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23話

 わんちゃんの飼い主だった坊主頭の男の子は、速やかにブルーの手で埋葬されました。

 ぎこちない仕事っぷりにヒヤヒヤしながらも最後までやり切ったブルーに、わたしは気になったので聞いてみます。


「始めてどれくらいなんですか? 葬儀屋の仕事は」

「すっ、すみません! 実は今回が初仕事でして……勉強だけはしてたんですけど」

「実践するのは初めてだった、と。ならばそんなものでしょう」


 よそ者が仕事の仕方に口を出してよいものかと悩んでいましたが、見守ることに徹して正解だったようです。ブルーの成長に大いに貢献してくれたことでしょう。


「ちなみに男の子の遺物はありますか?」

「えっとこれなら……」


 ブルーの手から渡されたのは、首輪とリードでした。

 あのわんちゃんは首輪をしていませんでしたが、男の子は自分が死んでしまう可能性を覚悟していたのかもしれません。だから首輪を外して自由にしてあげた。

 でもわんちゃんは言うことを聞かず、あの場でジッとご主人様である男の子の帰りを待っているわけですか。


「……ずっと力強く握り締めていました」

「ペットも家族ですからね。それ、少しばかり借りても?」

「……もちろんです」


 ブルーから首輪とリードを受け取り、わたしが向かう先はもちろんわんちゃんのところ。しれっとブルーもついてきています。

 わんちゃんは案の定お座りをしたまま出会った場所から動かず、健気にもずっと待ち続けていました。


「こんにちわ。今日も元気ではなさそうですね」


 骨が浮いてガリガリのわんちゃん。ずっと餌を与えようとしても無視し続けているのです。


「こちら、わかりますか?」


 わんちゃんの鼻先に首輪とリードを持っていくと、初めて反応らしい反応を見せてくれました。それは弱く、小さく、儚い反応。

 目を潤ませて、微かに一度だけ、くぅーん……と鼻を鳴らしたのです。

 そしてゆっくりと腰をあげ、わたしの目を見つめてきます。


「あ、あの……霊視しましょうか? 犬の気持ちを伝えられるかもですし」

「いいえ、結構です。充分伝わっていますから」


 ブルーの好意は気持ちだけありがたく受け取っておきました。

 っていうか霊視ってそんなこともできるんですね。驚きです。


「さあ、こちらですよ」


 わたしがゆっくりと歩き始めると、わんちゃんもおぼつかない足取りでついてきました。ブルーも心配そうにわんちゃんのことを見守りながらついてきます。

 そして、目的地へ到着。男の子のお墓です。


「あなたのご主人様は、ここで眠っています」


 お供えをするように、お墓の前に首輪とリードを置くと、わんちゃんは驚くべき行動に出ました。

 人間の言葉や気持ちなど完璧に理解することなどできないはずなのに、悲しそうな鳴き声を上げながらお墓にその身を擦り寄せたのです。

 ご主人様は死んでしまったと、この下に埋まってるんだと、まるで理解しているような行動でした。


「ブルー」

「……は、はい」

「わんちゃんのことも、お願いできませんか?」

「……わかりました。任せてください」


 ──それからしばらくもしないうちに、隣に小さなお墓が増えたのでした。




   ──おわり。

もうちょっとだけ続くんじゃよ。

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