おまけというか、そのあと
「ふぃ~……あっぶなかったぁ〜☆」
貴重な回復薬と煙幕を使って命からがら逃げてきた毒使いの魔教徒は、あと一歩で死んでいたにもかかわらずその表情に喜びのような感情を滲ませていた。
「キヒッ☆ やっぱあの子は魔人として目覚めなかったかぁ~」
仮説を検証したくて適当な悪党を金で雇い実験してみたが、結果は予想通り。途中、白い悪魔が介入してくるというアクシデントはあったものの、どうにか上手く事が運んでくれたことにより収穫はプラマイゼロどころかプラスと見ていいだろう。
「どう考えてもバラつきがあんだよねぇ~」
過去の実験で、女の子は何度も魔人になった。でも男の子は今回も魔人にならなかった。もちろん男でも魔人になるケースはあるが、それにしては偏りがある結果に収束している。
どうやら年齢も関係していそうだ。若いほうが魔人となる可能性が高い、という説が浮上している。
「──さてっと! 次はどこでどんなことしよっかなぁ~? キッヒヒ☆」
***
「はふぅ……緊張しました……」
人生で初めて葬儀屋としての仕事を果たしたブルーは、緊張の糸をほぐすように息を大きく吐いて肩の力を抜いていく。青い着物をしっかりと着付けていなかったら、肩からずり落ちそうなほどの脱力だった。
「お姉ちゃんの言うこと聞いて勉強しておいてよかった……」
葬儀屋のトップ集団、虹天集のブルーという大役をリーダーであるレッドから仰せつかったときはなにかの悪い冗談かと思ったが、ひとまず山場は越えることができて一安心だ。
「それにしても……」
ブルーはひとつ、気になっていることがある。ずっと、気になっていることが。
「どうして急に私の存在がわかるようになったんだろう……?」
幼い頃から、姉だけが自身の存在を正常に認識できた。家でも外でも、ブルーは姉以外の人物からはなかなか認識してもらえなかった。
でも子どもに見つかったし、警邏の人にも気づいてもらえた。
「もしかして──」
いつしか自室に引きこもる生活が当たり前になり、外に出る気力も失せていたのだが、ざわめく霊感に導かれて外に出てみれば、そこには白い妖精がいた。
──強く、気高く、美しい、白の妖精が。それがきっかけを運んできてくれたのかもしれない。
「……呪いが、解けた?」
存在が認知されないのは魔法使いの宿命である呪いのせいだったが、それが無くなったということになる。
なぜ呪いが解けたのか──その理由まではわからないが、周囲から認知されるようになったのは呪いが解けたから、としか考えられなかった。
***
純白の着物の弁償代として軽くなった財布の中身に特大のため息を詰め込んで、わたしは魔力板の上に乗りました。
「次の雲の行方はあちらですか」
毒使いの魔教徒を追ってもいいのですが、わたしはあくまで葬儀屋。目的を見失ってはいけません。
わたしは雨が降りそうな地点を目指して、純白の美しい絹のような髪を風に靡かせるのでした。
みなさまお待たせ致しました。そしてお久しぶりでございます、作者の無限ユウキと申します。
毎回「お待たせ」とか「久しぶり」とか言ってるような気がするけど、気のせいかな? 気のせいだよね? 気のせいです!
内容思いつかなかったり、新作に浮気したりしていたら随分と時間が経っていたんですねぇ……個人的にはずっと執筆自体はしていたから、葬儀屋さんの更新が長いこと止まっていた自覚が薄いです。その点は申し訳ない、としか。(前回のあとがきにも似たようなこと書いてた)
ここからが本編になります。ここに来るまでの約三万文字は本編の皮を被った長大な前振りだったのです!(オイ)
さて、感想とかレビューはみなさまにお任せするとして──
***
実は今回のエピソードは正直に言ってボツにしようと思っていました。
ま、でもなんだかんだ最後まで書けたんだし、せっかくだから投稿しとくかぁー、くらいの軽い気持ちを意識して投稿しました。つまり、本音のところでは納得し切れていないというのは内緒。
でもこういう投稿ができるのはネット小説の良いところ。そして葬儀屋さんの良いところだなって自分で思います。短編連作みたいなもんですから、章と章の繋がりをあまり気にする必要が無いのは強みだなぁと。改めてこういう形式で投稿し始めた自分に賞賛を送りたい。
それはさておいて……今回の話、とある有名なお話を少しばかり参考にして内容を考えてみました。そういうコンセプトで一本お話を作ってみようかなって思って。
序盤のわんちゃんがイジメられているシーンがありましたよね? あれは『浦島太郎』です! 亀を三人の小僧がイジメているところだけを切り取るという結果になりました。本当はその後にわんちゃんがどこぞへと案内してくれる展開を考えていたにもかかわらず、その場から動かない忠犬ハチ公となってしまいました。ラストは『フランダースの犬』みたいにご主人と犬が寄り添って天国へと昇っていくような展開で物語を閉じよう! と思っていたのですが……どれもこれも全然思った通りにならない(笑)
こうなってしまうから自分はプロットは書かないんですよね……その場のノリとアドリブで書き進めて行ってしまう。よく言えば臨機応変に対応できる。悪く言えば後先を考えられない。
物語を書くにあたって臨機応変なんてそんな即効性(即興性?)が求められる場面なんてそうそうありませんから、どう考えても後先考えられない方がやぱい。
でもそれが自分の執筆スタイル。いまさら書き方を変えられないし、変えようとも思ってない。変えろと偉い人が言ってきたら変えます!(手の平くるりん)
今回のおまけにて少しだけ話題に上がりました〝呪い〟についてですが、どこかで書いたような気がしなくもないですが一応説明しておくと、呪いの対象は〝自分自身〟か〝人間〟になります。そしてホワイトさんを筆頭に、レッドやグリーン、そして今回登場したブルーは〝魔法使い〟になるので、呪いの対象外になります。
あとホワイトさんがブルーの顔を見て誰かに似ていると言っていたのを覚えていますか? そしておまけでブルーが「お姉ちゃん」と発言していましたね? ブルーの認識阻害の呪いをスルーできるということはお姉ちゃんも〝魔法使い〟ということになりますよね? はいそうですそういうことです。ぶっちゃけちゃうと、ブルーのお姉ちゃんは虹天集のリーダーであるレッドです。レッドの故郷もワフー国でしたね。だから虹天集のブルーの席に妹をねじ込むこともできたということ。それまではずっと引きこもり生活をしていたので、葬儀屋の仕事のやり方だけでも学んでおけと強く指示しておりました。曲がりなりにもブルーになるわけですし。あと引きこもり生活が長かったので認識阻害の呪いが解けたタイミングも曖昧です。
レッドも妹の〝霊視〟という魔法の有用性は理解していたのでしょう。死者を扱うことが多い仕事ですからね。なぜ死んでしまったのかわからない人の魂から情報を得られるのは葬儀屋として大きな利益に繋がると判断したのです。
時たまレッドの魔法〝千里眼〟で妹の様子を窺っているとかいないとか……?
それでは、今回はこの辺で。ここまで読んでくれたあなたに、良き小説ライフと幸福を。──無限ユウキ。




