第36話 難攻不落要塞の戦い
Side:タイセイ
「ガルー国兵士の諸君! 正義も大儀もない戦いは虚しいと思わないか! ラフート国の兵士も人間だ! 血が通っているし、家族もいる! 死にたくない! 俺は勇者だ! 諸君がどうしても攻撃すると言うのなら、勇者の力を使わねばなるまい! 考え直せ!」
チート拡声器で、要塞の城壁から演説。
ガルー国兵士の9割が、寝返ったようだ。
半分の兵士は逃げた。
逃げてない扇動されたガルー国兵士は耳が聞こえないか、耳を塞いでいた兵士を攻撃してる。
チートパワーがあればこんなもの。
「守備隊長、あとは任せた」
「ここまでして頂ければ、十分です」
戦いは演説だけで終わった。
次に攻めてくる時は耳栓してくるかな。
村へ桃を食って転移。
なぜかクロエが抱き着いてきた。
「えへへ」
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スマイル100円、頂きました。
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「どうしたんだ?」
「戦いに行ったんでしょ。大人が話してた」
サクラが手紙を読んだのを聞かれてたな。
「心配かけたな。とうぶん戦争はないよ。大勝利だ。クロエはきっと勝利の女神だな」
「えへへ」
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スマイル100円、頂きました。
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クロエがちょろ過ぎる。
こんなお世辞で笑顔になるんだからな。
騙されないか心配だ。
「戦勝記念の宴をしよう。食べ物も酒も全部俺が用意する」
「村長さんに報せてくる」
クロエが駆け出して行った。
日本で食べ物を仕入れ、宴の準備。
勇者神に日本の食べ物を奉げるのを忘れない。
宴が始まり、スマイル100円の怒涛のメッセージ表示。
「タイセイ殿は勇者教の洗礼をうけたのですか?」
村長から、そんなことを言われた。
「何で?」
「てっきり、不落要塞の戦いで手柄を立てて、勇者認定されたとばかり」
勇者認定?
ああ、ネクタイをしたままだった。
勇者教の神官のサクラ達が何も言わないってことは、そう考えるよな。
「臨時勇者だよ」
俺はネクタイを外した。
「一時的に勇者になられたのは、神託ですか?」
「違うけど、今は勇者をお休み。敬語も要らないから」
勇者であることを隠すつもりはないけど、腫れ物に触るような態度はごめんだ。
偉い人扱いされたら、なんか嫌。
勇者だけど、メンタルは一般人。
気軽に接して欲しい。
「ではそのように。戦いの武勇伝を是非聞きたい」
「勇者の聖剣を食らいたくなかったらって、説得したら従ってくれただけだよ」
「腰のその安っぽいのが、もしかして聖剣ですかな?」
「うん、勇者の剣。レプリカだけど」
「なるほど、偽物。道理で玩具に見える」
「鑑定には勇者の剣って表示されるけどね」
「凄い。勇者の剣だって、おいらにも触らせて」
話を聞いていたジータがねだった。
「持っていって良いぞ。攻撃魔法は使うなよ。みんなで順番に勇者ごっこをすると良い」
「やった」
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スマイル100円、頂きました。
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男の子だな。
勇者ごっこが好きらしい。
Side:ガルー国の将軍
何で、演説ひとつで軍の前線の兵士が寝返るんだ。
ペテンだ、イカサマだ。
精神魔法か、禁呪が使われたに違いない。
後方の陣も寝返った兵士に襲撃されて、今は囚われの身で牢屋に監禁されている。
「身代金を払って貰えると良いがな。身代金が届かなければ、勇者教に引き渡しだ」
親戚は渋るかも知れん。
妻と息子は金をかき集めるだろう。
だが、かなりの金額を請求されているに違いない。
こんな無謀な作戦を計画した奴らに呪いあれ。
何が負けても構わないだ。
農民の兵士など、いくらでも金で補充できるなどと、ほざきやがって。
陣は後方だから、万が一にもやられることはない。
保証するだと。
敵の戦力を把握してないとは、なんたる怠慢。
密偵の奴らはどんな仕事をしてた。
工作資金だけもらって、敵国で豪遊してたのではあるまいな。
国に帰れたら、この責任は絶対に追求してやる。
そして。
「良かったな。身代金が届いたぞ。迎えの馬車がふもとまで来ている」
どうやら、助かったようだ。
そして、王城に帰還。
王の前にひざまずく。
「こやつの首を刎ねろ」
「そんな。今回の敗戦は私の責任ではない」
「王に口答えしたな。不敬だ。領地も没収しろ」
「こんな国は呪われろ」
突然、真っ暗になった。
口を塞がれ、担がれて運ばれる。
気が付いたら、勇者教の隠れ教会だった。
「一族も逃がしてやる。その代わり、全部喋れ」
勇者教が黒幕だったのだな。
あの精神魔法は、勇者教の手の者だろう。
仕方ない。
別の国へ、亡命しよう。
勇者教なら卑怯な真似はすまい。
正義を信奉する宗教だからな。
結局、戦いの最初から最後まで、手の平の上だったらしい。
暗くした時に王の命を取らなかったのは、罪状を調べている段階なのだろうな。
さすがに王族を断罪する時は、勇者教でも手順を踏む。
そう聞いている。
それに暗殺は正義ではない。
王を殺すなら、罪状を並べ立ててから、近衛騎士の全員を蹴散らして正々堂々と殺すのだろう。
それが勇者教だ。
ガルーという国は恐らくなくなる。
いや、国民皆殺しはないから、国の名前が消える。
そして、貴族達は罪に応じて、勇者教に殺される。
「はははっ、ざまぁみろ」
もはや笑うしかない。




