表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『クラス対抗デスゲームで最弱の歩兵だった俺、実は盤上最強でした』  作者: 水前寺鯉太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/55

第45話 残存

第45話:『残存』


 誰も、気づいていなかった。

 グリフィンが完全に撤退したと、誰もが信じ込んでいた。しかし、廃ホテルの地下には、通信を断たれ、システムの網から零れ落ちた「残存」がいた。

 コルタス、チェン・ウェイ、バレンシア。疲弊しきった彼らを動かしたのは「命令」ではなく、画面越しに見たハヤシ隊長の姿だった。

 

 摺鉢山まで五百メートル。彼らが出会ったのは、七日間、名前を呼ばれることなく一人で生き延びていた岸本直樹だった。

「……案内しようか。一人より、複数の方が安全だ」

 七日間、孤独という毒に晒された少年の瞳には、敵味方を超えた「他者」への渇望があった。コルタスは、銃を下ろした。泥を啜って生きてきた者同士の、言葉を超えた了解。

 

 摺鉢山の縁に、四十一名の命が集結した。

 岸本が盤の前に立ち、種田がその名を手帳に刻み直す。「生存」という二文字が、涙で滲む。

「……名前を呼ばれた。それだけで、全然違うんだ。……盤、俺はここにいるんだな」

 岸本の震える声に、盤は静かに頷いた。

 

 そして、ハヤシが前に出た。

 盤が仕掛けた「罠」は、もう完成していた。金山が装置を操作し、フィールド上空の全ドローンを電磁的に捕獲ロックオンする。運営の「編集」を許さない、一億二千万人の脳内へ直接注ぎ込むための、純粋な生放送が始まった。

 

「ハヤシ隊長。……世界中の共犯者たちに、あなたの『理由』を聞かせてやってください」

 ハヤシは、カメラを真っ直ぐに見据えた。そこには軍人としての威圧はなく、ただ一人の人間としての、静かな、しかし峻烈な覚悟があった。

 

 彼は深く、長く、息を吸い込んだ。

 

「……私の名は、ジョー・ハヤシ。第422連隊、隊長だ」

 

 その第一声が放たれた瞬間、全世界のパブリックビューイングが、居酒屋のテレビが、若者のスマートフォンが、同一の映像で真っ白に染まった。

 七日目。午前〇八時三〇分。

 娯楽としてのデスゲームは、今この瞬間、人類史上最大の「公開審判」へと変貌した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ