたちは大きなドーム型の会場へと足を運んでいた。


観客席はすでに人で埋め尽くされ、あちこちから賑やかな声が響いてくる。教師や生徒だけでなく、その関係者や貴族たちも集まっているらしく、かなりの規模だ。

ルネアにとって見知った顔は多くないが、それでも何人かは見覚えがある。プレイヤーだけでなく、国の重鎮たちの顔は事前に雑誌で確認していた。


「凄い数……。」


思わず漏れた言葉を拾ったのは、隣にいた一人の女子生徒だった。


「と、とても緊張します……。」


手を小さく震わせながらも、懸命に笑みを浮かべている。

ルネアも微笑み返しつつ、視線を会場へと巡らせると、すぐに愛らしい妹の姿を見つけた。


「ええ、とても緊張しますわね。それでも、リリアンの期待に応えなくてはなりません。」


「……! 本当に仲が良いのですね!」


「ええ。リリアンはとてもいい子で、いつも私を気遣ってくれるのです。でも、もう心配はいらないくらい体調も良くなりましたから……それをきちんとお見せしなくては。」


「素晴らしいです……! 共に頑張りましょう!ルネア様!」


溌剌とした笑みを浮かべた彼女は、ぎゅっと両手を握りしめながら力強く頷いた。


「ええ、その……」


「あ、申し訳ありません。まだ名乗っておりませんでしたね。私はララーネ・シルクットと申します。」


「まぁ、ご丁寧にありがとうございます、ララーネ様。」


軽く礼を交わしながら言葉を交わしていると、場内にアナウンスが響き渡った。

すでに大会は進行しており、フィールドでは二組の試合が同時に行われていたが、どうやら決着がついたらしい。次の対戦カードが読み上げられる。


【第三回戦 一組目――ララーネ・シルクット 対 シャーリー・ポッズ。二組目――シューベルト・ウッズ 対 ヘイン・ランク。出場選手は速やかに試合場までお越しください。】


「あ……私の番です。それでは、行って参ります!」


ララーネは緊張を滲ませながらも、しっかりとした足取りで試合場へと向かっていった。どうやら出番が近いことを見越して、あらかじめ登場口付近まで来ていたらしい。

ルネアは小さく手を振って見送ると、押し寄せる熱気と歓声から一度離れるため、控室へと戻ることにした。


控室には大型のモニターが設置されており、出番を控えた選手たちが数名、それぞれ静かに時間を過ごしている。男女別になっているらしく、この部屋には女生徒のみが待機している。選手以外は立ち入りを許されない空間のためか、室内にはどこか張り詰めた空気が漂っている。お嬢様といえど、皆、本気だ。


ルネアは、その張り詰めた空気にも臆することなく、空いているソファへと腰を下ろし、モニターに映るララーネの試合へと視線を向けた。

どうやら彼女は風属性を得意としているらしく、複数の風魔法を組み合わせながら戦闘を展開している。対するシャーリーは水属性が主体のようで、攻撃魔法を中心に押し込む戦い方だ。


属性相性としては拮抗している。風と水は互いに干渉し合うものの、決定的な優劣は生まれにくい関係だ。つまり、勝敗を分けるのは純粋な技量と戦術になる。


現状、ララーネは防御を主体に様子を見ているのに対し、シャーリーは攻撃一辺倒だ。このまま仕留めきれなければ、魔力を消耗しきったシャーリーが不利に傾くはずだと、ルネアは冷静に見極めていた。実際、ララーネの方にはまだ余力があるように見える。


魔法制御がやや粗いシャーリーは、その弱点を理解しているのだろう。だからこそ攻撃を止めず、相手に考える余裕を与えない立ち回りをしているのだが、ララーネの方が一枚上手だった。小規模な竜巻を発生させて砂埃を巻き上げ視界を奪うと、同時に背後にも竜巻を発生させて逃げ場を封じる。シャーリーはそのまま身体ごと巻き上げられ、空中で体勢を崩したまま落下し、その瞬間に試合終了の合図が鳴り響いた。


中々に面白い戦い方だと、ルネアは小さく頷く。だが、すぐにアナウンスが思考を遮った。ついにルネアの名が呼ばれたのだ。胸の内で弾む気持ちを押し隠しながら、ルネアはゆったりと立ち上がり、優雅な足取りで試合場へと向かっていった。



ルネアが場内へと姿を現すと、会場は再び大きな歓声に包まれた。微笑みを浮かべたまま観客へと軽く手を振り、遅れて姿を見せた対戦相手へと視線を向ける。


「よろしくお願いいたします。」


にこりと微笑めば、相手は一瞬怯んだように視線を泳がせながらも、きちんと礼を返してきた。律儀な性格らしい。対戦相手――フレア・リーブスは、赤い髪と瞳を持つ少女で、開始の合図と同時に燃え盛る火炎の塊をルネアへと放つ。


ルネアは一歩も動かず、手を軽く前に出した。

「ゲイル・インパクト」で突風を生み出し、そのまま火炎を押し返す。慌てて回避したフレアの動きを見極め、続けて「クレイ・バインド」を発動。地面から伸びた土が彼女の足元を絡め取り、その動きを封じた。


さらに間髪入れず、「アイシクル・ストライク」。放たれた氷の礫はフレアを囲うように寸前で止まり、その瞬間、試合終了の合図が鳴り響く。


【勝者、ルネア・ルナヴェイル!!】


アナウンスと共に大きな歓声が上がり、ルネアは一礼するとそのまま場内を後にした。内心では、どこまで手加減できるかと冷や冷やしていたが、基本スキルである「魔力操作」の熟練度が上がったおかげで、思い通りに制御できたことに安堵する。


ルネアが控室へ戻ると、先ほど試合を終えたララーネの姿が目に入った。彼女は瞳を輝かせながら、すぐにルネアの元へと駆け寄ってくる。その様子は、お嬢様というより無邪気な少女のようだ。


「ルネア様、流石です。素晴らしい魔法制御に加えて、中級魔法をあっさりと連発してしまうなんて……本当に見事な戦いでした!」


「まぁ、ありがとうございます、ララーネ様。ララーネ様もとても素敵な試合でしたわ。トルネードを二重に操るのは大変だったでしょう?」


トルネードは初級の風魔法だが、威力は中級に匹敵することもある。本来は放ちっぱなしで使われることが多く、制御は難しい。だが彼女はそれを自在に操り、さらに二つ目を相手の背後へと発生させていた。位置を正確に指定できている証拠であり、評価としてはかなり高いはずだ。


もっとも、プレイヤー視点で言えば、イメージさえできればスキルが補助してくれるため、それほど難しいことではない。しかしNPCにとっては話が別だ。高い制御力が求められる技術であり、その差は明確だった。ルネアは授業を通して、その違いを理解していた。


「トルネードは、私が一番得意としている魔法のひとつなので、たくさん練習したんです。」


「そう。しっかり結果に表れていましたわね。とても素晴らしかったです。」


「ありがとうございます!次も頑張ります!」


溌剌と笑うララーネの表情が、場内アナウンスと同時に固まった。


【第六回戦 一組目――ララーネ・シルクット 対 ルネア・ルナヴェイル。二組目――――】


「へ……?」


「まぁ、ララーネ様。よろしくお願いいたしますね。」


にこりと微笑むルネアに対し、ララーネはがっくりと肩を落としながらも、小さく「はい……」と返し、共に試合場へと向かった。


結果は――当然のように、ルネアの圧勝である。


開始と同時にララーネは三つのトルネードをルネアの周囲へ展開したが、ルネアはそれを「ゲイル・インパクト」で一息に吹き飛ばす。制御を失った竜巻はそのままララーネ自身へと襲いかかり、勝負は一瞬で決した。


本来であれば、竜巻の制御を奪うことも可能だったが、そこまでする必要はないと判断し、あえて力で押し切った形だ。それでもルネアにとっては、十分に満足のいく結果だった。


竜巻が突風に打ち負けるという予想外の展開に、会場のあちこちから驚きの気配が漏れたが、ルネアがそれに気が付くことはなかった。


そうして魔法大会は、いよいよ終盤へと差し掛かっていく。


次回:単位ってどうやって集めるんだっけ…? -2


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