第20話 花粉症対策グッズ・チート
Side:タイセイ
さて、どうしよう。
宿を取るにも勝手が分からないな。
ゲイリーさんに手配を頼めば良かったか。
サクラには頼みたくない。
宿の位置を知られたら最後な気がする。
変態との朝チュンは御免だ。
まずは腹ごしらえだ。
露店で何の肉か分からない串肉を買う。
香辛料が高価なだけあって味付けはハーブと塩だ。
でも、意外といける。
俺を羨ましそうに見ている女の子がいる。
着ている物もみすぼらしいし、貧しい家の子かな。
ぐぎゅるると腹の虫が鳴いたのが聞こえた。
腹が減ってるのかな。
何か食べ物を出してやっても良いが。
金は余っているから串肉を買ってやろう。
「食べなよ」
俺は女の子に串肉を差し出した。
「慈悲は受けない、ずびっ。物乞いじゃない、ずびっ」
「小父さんはね。笑顔を糧に生きているんだ。笑顔がないと生きていけない。そういう病気なんだ」
「嘘よね、ずびっ」
「病気は嘘だけど、糧にしているのは本当だよ」
「じゃもらう、ずびっ」
女の子は串肉を食べ始めた。
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スマイル100円、頂きました。
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「さっきから、鼻をすすっているけど、風邪かな」
「ううん、いつもこうなの、ずびっ。前は、季節で治ったんだけど、ずびっ」
たぶん、花粉症とダニアレルギーだな。
酷い人だと、一年中だ。
アレルギー性鼻炎なら、ティッシュとマスク。
それに薬だ。
たしか友達が良く効くといってたのが、2300円ぐらいで28日分だ。
毎日1回、感謝されると元が取れる。
まあ、別に元が取れなくても良いか。
ティッシュをまずは出してやった。
「さあ、鼻をかめよ」
「うん」
女の子は鼻をかんだ。
おお、ティッシュペーパーのスキルは浄化だな。
顔全体が綺麗になった気がする。
そして、マスクを着けさせた。
マスクのスキルは防毒辺りだろう。
そんな気がする。
薬だが、これは初対面の人が飲めと言っても飲まないだろう。
さて、どうしよう
「お家に連れてってくれるかな。大人と話がしたい」
「品物のお金を払えって言うのね」
「いや、小父さんは商人なんだが、珍しい物を売っている。それは良いのだが、珍しい物は馴染みがないだろう。だから最初はただで使ってもらって感想を聞く」
「へぇー、そうなんだ」
「大人からも意見が聞きたいんだ」
「分かった案内する」
案内されたのは孤児院だった。
「初めまして、タイセイと言います」
「メグが良くして頂いたようで、感謝します」
院長だと思う人が応対してくれた。
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スマイル100円、頂きました。
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「それでですね。メグちゃんの病気に効く薬を持っているんですが、試しに使ってほしい」
「危険はないのですか?」
「俺の故郷ではありふれた薬です」
「そうですか。分かりました。ご厚意に甘えたいと思います」
花粉症の薬を一瓶出してやった。
「ええと、この街は初めてなんで、良い宿を知りません?」
「羊のお昼寝亭という宿があります。そこがお薦めですよ」
「ありがとう。行ってみるよ」
無事に宿が取れたな。
地元の人のお薦めならハズレではないだろう。
Side:メグ
おかしな人に会った。
ただで、食べ物を恵んでくれた。
聞いたら、笑顔を糧に生きているですって。
きっと寂しい人なのね。
周りに一緒に笑ってくれる人が居ないのかも。
首に巻いてる布も変。
あんなの見たことない。
奴隷かなとも思ったけど、お金があって自由に使ってるから違うよね。
苦しくないのかな。
貰ったティッシュペーパーという物はとても便利。
鼻をかむのは当たり前だけど、テーブルなんかに物をこぼした時に拭いたりも出来る。
なぜか、テーブル全体がぴかぴかになった。
それに一枚取ると、次のが出て来る。
不思議。
孤児院の男子なんかがやりたくて、うずうずしてたわ。
院長が止めたけどね。
私は必然的にティッシュ係になった。
ティッシュが必要になると私の所に来る。
「ゴキブリに触りたいの。ティッシュ下さい!」
「私も虫に触るのは嫌。ティッシュを許可する」
「窓を拭きたいの」
「駄目よ。雑巾で十分」
「さっきのゴキブリだって、雑巾で良かったじゃない」
「そうね。次からはそうする」
「もう、しっかりしてよ!」
「この季節は鼻が出るし、目もかゆいしで大変なのよ」
「病気じゃ仕方ないわね」
実はつらくない。
タイセイにもらった薬を一粒飲んでから、ぴたっと鼻水は止まった。
目のかゆみもない。
マスクは少しうっとうしいけど、してる。
マスクは他の子にも役に立ってる。
埃に敏感な子がいて、掃除する時にマスクをすると平気になった。
タイセイが訪ねてきた。
「ありがと。色んな品が役に立っているわ」
「ティッシュがこんなに感謝されるとは思わなかった」
「感謝されると分かるの?」
「ああ、糧だからね」
やっぱり、変。
タイセイは変。
「ティッシュは安いから、もう5箱を置いていくよ。バンバン使って構わないから」
「ありがと」
変だけど、タイセイは何だか好きだな。
私達が笑顔を見せると本当に喜んでくれる。
その態度は嘘じゃないと思う。
笑顔なんかにそんなに価値はないのに。
いえ、笑顔が消えた孤児院を思い描いてみた。
そんな事になったら、きっと悲しい。
価値はないようで、実際に笑顔って価値があるのかも。




