第7話 歯みがき・チート
Side:タイセイ
ブリタニーちゃんの案内で井戸にやってきた。
うほっ、井戸の現物を初めて見たぞ。
時代劇とかではお馴染みだ。
何か欠けている気がする。
そうだ滑車が無い。
桶にロープが付いているのが井戸の脇にある。
桶を投げ込んで引き上げるのだろう。
やってみる。
重いが持ち上がらない程ではない。
苦労して疲労困ぱいで持ち上げた。
「ふはぁ。運動不足だな。薪割りと戦闘から、まだ回復してないとみえる」
「やわな奴」
赤毛のジータが囃し立てた。
「そんな事を言うとチョコをあげないぞ」
「ごめん」
俺はチョコレートを出してやった。
やはり600円ゲット。
「口の中がさっぱりしなくて嫌なんだろう。水でゆすげばいい。待てよ。あれを普及させるか」
あれとは歯みがきだ。
子供用歯ブラシ99円のを6本出す。
俺のは229円の大人用。
歯みがき粉は子供用いちご味の229円だ。
俺のは安物の149円。
散財した気もするが、習慣になって毎回感謝を貰えるかもとの期待がある。
それと、実験台だ。
まあ、危険はないだろうけど。
「さあ、歯みがきしよう」
「歯みがき枝じゃないのね」
「そうだよ。俺がやるから真似するんだ」
歯みがきの真似をする。
おお、口の中がさっぱりした。
歯ブラシだけでこの効果。
歯ブラシのチートは、きっと口の中の浄化だろう。
子供達は歯みがき粉を付けて真似をした。
「うへぇ、薬の味がする。なんか染みなくなった」
「私は好きよ。さっぱりした」
子供達の反応は賛否両論だ。
歯みがきを嫌がる子がいるのは当たり前だ。
いちご味でも駄目だったか。
感謝の笑顔は200円しか貰えなかった。
こういう事もあるか。
「歯ブラシはあげるから、食後には歯を磨くんだぞ」
「歯ブラシは枝よりいい」
「くれるの。嬉しい」
歯ブラシはみんな気に入ってくれたようだ。
感謝の600円を貰えた。
「ちなみに歯みがき枝ってのはどんなんだ」
「これだよ」
井戸の脇に生えていた枝を折ると俺にくれた。
「噛んでぼそぼそにして使うんだ」
子供に教わってやってみる。
「おお、なるほどね。これはこれで良さそうだな」
歯みがきセットは異世界人にはイマイチか。
ミント味の歯みがき粉も出してみた。
「スーっとして、こっちの方が好き。あれっ、歯が痛くない」
気に入ってくれた子もいる。
感謝の300円が入った。
歯が痛くないってことは、虫歯も治すのか。
これはちょっと良いかもな。
歯医者に売りつけて、俺の商品だと患者に伝えてもらえれば、スマイル100円がもらえるかも。
歯みがきは液体や高級な奴など色々あるので、各人に合ったのを出す必要があるな。
歯みがきは何十回と使えるので出した後は不労所得だ。
各人に合わせてやるぐらいは良いだろう。
これは、俺が試してみないとな。
白い歯になる歯みがきを使ってみた。
鏡で確認すると、真っ白だ。
鏡のチートは判明してない。
恐らく、光魔法防御あたりだろうな。
幽霊を映し出す鏡とかもありそうだけど。
まあ、今は別に良いや。
今は歯みがきだ。
キシリトール配合の歯みがきを試す。
うぉっ、歯が欠けた?
いや、金属の詰め物とか、被せてあるのが取れた。
「ぺっ!」
吐き出すと、やはり金属。
舌で歯を触ると、なんと歯がちゃんとある。
鏡で確認。
おお、復活してる。
再石灰化ってことだけど、再生してしまうのな。
チートだな。
フッ素歯みがきもやってみたが、効果が分からない。
推測ならできる。
たぶん俺の歯はかなり強くなってるはず。
鉄とか齧り取れたりしてな。
そんな馬鹿なことは試さない。
鑑定系のアイテムが欲しいところだ。
鑑定で検索。
それらしいのはない。
本とかはあるけど、読んだら鑑定できるなんて落ちはないよな。
だが、専門書は高いので、ちょっと手が出せない。
鑑定は今後の課題だな。
Side:ジータ
みんな一緒に井戸へ行き歯みがきする事になった。
いちご味というのはどうも好きになれない。
口の中はさっぱりしたけど、これだったら枝で磨いている方がいいな。
「私、いちご味大好き」
「いちごはね。ケーキなんかに使うんだとっても美味しいぞ。今度出してやるよ」
タイセイという男がそう言っている。
ケーキって何だ。
食べた事がないや。
美味いのかな。
でも、いちごだろ。
あんまり期待が持てないや。
続いて出してくれたミント味の歯みがきに、俺はびっくりした。
スーっとして気持ちいい。
こういう奴を待っていた気がする。
これこそ大人の味。
いちご味なんて所詮はお子様だな。
「ミントが好きかい」
「好きだ」
「よし、内緒でキシリトールガムを出してやろう。ミント味だぞ。歯に良いんだ」
ガムというのを貰った。
噛むだけで食べたらいけないらしい。
口一杯にミント味が広がって鼻がスーっとする。
「何食べているのよ。ひとつ寄越しなさい」
ブリタニーに見つかってしまった。
「くそう、見つかった」
「口をくちゃくちゃやっていればね」
「みんなに言うなよ」
ワイロとか口止め料とか言うんだっけ。
ブリタニーの口の中にガムを放り込む。
「スーっとする味なのね。甘いのは好きだけど、果物味の方が良いわ」
「だから子供なんだよ」
「キスするんだったら、こっちかも」
「お前……」
「やーい、ジータが赤くなった」
「ほんと、真っ赤だ。ブリタニー、何言ったの?」
クロエに真っ赤になったところを見られてしまった。
からかわれた、屈辱だ。
「お前らなんか子供舌の癖に」
「ジータは大人だから、エッチなのね」
「くそう、覚えてろ」
ミント味のガムを口に放り込む。
噛んでいると悔しさが和らいだ。
お前らにはミントの良さは分からないさ。




