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第19話 ロックオンされた

Side:タイセイ


 街に着いた。

 サクラは宿の馬小屋に馬を入れて、宿の馬丁に世話を頼んだ。

 俺はサクラと同じ宿には泊まりたくない。

 宿は後で探そう。


「さあ、行くぞ」


 サクラに腕を取られた。

 鎧を着てなきゃ、当ててんのよってギャルゲーなら言いそうだ。

 実際は肘で感じるのは金属鎧の硬い感触だけ。

 まあ、期待などしてないけどな。


 鑑定師の看板はモノクルに金貨。

 うん、覚えた。

 利用する機会がありそうだ。

 俺のスキルで出した品物の効果が分からなくて、気になる物は鑑定してみたい。


「邪魔をする」

「いらっしゃい」


「ほら、ネクタイを外せ」

「へいへい」


 ネクタイを外してカウンターに載せる。


「拝見します。【物品鑑定】。おおっ、スキル付きのアクセサリーですね。『24時間戦えます』というスタミナと体力が無限になる効果のようです。金貨千枚は下らないでしょう」


「勇者の世界の物なのか?」

「ええと……。おお、このネクタイの文字は勇者文字。これを知ってて偽造したなら、作った者は超一流の贋作師ですね」


「勇者文字か。私は習ってないが、勇者教には伝わっているな。聞いたことがある」

「知らない人がほとんどですよ。私は勇者の言葉が刻まれている石碑を解読したくて、大学生だった若い頃に勇者文字を研究してました。大学でも言語学などの限られた分野の研究者しか知らないはずです」


「ちょっと待て」


 サクラが背嚢(はいのう)から、カップ麺の空の容器を取り出した。


「拝見します。全て勇者文字ですね」


 やばい、足音を立てないようにゆっくりと後退る。


「貴様! おい、逃げるな!」


 捕まってしまった。

 まあ、村の位置を知られてるから、逃げてもアウトなんだけど。


「説明しろ!」

「空の容器なんか捨てろよ! この貧乏性!」

「便利そうだったからな。穴が開いたら捨てるが。中身が漏れないうちは使う。熱い物を容れた時に熱くない便利な品だからな」

「木の椀でも使えよ」


「さぁ、吐け。時間稼ぎは無駄だぞ。援軍でも来る予定がない限りはな」


 援軍なんか来ないさ。

 知ってる人なんてこの街にはいない。

 知ってるのはサクラとゲイリーさんの所の隊商の人だけだ。

 援軍は無理だ。


 チート商品で逃げることはできる。

 だが、指名手配されるに違いない。

 勇者教はかなりの信者数みたいだし、これは詰みだな。


「ここじゃ不味いので、宿で話す」

「世話になったな。ここでのことは他言無用だ」


 サクラが金貨を1枚投げた。

 そして、ウンターからネクタイを素早く取ると、カップ麺の容器と共に背嚢(はいのう)に押し込んだ。


「鑑定の仕事の秘密は洩らしません。評判に関わるので。お釣りを出しましょうか?」

「取っておけ。余った分は口止め料だ」

「ありがたく頂きます」


 がっちり腕をホールドされた。

 ああ、うかつだった。

 そりゃ、俺だって財布とか、日本から持って来てる。

 先代の勇者も何か持ってきてもおかしくない。

 本とかな。


 それに、おそらく勇者が建てた日本語の石碑もある。

 文字が伝わるのは仕方ないよな。


 サクラの借りた宿の部屋に連れ込まれた。

 色恋ならまだましだったのに。

 サクラは剣を抜くと俺に突きつけた。


「さぁ、吐け! 贋作師なのか?! そういう組織なのか?! おい、正直に吐け!」

「信じて貰えないかも知れないが、勇者なんだよ」


「ふん、そうか。なるほどな」

「信じるのか?」


「スキル付きの品物など、超一流の職人か、勇者でもなければ作れん。生産系の勇者なのだな」

「まあね」


「邪神は復活するのか?」

「知らん」


「スキルを貰った神様から、何も聞いてないのか?」

「聞いてないな。スキルを注文したら、よかろうとだけ言われた」


「最初から話せ」


 ガルー国の顛末を話した。


「ガルー国のやつら、勇者様を侮辱したな。殲滅せねばなるまい」

「俺もガルー国の奴らは許せない。庶民はともかく、関わった王族と貴族は処罰したい」


「おそらく、神の目的はそれだろう。勝手に勇者召喚を行ったガルー国を亡ぼせと仰せだな」


 サクラはネクタイを背嚢(はいのう)から出すと、片膝をついてうやうやしく差し出した。

 俺はそれを受け取ると、慣れた手つきで身に着ける。


「じゃあ、俺は街を観光してから、村に帰るから」

「はい、勇者様んっ♡」


 うわっ、ちょっとやばそう。


「じゃね」

「村へ帰る時はお知らせ下さいませぇ♡ ご一緒しましようねぇ♡ 相乗りなんて良いですねぇん♡ ぐふふん♡」


――――――――――――――――――――――――

スマイル100円、頂きました。

――――――――――――――――――――――――


 口調が気持ち悪い。

 完全にロックオンされてる。

 勇者を崇める勇者教なら、本物が現れたらこうなるよな。

 急いで部屋から出た。


 運命の人とか言ってたな。

 下手するとベッドの中まで押し掛けてくるんじゃないか。

 サクラを置いて、村へ帰りたい。

 でも、それをすると怖いことになりそうだ。


 先代勇者の野郎。

 なに運命の人だなんて神託を下してんだ!


 いくらなんでもあれはちょっと酷い。

 顔とかスタイルはストライクだけど、性格が濃すぎる。

 いや、濃すぎるどころじゃない。

 変態の部類だ。


 それもかなり強烈な。

 護衛してやれぐらいの神託にしとこうよ。

 おうち帰りたい。


 でも、家賃滞納で日本で借りたアパートを追い出されているかもな。

 一か八かで転移の桃を食いたい気分だ。


 逃避してても仕方ない、現実案を出そう。

 サクラと協定を結ぶ必要があるな。

 すんなり提案を飲んでくれると良いけど。


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