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第17話 運命の人

Side:タイセイ


 荷馬車に乗り寝転がり空を見上げる。

 青い空は地球と同じだ。

 どことなくこの青い空が地球にもつながっているのではないかと、たわいない事を考えた。


 サクラは自前の愛馬に乗って、ポカポカとゆっくり馬車の横を歩かせている。


「そろそろ、一休みしましょう!」


 ゲイリーさんが御者台から声を張り上げた。

 ガクンと馬車が停まる。

 他の馬車も停まったようだ。


「街まではあと一日です」

「わりかしと近いんだな」

「ええ、そんなに遠出は出来ません」


 キャラバンの人達は馬に水を与えたり世話をしている。

 サクラも同様だ。

 うん、暇だ。

 少し小腹も減ったな。


 そうだ。

 カップ麺をみんなに振る舞ってやろう。

 俺は石でかまどを組み、ライターで薪に火を点けた。

 ヤカンに水を張り、お湯を沸かす。


 しばらくして、お湯が沸騰したので、カップ麺に注いだ。

 カップ麺のスープの匂いが辺りに立ち込める。


「むむっ、機能美を感じる」

「ありふれた携帯食だよ」


「いや、これは工夫されている。一つ頂いても?」

「持って行っても良いよ」


 ゲイリーさんはお湯が注がれていないカップ麺をつぶさに観察し始めた。


「容器は密封されていて、お湯を注ぐだけで、食べられるようになっている」


 そして、容器の蓋を開けるとお湯を注ぎ始めた。


「スープと具や麺が一体になっている。これは究極の形だ。これはどこに行けば手に入るのですか?」


 ゲイリーさんに詰め寄られた。


「ちょっと、スープがこぼれる」

「すいません、興奮してしまって」


「俺の故郷では安価で売っていたよ。でも、願っても、ここでは手に入らないけどね」

「そんな貴重な物を分けて頂いたのですね。よく考えたら、チャンスです。カップ麺でしたっけ。これを作って売れば良いんです」

「作れそうなのか」

「ええ、魔法を使えばね」


 異世界を舐めてたな。

 カップ麺を作るような技術があるとは。


「ぜひ、頑張って下さい」

「ええ、頑張りますとも。ところでヒントを下さい」

「聞いた話では、麺は油で揚げていたとか。具材は凍らせて乾燥させるとか」

「なるほど、参考になります。試作品ができたら持って行きます。召し上がって感想を下さい」

「はい、その時は」


 スマイル100円を頂いた。

 キャラバンの他の人達もカップ麺を食べて笑顔になっている。

 スーパーの安いのだとカップ麺は100円しない。

 一人からスマイル100円ずつ貰うと黒字だ。

 村に帰ったら、村の人達にも振る舞ってやろう。


 カップ麺を食べ切ると、ひとつしか食べてないのに腹が苦しい。

 胃袋が小さくなった気分だ。

 いいや、カップ麺の特殊能力はきっと満腹感だな。

 もしかして、量が胃袋の中で増えてても驚かない。


「タイセイ、私がバドラ村に来たのは、神託があったからだ。勇者神様からのな」

「へぇ、どんな?」

「運命の人がそこで待っているらしい」


 ギャルゲーの台詞だ。

 ぞっとした。


「どんな運命?」

「分からん。勇者神様からは、『運命の人に会って手助けせよ。お礼にカレールーを頂いて、奉げよ』ってだけだ」


 勇者神って、先代の勇者なのか?

 神なら日本に行って、カレールーぐらい買えよ。

 気軽に地上に降りたらいかんとか規則があるのかな。

 それだと、可哀想だ。


「ええと、勇者神様って、あのネクタイの勇者様?」

「貴様、ボロが出したな。語るに落ちるとはこのことだ。勇者神様に会って許可を頂いたと言ってぞ」


 剣を抜くサクラ。


「姿は直に見てないんだ」


 鏡で見ても直に見てないからね。


「ほう、まあ良い。そうだ、邪神を斬った勇者様は死後、神になられた」


 カレールーをここで出したら不味いよね。

 いくら、サクラが間抜けでも俺が勇者だとばれる。


「俺が運命の人かどうか判らない。言われてないからな」


 ここは惚けるに限る。

 だが、100%の確率で俺が運命の人だ。

 どういう運命なのか知らないけどな。


Side:キャラバンの一員


 馬を休ませる為にキャラバンが停まった。

 忙しい。

 色々とやらないといけない仕事がある。


 ふと得も言われぬ、かぐわしい香りが漂ってきた。

 腹がぐーっと鳴る。


「みなさん、召し上がって下さい」


 キャラバンに同行している村人が、何やら容器を持ってそう言っている。

 さっきのふと得も言われぬ匂いはこの容器からしているようだ。

 受け取って観察してみる。

 麺をスープに浸してあるのか。

 お湯を注ぐだけでスープになる携帯食は売っているのを見た事がある。

 しかし、麺や具材もとなると見た事がない。


 匂いを嗅ぐ。

 食欲を誘う匂いだ。

 何の匂いだろう。

 肉とも違うし、野菜とも違う。


「この味付けは何なのですか?」

「ああ、海の魚介と海藻とスパイスだと思う」


 なるほど魚と海藻か。

 腹が鳴る。

 もう我慢できない。

 フォークで料理を口にかき込んだ。


 ええっ、満腹になった。

 ちょっと食べただけなのに。

 腹の中で膨れるのか。


 美味い。

 複雑な味で、後を引く味だ。

 一つ食べきって、満腹なのにもう一つ欲しくなった。


 ゲイリーさんがこの携帯食を作る話をしている。

 さすがに商会を仕切っている人は違う。

 これを食って作ろうなんて発想はない。

 だってどのくらいの食材を使っているのか想像しただけで頭が痛くなる。

 海で獲れる魚と海藻だろう。

 それにスパイスだ。

 組み合わせを試行錯誤するだけで金貨が飛んで行くはずだ。


 でも、これが旅の途中に気軽に食べられるようになったら、楽しいに違いない。

 旅の楽しみが一つ増えたような気がした。


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