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Extended Universe   作者: ぽこ
人と人との結びつき

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単位ってなんだっけ…? -2 

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「そっか、それならやっぱり難しいかな。一大イベントだし、評価点も高いんだけどな。」


「殿下はご出場なさるのですか?」


「私かい?……ああ、一応出る予定だよ。兄上が剣術大会、私は魔術大会に。王族としてある程度の実力を見せるいい機会だからね。」


つまり、出場すれば彼とも対峙する可能性が出てくるわけで、それなりに気を使わないといけないだろう。そういった気を遣う戦いには、あまり向いていない。

ルネアは内心で大会出場を見送る方向へと傾けた。


「ああ、そういえば……ルシアンも魔術大会に出る予定だよ。君たち、知り合いだったよね?」


その名前に、ルネアはぴくりと反応する。


「はい。……ルシアン様も、魔術大会に……出場、なさるのですね。」


(へえぇ~……♪)


思わず上がりそうになる口角を必死に抑え、両手で口元を隠す。そんなルネアの様子を見た第二王子は小さく首を傾げた。


「不安かい?」


不安どころか、むしろ面白い展開を思いついてしまったルネアは、どうにかして大会へ参加できないかと、先ほどとは真逆の思考へと傾いていた。

いつも話術で押し込み、権力で圧をかけてくる彼に、一泡吹かせるいい機会だ。という内心を押し隠し、静かに首を振る。


「いいえ。ただ……とてもお強いのでしょうね。」


「ああ、彼はかなりの実力者だよ。去年も確か、総合二位だったはずだ。」


「二位……ですか?」


いったい一位は誰なのかと、視線を上げた瞬間、第二王子の口元がにやりと歪む。


「もちろん、優勝は私が貰ったんだよ。王族の魔力量は桁が違うからね。」


なるほど、と納得しつつも、ルネアの思考は別の方向へと向かっていく。

今の自分と彼とでは果たしてどちらの方が強いのか。現在の戦闘スタイルは、魔法四割、剣術六割といった魔法使いとしてはあるまじき戦術だ。

だがこの大会は、魔法のみ。使える範囲で、かつプレイヤーだと悟られない程度に抑えながら、それでも彼らに勝つことはできるのだろうか、と思案し始めたころへ、愛らしい声が響いた。


「お姉さま……!! ……と、第二王子殿下。ごきげんよう。」


「ああ、リリアン嬢、こんにちは。」


「まぁ、リリアン。今日もとっても可愛いわね。」


第二王子が目に入らなかったような言い方に聞こえたが、一旦気にしないでおく。

愛らしいリリアンは、今日も変わらず輝いている。が、その腕に抱えられた大量の資料を目にした瞬間、思わず席を立っていた。


「リリアン、それ……どうしたの?」


半ば強引に、彼女の腕から資料の半分を受け取り、テーブルへと置く。


「お姉さま、ありがとうございます。」


リリアンはにこりと微笑みながら残りの資料も置くと、その上にそっと手を添えてルネアへと差し出した。


「これ、お姉さまの参考になればと思って……先生方からお借りしてきたのです。」


どうやら、タイムリーなことに先ほど第二王子と話していた大会に関する資料らしい。狩猟大会、魔術大会、そして剣術大会――それぞれの資料が山のように積まれている。

リリアンに感謝しつつ、一枚ずつ目を通していくと、今年の開催日程や参加予定者の一覧がおおまかにまとめられていた。


(……これ、生徒が見ていいやつ?)


ふと不安になり、そっとリリアンへ視線を向ける。だが当の本人は、満足げに頷くだけでまったく気にした様子がない。余計に不安になり、今度は第二王子へと視線を送るが――彼もまた、困ったように笑うだけだった。


どうやら、問題になるほどのものではないらしい。と、ひとまず胸を撫で下ろし、再び資料へと視線を落とす。


「お姉さまは魔法の才能がおありですもの。きっと優勝間違いなしですわ。」


きらきらとした期待の眼差しを向けられ、ルネアは苦笑しながら頷いた。


「そう……ね。リリアンの期待に、応えなくちゃ。」


(推しの期待に応えてこそ、ゲーマーってものだよね……!!)


病弱設定の扱いに悩んでいたはずなのに、リリアンの一言ですべてが吹き飛んだルネアは、微笑みながら彼女の頭をそっと撫でる。

リリアンは嬉しそうに頷くと、「これと、これと……」と呟きながら、重要そうな資料を選り分け始めた。積み上がっていく資料に苦笑しつつ、ルネアはふと、向かいで楽しげにこちらを眺めている第二王子へと視線を向ける。


彼に勝つためにはどんな工夫が必要か。彼はどういう戦いをするのか。思考を巡らせるほどに、口元が緩みそうになる。慌てて気を引き締め、背筋を伸ばしたその瞬間――細められた視線が、まっすぐルネアへと向けられた。


挑発するような、余裕を湛えた強者の眼差しに、ルネアはごくりと喉を鳴らす。


「楽しみだな。」


心底面白がっているその表情に、思わず頬が引きつりそうになる。それでも相手は王族だと自分に言い聞かせ、にこりと微笑みを返した。


「ええ、とても楽しみですわ。病み上がりの身ですので、どこまで皆様についていけるか分かりかねますが……できる限りを尽くしてみます。」


「そう……今年は、さらに面白くなりそうだ。」


そう言うと、席を立ち、軽く手を上げて立ち去っていく第二王子の背を見送りながら、ルネアはふう、と息を吐いた。


「お姉さま……?」


不思議そうに首を傾げるリリアンに、「なんでもないわ」と微笑み、もう一度その頭を撫でる。すると彼女は嬉しそうに身を寄せてきた。


(――本当に、可愛い。)


そんなリリアンに癒やされながら、ルネアは大会当日を見据えた準備へと、本格的に踏み出すのだった。



***



第二王子――レイシス・ヴェスペル・デルフィオンは、今しがた別れた令嬢の顔を思い浮かべながら、ひとり小さく笑みを零した。


儚げな容姿と言動で注目を集めている令嬢――ルネア・ルナヴェイル。

彼女は一見、その見た目通りの大人しい令嬢に見えるが、おそらく違うという事に、レイシスは気が付いていた。


初めて彼女を見かけた時は、特に印象に残ることもなく、よくいる令嬢の一人だと気にも留めていなかった。

ただ、周囲が囁く噂だけが耳に残っていた。

病弱で、社交界に姿を見せるどころか噂一つ回ってこなかった彼女は、回復した途端に学園で淑女然とした振る舞いを見せ注目を集めている。


誰に対しても態度を変えない彼女は、妹以外とは明確に一線を引いているようだと気付いたのは、二度目に彼女を見た時だった。

その時の彼女は、中庭で木をじっと見上げていた。何をしているのかと思えば、視線の先には、降りられなくなった子猫が一匹。

彼女には少し荷が重いだろうと近づこうとしたその瞬間、子猫は待ちきれなかったのか彼女の胸へと飛び込んだ。恐ろしいほどの勇気である。子猫が勇敢なのか、彼女がそれほど逞しく見えたのかは知らないが、レイシスは無茶をするものだと内心呆れながら見ていたが、それを受け止めた彼女は、満面の笑みで安堵の表情を浮かべていた。


(なるほど……、周りが騒ぐわけだ。)


家格や話題性だけでなく、容姿も人柄も、人を惹きつけるだけのものは十分にある――と、レイシスは納得する。だがそれ以上に目を引いたのは、その立ち振る舞いだった。


普通の令嬢であれば、慌てて子猫を取り落とすか、そもそも受け止めることすらできないだろう。あの高さから飛び込んでくる猫を受け止められる者がどれだけいるかと考えれば、思い浮かぶのはごく僅かだ。


レイシスが声をかけあぐねている間に、彼女はベンチへ腰を下ろし、子猫を抱えたまま小さく息をつく。空を見上げながら思案するその様子から、子猫の扱いに困っているのだろうと当たりをつけた。


「やあ、こんにちは。君は編入生だろう?」


背後から、少し驚かすつもりだった言葉は、彼女の気配察知力が優れていた為か、真正面から受け止められた。

最初こそ警戒心が強かった彼女も、言葉を交わすうちにその緊張は少しずつ解け、自分の社交術が効いているのだと、レイシスは内心で安心する。


彼女にどうかしたのかと尋ねたその時、子猫が目を覚まし、ひと鳴きすると再び彼女へと飛びついた。それを危なげなく受け止める様子に、わずかな違和感がよぎる。


その違和感を確かめるべく、猫に触れる許可を得ようと彼女に問いかければ、彼女は一瞬戸惑いながらも、両手で子猫を掴み、そのままこちらへ差し出してきた。予想外の行動に一瞬だけ驚くが、それを表には出さず、レイシスは笑って見せた。


いや、笑ったのは本心だった。おかしな言動を繰り返す彼女を見て、違和感の招待に気が付いたのだ。

――彼女は、噂通りの令嬢ではないらしい。ということに。


その後もレイシスは、幾度となく二人のルナヴェイル辺境伯令嬢の噂を耳にした。

姉は魔法の才に恵まれているとか、妹は評判通り剣術の腕が立つとか、二人揃って社交術の授業を最優秀で通過したとか――内容は様々だ。


妹は気立てがよく、姉を立てながらさりげなく支えるその姿が愛らしいと人気を集めているらしい。一方で姉は、儚げな振る舞いが人の庇護欲を刺激するのだとか。そして何より、二人の仲の良さが目を引くようで、見ているだけで癒されるのだと、令息たちは楽しげに語っていた。


その中で、レイシスの興味を引いたのは別の話だった。

姉――ルネア・ルナヴェイルが、魔術の実技試験でいとも容易く合格点を叩き出した、という噂だ。


見た目からは想像できないほど魔法の才能が豊かだと噂されるだけあって、その実力は凄まじいものだったと――そんな話に、思わず口を挟めば、その場にいた令息たちは目を輝かせながら語り始めた。中位魔法であるウィンド・ブレードを軽々と扱い、それも見たことのないほどの威力で的を両断したらしい。


その場に居合わせなかったことを、レイシスは内心でとても悔やんだ。機会があれば次こそ顔を出そうと考えていたが、結局それは叶わなかった。悉く都合がつかず、その内に彼女はすべてのテストに合格してしまった。


だからこそ、彼女に大会への出場をほのめかした。本当に実力があるのなら、より高い水準の魔法使いとの戦いに興味を示さないはずがない――そう踏んでのことだった。


だが、レイシスはひとつ見落としていた。彼女が病から回復したばかりだという点だ。


まだ安静が必要なのか、大会出場に慎重な様子を見せるルネアに対し、レイシスは別の角度から揺さぶりをかける。ルシアンの名を出したのはそのためだ。彼が彼女を気にかけているという情報を掴んでいたからこそ、多少なりとも追い打ちになればと考えたに過ぎない。


だが、それが想像以上に彼女の興味を引いたらしかった。理由は分からないが、都合がいいと判断したレイシスは、その興味を煽るように言葉を重ねていく。そんな中、思わぬ加勢が現れた。


彼女の妹――リリアン・ルナヴェイルだ。

普段であれば、ルネアとの会話に割り込む厄介な存在だが、大量の資料を抱えて現れた彼女は、巧みな言葉選びで姉を大会出場へと導こうとしていた。理屈ではなく、ルネアの弱い部分を突くやり方である。


どうやら、ルネアは相当に妹を溺愛しているらしい。妹の愛らしさにほだされている姉の様子を見て、レイシスは内心で苦笑する。見た目に反して、なかなかしたたかだ――と妹に対して思う一方で、純粋に乗せられている姉の方には別の感想が浮かんだ。


(妹にちょろすぎるな……。)


つい心配になるほど単純だが、それもまた彼女の一面なのだろう。レイシスはそれ以上口を挟まず、静かに微笑んだ。自分にとって都合のいい方向へ転びそうなのだから、余計なことをする必要はない。


これでようやく、彼女の実力が見られそうだ。どこまでやってくれるのかは分からないが、想定を超えてくれることほど嬉しいものはない。去年は、まともに相手ができたのはルシアンくらいのものだった。


今年はどうか――と、レイシスは楽しげにまた笑みを一つ落とした。


次回:単位ってどうやって集めるんだっけ…?


スタンプや評価、レビュー等とても励みになっています。

いつも本当にありがとうございます。


☆単位メモ

―――――――――――――――

▼ 単位分類

 ・学術単位:政治、経済、歴史、魔術理論など

 ・社交単位:夜会、お茶会、対人関係構築など

 ・実務単位:経営、交渉、商売など

 ・技能単位:剣術、魔法、芸術など

 ・特別単位:大会優勝、国家貢献など

 ※特別部はさらに以下が追加

 ・主専攻必須/選択

 ・副専攻必須/選択


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