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開拓、本格化するってよ

朝。

森は静かだった。

夜露を含んだ草を踏みながら、地将は森の中を歩いていた。

その後ろを魔王と炎将が続く。

少し離れた場所から、英雄もその様子を眺めていた。

地将は開けた場所へ辿り着くと、その場に膝をついた。

地面へ手を添える。

目を閉じる。

まるで何かを聞いているようだった。

「……こちらですね。」

魔王が周囲を見渡す。

「うむ。」

地将は静かに頷いた。

「地盤は問題ありません。」

「地下水脈も近い。」

「居住区には適しているかと。」

英雄は周囲を見渡した。

見えるのは森ばかりだ。

「それ、何してるんだ?」

「測量です。」

「測量?」

「はい。」

地将は当然のように答えた。

「地形、地盤、水脈、根の流れを確認しています。」

英雄は少し感心した。

思った以上にちゃんとしている。

「へぇ……。」

しばらく考えた後。

ふと口を開く。

「だったら先に道とか決めた方が良くないか?」

沈黙。

嫌な予感がした。

地将が考え始めた。

炎将も腕を組んだ。

魔王も地面へ視線を落としている。

「いやなんで考えるんだよ。」

英雄は思わず言った。

地将が頷く。

「合理的です。」

「だからやめろって。」

地将は地面へ視線を戻した。

「ですが、その前に確認事項があります。」

「?」

「水です。」

英雄は少しだけ真面目な顔になる。

「あー。」

「水は大事だからな。」

「それはこっちでも変わらないんだね。」

地将は即答した。

「当然です。」

「飲み水。」

「農地。」

「衛生。」

「全て水です。」

英雄は何度も頷く。

「それは分かる。」

「俺の世界でも上下水道とかあるし。」

地将が止まった。

炎将も止まった。

魔王もこちらを見た。

「あ。」

嫌な予感しかしない。

「詳しく。」

「待て。」

即答だった。

「俺そこまで詳しくないから。」

「知っている範囲で構いません。」

「構うんだよ!」

その時だった。

頭上から声が降ってきた。

「呼ばれた気がした♪」

英雄が飛び上がる。

木の枝の上。

風将が笑っていた。

「誰々お前ー!」

「やっほー♪」

軽やかに飛び降りる。

そして数分後。

森の向こうからもう一人。

水将が現れた。

「だから飛び出さないで下さい。」

開口一番だった。

風将は笑顔で手を振る。

「リアちゃんも来たねー。」

「貴方が原因です。」

英雄は額を押さえた。

「なんで来たんだ。」

「水源確認です。」

水将は即答した。

「地将だけでは判断し切れませんので。」

「なるほど。」

今度は納得できた。

風将だけが余計だった。

「余計って顔した。」

「した。」

風将は気にせず笑う。

「そういえば。」

嫌な予感。

「名前聞いてなかったね。」

全員が止まった。

英雄も止まった。

「……今?」

「今。」

風将は楽しそうだった。

炎将も頷く。

「そういや聞いてねぇな。」

地将も続く。

「聞いていませんでした。」

水将も頷く。

「聞いていませんね。」

魔王は静かに言った。

「名乗っていなかったな。」

英雄は頭を抱えた。

「なんで誰も気にしなかったんだ……。」

その時。

風将の肩に止まっていたゲイザーが小さく揺れた。

「でも知ってるよ?」

「は?」

「ヒデオ。」

英雄は固まった。

「なんで。」

風将はゲイザーを指差した。

「優秀な目があるからねー♪」

ゲイザーが得意げに羽ばたく。

英雄は数秒考え込んだ。

そして思い出す。

召喚直後。

王城で何度も名前を呼ばれた。

あの時から見られていたのだろう。

「……あぁ。」

「そういう事か。」

風将は満足そうに頷く。

「うん。」

そして。

何でもない事のように続けた。

「あと。」

英雄は嫌な予感しかしなかった。

「向こう、君目当てで準備してるよ。」

「なんで俺?」

風将は首を傾げた。

「報告とか連絡してる?」

英雄は固まった。

数秒。

沈黙。

「……………………あ。」

風将が笑う。

「してないなら当然だよ。」

地将が頷く。

「確かに。」

水将も頷く。

「当然ですね。」

炎将まで頷いた。

「心配するだろ。」

英雄は顔を覆った。

王の顔が浮かぶ。

召喚士達も浮かぶ。

確かに。

何も伝えていない。

風将は少しだけ優しい声で言った。

「だから、次の子が来たら一報入れてあげなよ。」

「なんだったら、ヒデオにゲイザー付いてもらえばいいくらいだし。」

英雄は小さく肩を落とした。

「……うす。」

風将は満足そうに笑った。

その横で。

魔王は地将の描いた図面へ視線を落とす。

「では。」

静かな声だった。

「始めるか。」

集落作りを。

開拓を。

未来を。

まだ誰も知らない。

この森の小さな拠点が。

やがて人界と魔界を繋ぐ最初の街になる事を。

……ずっと名前呼ばれねぇなー、て思った理由がコレってね。

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