独りの夜
今回短いです。
「やっと……できた」
ダリアと採取に向かってから数日。ようやくアイリスから頼まれていた物が完成した。持続時間や効果にまだ課題は残るものの、使用者本人にだけなら十分な効果を発揮できるはずだ。
材料さえ揃えば後は楽勝だと思っていたのはどうやら大きな間違いだった様だ。ちゃんとした形になるまでに少なくとも十回は失敗してしまった。
「でも次からは大丈夫! もう失敗しないんだから!」
喜びを一人噛みしめる。それと同時にふとリラの頭に浮かんだのはマーレの顔。自分一人で完成させる事ができた、と今すぐにでも報告しに行きたい。でもマーレはまだローゼンには帰ってきていない様だ。
「早く帰ってこないかなぁ……」
報告したらマーレは何て言うだろう。きっと「よくできました」と言いながら、優しい笑顔でリラの頭をくしゃくしゃとするのだ。そしてひとしきり褒めた後に「これで満足するんじゃないわよ」と釘を刺すに違いない。
あの日、マーレに出会えて本当によかった。マーレに出会わなければ、リラはきっといつもと変わらない日々を送っていたはずだ。何となく満ち足りない、いつも通りの日常を送っていたはずだ。マーレと出会い、錬金術と出会い、世界は鮮やかにその色を変えた。今のリラには道端に生える雑草も、地べたを転がる石ころも輝いて見えている。何となく過ごしていた一瞬一瞬がかけがえのない物へと変わっていく──。
ありふれた日々がこんなにも忙しく、楽しい。
「早く明日にならないかなぁ……」
本当は眠っている時間も惜しい。でも今日を欲張れば、明日が迷惑してしまう。
だからリラは眠る事にした。きっと今日より良くなる明日を夢見て──。




