第16話 商人が来た
Side:タイセイ
何日か経ち、スマイル100円の金もだいぶ貯まった。
商品の売り上げはここの所は落ち着いている。
落ち着いているというよりは下降傾向だ。
スマイル100円の売り上げも減ってきてる。
俺が笑ってもスマイル100円は入らないからだ。
村の人々が俺の商品に慣れたってのもある。
商品が売れて現地の硬貨が貯まっても、あまり嬉しくない。
スマイル100円が入らないと、俺にはスキルで買うという行為が出来ない。
そんな悩みを抱えていた時に本職の商人がやってきた。
やった。
これで商人に売るという行為が出来る。
ただ、商人から物を買わないと次から来てもらえなくなる恐れもある。
そこでだ。
「アンドリューさん、腐らない物を俺が商人から買い上げて、村に備蓄しておきたい。管理を頼めるか」
「任せて下さい」
「もしお金に困っている人がいたら、ツケで売ってあげてほしい」
「優しいですな」
「人間なんて優しさに生かされているのさ」
商人との話し合いになった。
「初めまして、商人のゲイリーです」
「タイセイです。欲しい物はリストにしてある」
「拝見します。大量ですな。ですが、村人が買い物を控えて売り上げが減っています。その事と何か関係が?」
「俺が商人の真似事をして砂糖とか色々売ってしまったからだと思う」
「なるほど。今の村人は金が無いと。私どもの手落ちでなくて良かった。嫌われたかと思いましたよ」
商人の俺を見る目がギラギラしている。
「ええと、商談が済んだのなら頼みごとがある」
「どんなですかと聞く前に砂糖の入手先を教えてもらえませんか?」
そうくるよな。
それに対する答えは決まっている。
「俺のスキルで生み出した。ただし生み出すのには代償が要る」
「代償は何か聞いても?」
「貴重で大事な物だ。それこそお金には代えられないほどのな。たぶんこれがあるといくらでも働けるという奴もいるぐらいにな」
「ほう、詳しく教えてもらえないようですが、嘘は言ってないみたいですね」
「そうか」
「それに嘘でも、代償なしに砂糖が無限に作れるなんて話は、とうてい信じられない。そんな人が居たらお目に掛かりたい」
「そうだよな。俺もそう思う」
「ピーラーという物があるそうですが」
「俺の故郷の発明品だ」
「見せて貰っても」
「ちょっと待て、取って来る」
俺は家から出てピーラーを買った。
家に戻ると商人が興味津々の目でピーラーを見る。
「素晴らしい」
商人からスマイル100円を頂いた。
「使わなくても分かるのか?」
「ええ、これに使われている制作技術の高さから考えるに、便利なのでしょう」
「お近づきの印にあげたいところだが貴重な品なんでね」
「見ただけで結構です」
「タイセイ、騎士団から返答があったぞ。もう既に騎士団は動いている。商人が来るとは都合が良い。街まで乗せて貰え。私も一緒に街まで行く」
サクラからそう言われた。
「神官様の用事で、街まで行きたいんだが、乗せてくれるか?」
「いいですよ。荷台に乗っての旅ですが」
「贅沢は言わない」
クロエちゃんが入って来て涙目で俺に詰め寄った。
「タイセイ、行っちゃうの?」
「馬鹿だな。ちょっと出かけるだけさ。すぐに帰って来る」
「約束よ。破ったら承知しないんだから」
「神に掛けて誓うよ」
クロエちゃんからスマイル100円を頂きました。
何にもしてないが、帰って来るという約束が嬉しかったのだろう。
Side:ゲイリー
今回の商売は異例尽くめです。
いつもは飛ぶように売れるドライフルーツが売れない。
嗜好品は全滅に近い。
この村に何があったのでしょう。
疑問はすぐに解けました。
タイセイという人物が砂糖を売って歩いたようです。
この人物、ピーラーやマッチという物を他にも売っているようです。
ピーラーを見せてもらいました。
なんと言う事だ。
芋の皮をむくためだけに、こんな手の込んだ物を発明したというのですか。
それに神器みたいに、スキルを内包しているようですね。
それがなくても素晴らしい。
素人にはこの素晴らしさは分からないでしょう。
薄く作られた刃。
刃の向きが自在に変わるようになっています。
完成された美と言う物があります。
何度も言うようですが、素晴らしい。
「マッチも見せて貰えますか?」
「これだ」
マッチもまた完成されています。
木の細い棒の先に赤い何かが付いているのです。
これだけ。
火つけの道具だというのに余分な物は要らないと言わんばかりです。
「どうやって使うのです?」
「箱にザラザラした面があるだろ、それを赤い所とこすると火が点く」
「なるほど」
マッチをこすります。
ボっと音がして火が点きました。
これも機能美ですね。
この形に辿り着くまでどれだけの試行錯誤があった事やら。
これも、特殊能力があるのですか。
見たい物が見えると。
「こんなのもあるよ」
「うひっ」
思わず変な声が出ました。
複雑な形ですが、機能美があります。
金属の棒に灰色の光沢がある持ち手。
持ち手の中には何か液体のような物があります。
「何ですかこれは」
「ライターだ。ぽちっとな」
タイセイがボタンをカチっと押し込むと火が点きました。
消える気配がありません。
なんという事でしょう。
マッチより便利な物があるなんて。
これも機能美に優れています。
手元から離れた所の金属の棒みたいな所から火が出ています。
これなら熱くありません。
液体は油の一種なのでしょう。
特殊能力はないようですが、これだけの高機能なら、特殊能力と言っても差し支えありません。
「どういう原理で火がつくのですか?」
「火打石みたいな物が入っていると思う。おれもこのタイプのライターは分解した事が無い。とにかくボタンを押すと火打石が作動して燃えるガスに火を点けるはず」
なるほど火打石と燃える物がセットになっているのですね。
それが外からは微塵も分からない。
これこそ機能美です。
タイセイの故郷に行ってみたくなりました。




