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『クラス対抗デスゲームで最弱の歩兵だった俺、実は盤上最強でした』  作者: 水前寺鯉太郎


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第44話『弔い』

第44話『弔い』




 炎の跡から、黒い煙がまだ細く上がっていた。


 その腐敗と絶望の匂いを、三十七名の生存者たちは無言で吸い込んでいた。最初に静寂を破ったのは、橋本だった。


「……ふざけんな。おい、あんた」


 橋本が鉄パイプを吉本に向けた。震える拳。それは、誤射という言葉で片付けるにはあまりに重すぎる、友の死への拒絶だった。


「謝って済むか。岡田も浅野も、誰よりも慎重に、生きたいと願ってそこにいたんだ。……弔い合戦だ。俺は、あんたらを許さねえ」


 


 吉本は、向けられた鉄パイプを逸らさなかった。「責任は、俺にある。……だが、橋本。お前までここで死ねば、岡田と浅野の『生きた証』は誰が手帳に刻むんだ」


「うるせえ!」


「橋本、よせ」


 ばんが、静かに割って入った。その瞳は、炎の跡を見たまま、青白い殺意を宿していた。


「怒りは正しい。……だが、弔い合戦でこの三名を殺しても、プログラムは終わらない。また新しい『掃除屋』が来て、誰かが焼かれるだけだ」


 


 盤は、隣で震える古賀の肩を抱き、全員を見渡した。


「二人のために戦いたいなら、二人の分まで生きろ。……そして、この怒りを、岡田と浅野を焼き殺した『79%』の世界そのものへ叩きつける。……それが、俺たちの弔いだ」


 古賀が声を殺して泣き崩れた。関口がそれを抱きしめる。種田は、歪んだ文字で二人の名前を手帳に刻み、それを胸に強く抱きしめた。


「……俺は、戦わない。岡田さんと浅野くんに、また誰かが死ぬところを見せたくないから。……終わらせよう。この地獄を、今ここで」


 


 その言葉に、橋本がゆっくりと武器を下げた。木村もまた、美琴の視線を受け、冷徹な仮面の奥にある熱を認めた。「……最適解が変わった。天城。……お前の指し手、乗ってやるよ」


 


 吉本とハヤシが、盤の前に並んだ。


「正規軍としても、これ以上の汚辱は耐え難い。……天城盤、俺たちの通信網と装備、すべてをお前に預ける。……世界を、黙らせてこい」


 


 一億二千万人のスマートフォンに、速報が届く。


【正規軍の誤射により、生徒2名死亡。岡田真由、浅野健】


 コメント欄は、かつてない自責と困惑で埋め尽くされた。『俺たちのせいだ』『投票しなければよかった』『あの子たちを、もう放っておいてくれ』。


 いいねのカウンターが、初めて、完全に停止した。


 娯楽としての「死」が、自分たちの指先が生んだ「罪」に変わった瞬間。


 


 摺鉢山の底で、盤は金山の抱えるEMP装置へと指をかけた。


 隣には澪、後ろには木村、そして正規軍の将たち。


「話し合いは終わりだ。……全世界の『共犯者』たち。俺たちの遺言を、その網膜に焼き付けろ」


 


 0820。


 盤がスイッチを押し込んだ瞬間、世界から光が、そして「嘘の映像」が消えた。

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