第8話 24時間戦えます
Side:タイセイ
そろそろ、今日の寝床を探さないと。
「クロエちゃん、俺が今晩、寝てても良い所ってどこかあるかな?」
「聞いてくる」
ジェシーさんの所にお邪魔した。
旦那さんが帰って来ている。
太い腕、日に焼けた顔。
手の皺には黒い土が染み込んでいる。
どっから見ても農民だな。
「お邪魔するよ。タイセイと言って、巡礼をやっている」
「ようこそ、シンタだ」
「あなた、タイセイにお昼ご飯食べていってもらったらどうかしら」
「そうだな。食事は賑やかな方が良い」
「ではお言葉に甘えて」
「お母さん、タイセイが寝る所を探してるんだって」
「なら納屋はどうかしら。古くなった寝台も置いてあるし」
よし良い展開だ。
親切の撒き餌が利いてる。
「そこまでしてもらうのは」
「巡礼者には手厚くするのが礼儀だから」
「すいません。お世話になります」
しめしめだ。
昼飯になった。
メニューは黒いパンに、芋のスープ、そしてウィンナーだ。
「創造神よ、日々の糧を感謝します」
シンタさんが食事の御祈りをする。
「「感謝します」」
俺も唱えとかないとな。
「感謝します。頂きます」
手始めに黒いパンをかじる。
堅い、何でこんなに硬いんだ。
三人を見ると千切ってスープに浸して食べていた。
そうやって食うのか。
やってみる。
なんだがぼそぼそしてて、酸っぱいパンだな。
慣れれば美味いんだろうか。
俺には我慢できない。
128円使って食パンを一斤出す。
「何もない所から、物を出した!」
「あなたこの方は凄いスキル持ちなんです」
「そうかい。凄いんだね」
ポイント稼いでおくか。
「パンを出したけど、よろしければ食べてくれ」
「これは白パンかな。せっかくだからみんなで食べよう」
「やった」
四人で食パンを食べる。
「美味い。ただの白パンじゃない」
「本当ね。今まで食べたパンの中で一番美味しいわ」
「雲を食べているよう」
クロエちゃんから感謝の100円を頂いた。
ジェシーさんとシンタさんを見ると泣いている。
「何か。悲しい事でも」
「結婚式で食べた白パンを思い出したんだ」
「そうね。あれは美味しかった。このパンの方が美味しいけどね」
ジェシーさんとシンタさんは笑顔になった。
200円ゲットした。
一斤じゃ足りないな。
元は取ったからな。
無料奉仕ではない。
「まだ沢山出せるから、じゃんじゃん食べて」
「これでは私達が得をしてしまう」
「そうね。これだと、ご馳走したとは言えないわね」
「実はスキルで出すのに金が掛かってないんだ。パンぐらいなら、俺が村にいる時はいつでも出すよ」
「でも悪いわ。こうしましょ、タイセイさんは何も持っていないようだから、余りもので役に立つ物があったら使ってもらうの」
「そうだね」
「じゃあ甘えようかな」
その後の話でスキルの話題が出た。
俺のスキルって笑顔を対価だとかそう思っていたけど、なんだか違う気がする。
誰かを幸せにした褒美を神様が与えてくれるとジェシーさんが言った。
それは素敵な考えだけど、失笑みたいなのとか皮肉な笑いとかでも貰えるんだよな。
そっちは、これで復讐しろよと言ってるのかな。
ネクタイを緩める動作。
ああ、奪われたんだった。
買うか。
売れてますって書いてある308円のネクタイ。
安いな、おい。
黄色の布地に、黒色の文字で『カクゲイン』とカタカナと英語で書いてある。
うーん、ダサいけど、まあ良いか。
ネクタイを締めると、気が引き締まった。
やっぱりこれだよな。
なんか力が湧いて来る感じだ。
「【ステータス・オープン】」
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名前:タイセイ・コガネイ
レベル:7
残金:4854円
魔力量:0/0
攻撃力:86
防御力:79
瞬発力:74
持久力:85
知識力:1246
ユニークスキル:
スマイル100円通販
24時間戦えます
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えっ、【24時間戦えます】って、凄いスキル名だな。
スタミナ無限ってこと、ひょっとして、このスキルはネクタイのせいか。
ネクタイを外すとスキルが消えた。
ネクタイは社畜の証みたいな物だけど、凄いスキルだ。
あっても、別に困らないな。
気にしないでおこう。
食パンの効果は分からない。
でもみんなが元気になった気がする。
美味かったからかも知れないが、体力回復系かな。
Side:シンタ
畑仕事から家に帰り、昼飯の支度を待っていたら、娘が男を連れて来た。
誰だ? 見た事のない顔だ。
巡礼者か、珍しい。
昼飯を一緒に食う事にしたら、なんと白パンを何もない所から出した。
魔法ではないな。
そうかスキルか。
白パンを食べたら結婚式の事を思い出した。
あれは美味かった。
それを思い起こした。
祭りでの白パンも思い出深い。
祭りで配られた白パンを早々に食ってしまって、ジェシーが自分の分を半分わけてくれたんだった。
思えばそれがジェシーを好きになったきっかけだった。
パンと言えばこの村のパンはパン焼き職人が作っている。
勝手にパンを焼いて食べる訳にはいかない。
その代わり格安だ。
タイセイは村にいる時は白パンを振る舞ってくれるらしい。
なんて素晴らしいんだ。
「ところでそのスキルはどんな物なんだ」
俺はタイセイに尋ねた。
「笑顔を素に物を生み出す」
「なんか怖いな。笑顔が無くなってしまうのか」
「いいや。そんな事はないはずだ」
「あなた、たぶんだけど。誰かが幸せになると、神様が褒美として、物を与えてくれるんじゃないかしら」
「なるほど。お前の言う通りだ。白パンを食べると、笑みがこぼれる。無くなった気はしない」
「そういう考えもあるかもな。誰かに聞かれたらジェシーさんの言った説明をしておくよ」
「タイセイが来てくれて家の中が明るくなった気がする」
「そうね」
「うん」
「おおっ、新たに300円ゲット」
「こんな笑顔で神様に褒美が貰えるならいつでも来るといいよ。タイセイになら、いつでも扉を開けておく」
タイセイの力を俺達の家族だけが独占しているのは後ろめたい。
折を見て村長に紹介する事にしよう。
村長も無下にはしないはずだ。




