第28話 桃と肉まん・チート
Side:タイセイ
勇者教神官の猛者が3人もいれば、もう村の守りはなんとかなるだろう。
3人は変態だと思うが、戦闘力に関しては疑ってはない。
それに村人に配ったモデルガンもある。
今こそ、転移の桃を買うタイミングだ。
日本に帰れて、また異世界に戻れるかは保証されてない。
だが、勇者教がガルー国を敵認定したからには、俺がいなくても平気だろう。
勇者教は聖戦を発動する準備に入ったらしい。
村で金をスマイル100円を貯め、3千3百円で10個の桃を買う。
それと千円ほどのナップサック。
ナップサックのスキルは収納だった。
見かけよりたくさん入る。
安物なので、小屋ひとつ分ぐらいだけど。
誰にも別れは告げない。
必ず帰る。
もし、やばいことになるなら、勇者神が止めてるはずだ。
だよね。
カレーと米を供えたんだから、それぐらいのサービスはあるだろう。
念の為、チョコが入った最中アイスを奉げる。
アイスは消えた。
何も言わないから、きっと大丈夫。
チート・ピーラで桃を剥いて、桃を齧る。
背景が一瞬で切り替わった。
懐かしの俺が借りてたアパート。
ただし、表札は別人。
俺の部屋の荷物の行先を調べるのは後だ。
無くなって困るものはほとんどない。
チート・ナップサックから試しに小石を出す。
やった、チート道具はこの世界でも有効。
あと、桃は9個あるから、腐らないうちに行き来しよう。
まずは金だ。
これがなきゃどうにもならない。
キャッシュカードは財布にあるから、アパートにあった俺の預金通帳を他人が盗んで引き出したりしてない限りは金があるはず。
家賃の振り込みは自動にしてないからな。
自動にしてないから、追い出されたんだけどな。
銀行で限度額の50万円の金を下ろす。
どうやら通帳は盗まれてないみたいだ。
大家さんが犯罪を犯すとは考え難い。
たぶん誰かが保管してるはず。
行方不明者の銀行口座が凍結されないのは良くあること。
金を引き出したりすると、生きているか判断ができるからだ。
警察が防犯カメラの映像を見て、下ろしているのが他人なら、事件捜査。
本人なら、家出扱いみたいな感じだ。
ブラック企業だと、行方不明になる奴はけっこう出る。
家族は無事を確かめたくて、銀行口座を凍結しない方が多い。
とりあえず助かった。
住む所がないので、通販が使えないのは痛いが仕方ない。
スマホを契約。
免許証とクレジットカードがあって良かった。
アパートは追い出されているが、しばらくは問題はないだろう。
100均のポケットティッシュをたくさん買う。
ボールペンもたくさん買う。
ホームセンターで千枚のコピー用紙もいくつか買った。
事務用品とシールもいくつか買った。
後で先代勇者に奉げる食べ物も買う。
今回はこれで、異世界に帰ろう。
桃を食って村には戻らず、街の門に。
宿を取り、買って来たポケットティッシュを試す。
普通のポケットティッシュだな。
日本で買ったから当たり前だけど。
部屋でシールに俺の名前を書いて、一緒に笑顔になりましょうと付け加えて、ポケットティッシュとボールペンに貼る。
それなりの数が出来たら、孤児院の子供に配ってくれるように頼んだ。
そして、文字を書ける子供にはコピー用紙の隅にシールと同じ文章を書いてもらうように頼んだ。
このコピー用紙も配ってもらう。
院長が監督してくれるから、トラブルはないだろう。
ただで貰って文句を言う人はたぶんいない。
いても、院長が対処してくれるはず。
さぁ、今日中にシール全部を貼ろう。
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スマイル100円、頂きました。
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やっぱりな。
シール貼りをしている間に続々とスマイル100円が入ってくる。
ポケットティッシュは便利だものな。
笑顔にならない人もいるだろうが、数は力だ。
1%の人からスマイル100円を貰っても、採算は合う。
Side:メグ
タイセイからのお仕事。
通りに立って、ただで小さいティシュと、紙とペンを配るだけ。
「タイセイ様からの施しです! 便利な商品ですよ! お金は一切頂きません! 紙は10枚! 他はひとりひとつです!」
「へぇ。本当にただなのか? 何でこんなことをする?」
「タイセイが言うのには、名前を憶えて貰うためだそうです。名前を売るのは商売の基本らしいです」
うん、理由を聞かれたら、こう言うように言われてる。
上手く言えた。
へへん、私って役に立ってる。
「なるほどね。タイセイって商人は知らないけど、いずれこの街で有名になるんだろうな。そのペンをひとつくれ」
「はい」
もらった人は試し書き用に置いてある紙に書いてから、にっこり笑った。
「こいつは便利だ。ふたつほしいところだが、一人ひとつなら仕方ない」
「毎日やる予定なので、明日も来て下さい」
「そうするよ」
どんどん、人が増える。
孤児院から運ばれてくる品物が追い付かない。
そして、夕暮れには品物が全てなくなって、終わった。
そして、夕飯は白いあったかいパン。
「うわっ、ふわふわ」
触るとまるで雲。
かぶりつくと、中には肉が入ってて、肉汁がじゅわっと押し寄せてくる。
「これは何なのー?! 肉汁の洪水に飲み込まれそう! 寒さ耐性+1だって」
「そういう効果ね。メグ、これは肉まんだよ」
瞬く間に肉まんが、なくなっちゃった。
「もっと味わってゆっくり食べれば、良かった」
「よし、お替わり自由だ! 遠慮せずに食え!」
「良いの?」
「ああ、たくさん儲かったから、奮発する。スキルで出して熱々だぞ」
「やったぁ!」
ええっ、お金は貰ってないのに、儲かったの?
何でかな?
とっても不思議?
でも、肉まんさえあれば、頑張れる。
ううん、タイセイが笑顔なら頑張れる。
「うひょひょ、1個160円なのに、一口ごとにスマイル100円か。コンビニの肉まん恐るべし。これならコンビニスイーツで当分いけるな」
今もタイセイは笑顔。
孤児のみんなも笑顔。
これだけ美味しかったら、毎日食べても笑顔になる。
幸せ。




