表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
9/11

地将、合流するってよ

もちろん。

雰囲気と流れはそのままに、冒頭の違和感→地将の分析→先代の格の示唆が少し噛み合うように寄せた、EP9軽微改稿版として出します。


EP9 改稿版

『地将、合流したってよ』


ログハウスの外は静かだった。


森である以上、音が無い訳ではない。

風は吹く。枝葉は擦れる。遠くでは小型魔物の鳴き声もする。


それでも、何かが足りない。


森へ入ってからずっと感じていた、あちこちから向けられる視線のような気配。

あの“見られている感じ”だけが、今は薄い。


「……減ってるな」


炎将がぽつりと呟いた。


英雄も、何となく分かっていた。

あちこちから向けられていた“何か”の気配が、今は遠い。


その時だった。


天井近くを漂っていたゲイザーが、一斉に明滅する。


補佐官の一人が顔を上げた。


「地将様、接続されました」


空中に淡い光が走る。


『……現地到着しました』


「早かったな」


炎将が笑う。


英雄は窓の外を見る。

森の奥。木々の隙間から、ゆっくりと歩いてくる影が見えた。


長い外套。

落ち着いた足取り。

その周囲を、数体のゲイザーが静かに漂っている。


「……あの人が地将?」


「そうだ」


魔王が短く答えた。


地将はログハウスへ入る前に、一度立ち止まった。

地面へ視線を落とす。

木の根元に触れる。

風を確かめるように、僅かに目を細める。


そして。


「……やはり、流れが変わっていますね」


第一声がそれだった。


英雄は思わず聞き返す。


「流れ?」


「魔素流動です」


地将は静かに森を見回した。


「魔王様がこちらへ入られた時点で、周辺の循環圧が変化しています」


「いや、来ただけだろ?」


「はい」


あまりにも即答だった。


まるで、それだけで十分だとでも言うように。


地将は淡々と続ける。


「幼木トレント群も、それに反応して定着域を変更しています」


「……あぁ、避難してたって話?」


「正確には移住ですね」


まるで季節移動でも語るような口調だった。


英雄は頭を抱える。


「いや待て。意味分かんねぇんだけど」


地将は不思議そうに瞬きをした。


「大型上位個体の進入による環境変化です。珍しい事ではありません」


「魔王様が大型生物扱いされてる……」


炎将が吹き出しかける。

補佐官組は目を逸らした。笑うと後が怖い。


地将は気にした様子もなく、ゲイザーへ視線を向ける。


「三番観測点、共有」


次の瞬間、英雄の視界に森の映像が重なった。


「うわっ!?」


木々の間。

根の隙間。

枝上。


複数視点が滑るように切り替わっていく。


「これ全部ゲイザーか!?」


「はい。観測網です」


「網って規模じゃねぇ……」


映像の中では、幼木トレント達が森の奥へ移動していた。

まだ小さい個体ばかりだ。

細い枝腕を揺らしながら、列を作って歩いていく。


怯えている、というより。

環境変化へ順応している。


そんな動きだった。


そして英雄は、ようやく冒頭の違和感の正体に思い至る。


見られている気配が減ったのではない。

見ていた側が、場所を変えたのだ。

魔王が入り、森の流れが変わったから。

森の側が、それに合わせて位置をずらした。


「……他にも、こういう人居るのか?」


口にしてから、自分で少し違うと思った。


“こういう人”では、たぶん足りない。


強いとか、偉いとか、そういう言葉ではもう収まらない。

ここにいる魔王は、森へ踏み込んで拠点を作っているだけのはずなのに、周囲の住処ごと組み替えてしまっている。


人界で聞かされた“脅威”という言葉は、たぶん半分しか合っていない。


一瞬、空気が止まった。


地将が静かに視線を上げる。


「先代様ですね」


「……ヴァルシュタット・ハルピュイア」


王から聞いた名を、英雄はぽつりと口にした。


その時は、伝説のための名前だと思っていた。

世界を均した魔王。

そんなもの、半分は誇張だと。


だが今なら少し分かる。


あれはきっと、戦争の話じゃない。

もっと根本的な。

世界そのものへ干渉する類の話だ。


「……あの人も、こんな感じだったのか?」


少しの間があった。


地将は考えるように目を伏せ、それから答えた。


「現魔王様の方が穏やかです」


「待て」


即答だった。


「これで!?」

………魔王様って、災害ってレベルじゃねぇのな…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ