「王様、召喚するってよ」
魔界…魔王様側の視点ではないです。
魔王が姿を消した。
――その報は、瞬く間に人界を駆け巡った。
無論、完全に姿を消した訳ではない。
魔界側の領地では、今なお四将が統治を続けているとも聞く。
だが、それでも。
「……好機、なのではないか?」
そう考える者達は、決して少なくなかった。
人界中央王城。
その一室では、王と、その側近達による会議が行われていた。
「魔王は未開地へ向かった、という情報で間違いないのだな?」
「はっ。魔王城から離れ、少数で移動したとの報告が。」
「少数、か……」
王は指を組み、深く椅子へ腰掛ける。
魔界。
長きに渡り、人界と対立してきた隣界。
魔王が治める、魔族達の世界。
かつて幾度も侵攻を試み、そして退けられてきた地。
「四将は?」
「健在です。ですが……魔王そのものが不在であるならば、統率力は確実に落ちるかと。」
「ふむ……」
静かな空気の中、一人の武官が口を開いた。
「今こそ、失地を取り戻す時かと。」
その言葉に、数人が頷く。
「魔王不在の今であれば、魔界側の混乱も見込めます。」
「統治機構も完全ではありますまい。」
「好機ですな。」
そう。
彼らは知らない。
魔王が不在でも、魔界が回る事を。
そして、その魔王本人が、未開地で何を始めようとしているのかを。
だが、この場において重要なのは事実ではない。
認識だ。
「……勇者召喚を行う。」
王の一言に、場の空気が変わった。
「此度こそ、魔界へ人の旗を届かせる。」
「その為の刃を、異界より招こう。」
魔術師達が、一斉に頭を下げる。
「召喚準備に入ります。」
人界における切り札。
異界より招かれる、特別なる者達。
勇者。
その召喚は、国家規模の大術式である。
莫大な魔力、複雑な術式、そして数多の供物を必要とする、人界最大級の儀式。
だが。
彼らはまだ知らない。
その術式が。
その召喚が。
未来において、最も積極的に利用する存在が、他ならぬ魔王本人になる事を。
――その頃。
「……なぁ、これマジ?」
教室の片隅。
一人の男子生徒が、スマートフォンの画面を眺めながら呟いた。
「異世界とか、一回行ってみてぇよなぁ……」
能天気なその言葉を。
遠い異界の術式が、確かに拾い上げていた。
元凶その2。
異世界生活が始まると思ったんだよぉ!




