22話
紛らわしいことに煙幕は本当にただの煙幕で、蔵の中で伸びていた男たちの命に別状はありませんでした。よかったと安心して良いのかは複雑ですが、これ以上の死人が出なかったのは素直に喜んでも良いでしょう。
「なんだったのでしようか。結局」
どうして毒使いの魔教徒が現れたのかわからないまま、静寂に包まれてしまいました。まさか本当に偶然出会しただけ? そんなわけはないはずですが──。
「……考えていても仕方ありません。切り替えましょう」
二度あることは三度あると言います。あまり考えたくはありませんが、もう一度あの毒使いの魔教徒とはどこかで接触する機会があるでしょう。
そのときこそ、決着をつけてやりますとも。
「まずはこの連中をどうにかしなければいけませんね」
わたしの足元で転がっている見張りをしていた男性や、双子のAB、そしてリーダーと、警察に突き出してやらなければならない悪人がいますし、男の子を運び出してくれたブルーがどうしているのかも気になるところ。
「忙しくなりそうですね。全く」
呉服屋の人にも謝罪をしなければいけません。今回の件でボロボロにしてしまいましたから、弁償をする必要があるでしょう。わんちゃんの新たな飼い主も探してあげたいです。
まだ滞在期間は残されていますから、旅へ出立するのは色々と落ち着いてからにするとしましょう。
「……こ、こちらです!」
任せた男の子の遺体はどこぞへと預けて、警邏を引き連れてブルーが戻ってきてくれました。
「ほ、ホワイト……さん? 無事……でしょうか?」
「良いタイミングで戻ってきてくれました。わたし一人では手に余ると思っていたところです。この男たちをお願いできますか?」
わたしの名を恐る恐る呼ぶ彼女の態度から、どういうわけか恐怖を抱いているのだと肌で感じます。
というか、警邏の方を壁にして声をかけている時点で、激しく警戒されているようでした。
「ご協力感謝致します!」
ビシッと敬礼して、伸びている男たちを次々と運び出していきます。そんな様子を尻目に見ながらわたしはブルーに歩み寄りました。
隠れる壁がいなくなってしまってあたふたしているブルーに対してその手を取り、ひとまず蔵の外へ連れ出します。警邏の方々の邪魔になってしまいますからね。
「まずは謝らなければなりませんね。いろいろと」
「……え?」
なんですかその意表を突かれたような表情は。謝るのはブルーの十八番なのかもしれませんが、わたしだって必要があれば謝罪くらいします。
「わたしが葬儀屋であることを伏せていたこと。なかば無理やりに巻き込んでしまったこと。怖い思いをさせてしまったこと。すみませんでした」
「そっ、そんな! 謝らないでください!」
わたしの言葉を遮ろうとするブルーを手で制して、続けます。
「お礼もさせてください。ブルーのお陰で事態は迅速に収束していくでしょう。ありがとうございました。それから、おつかれさまでした。よく頑張りましたね」
初対面の人に上からものを言ってしまいましたが、わたしの言葉が刺さったのか、ブルーは目を潤ませてしまいました。
……本当に、よく頑張りました。




