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第15話 味噌・チート

Side:タイセイ

 俺とサクラの為に村のみんなが歓迎会を開いてくれるらしい。


「タイセイ、紹介しておく。こちら村長のアンドリューだ」


 シンタから村長を紹介された。


「巡礼者のタイセイです。今はこの村に骨を埋めてもいいかなと思ってる」

「そうかい。なら人別帳に記載しておくよ。村に人が増えるのは嬉しいよ。最近の若い者は都市にみんな出て行ってしまう」

「なにか産業でも起こせれば、良いね」


「学のある人は違うね。考えてみるよ」


「お招きかたじけない」


 サクラが挨拶する。

 鎧と剣は装備したままだ。

 常在戦場ってことだろうな。


「神官様も、我が家だと思って、おくつろぎ下さい。ろくなおもてなしができなくて、申し訳ありません」

「いや、勇者教は質素を好む。どんな料理でも美味しく頂くよ。心がこもった料理だからな」


「そう言ってもらえると嬉しい限りです。よし、始めるぞ! さあ、大鍋でスープを作ろう! みんな材料は持ってきたか?!」

「おう!」


 スープを作るのか。

 俺もなんか出さないと不味いな。

 野菜を持って来た人が大半だ。

 香辛料は不味いと言われたから、みそ味のスープはどうだ。


「味付けは任せてくれ。俺の故郷の調味料を使う」

「おう、任せたぞ」


 野菜が大鍋に投入され、申し訳程度に肉が入る。

 煮たったので、出汁入り味噌を入れる。


 味噌のなんとも言えない匂いが立ち込めた。

 村人は持って来た器にスープを盛った。


 俺も食べてみた。

 まんま味噌汁だな。

 異世界に来て初めて食べる味噌汁だ。


「美味しい。暖まる味だね」

「どこか懐かしい味だ」

「今朝、腐った物を食べたのか、腹が痛かったんだが。治ったな」


 おお、腹痛が治るのな。

 食べた人の中には、走ってどこかに行く人がいる。

 腹を壊したのかな?

 でも痛いとかは言ってない。


 そして、しばらくして帰ってきた。


「すっきりしたぜ」


 ああ、そういうことね。

 能力は胃腸薬ってことか。


 味噌汁は好評だ。

 外国人には合わない人がいると聞いていたが、異世界の人間にはそうでもないようだ。


 スマイル100円が凄い勢いで入っていく。

 もしかして出汁をとる文化がないのかな。

 それで美味しく感じるのかも。


 村長のアンドリューが寄って来た。


「このミソという調味料なんとも言えない旨味がありますな」

「実は豆を発酵したのに、海藻と魚の出汁が入っているんだ」

「ほう、この村でも作れるのかな?」


 麹は買える、スーパーなんかでも売っているからな。

 殺菌が大事だと聞いた事がある。

 消毒用アルコールに良いのがあった。

 口にしても安全アルコールだ。

 こういうのを使えば良いな。


「試行錯誤すれば出来るかと」

「そうかい、嬉しいねぇ。産業が出来れば若い者も帰って来る」

「そうなれば、いいですね」


 味噌作りをやり始めるのか、簡単には上手くいかないだろうな。

 でも、希望を持つのは良い事だ。


 俺がスキルで出した麹なら、特殊能力で上手く行くような気もするが、どうだろうな。


「おい、これはミソではないのか。村長が話していたのを聞いたぞ」

「ミソだけど、それが何か?」

「勇者様が食べたいと言っていた物のひとつだ」

「たぶん、それを聞いて、誰かが作ったんじゃないかな。豆と塩と麹菌があれば、作れるらしいから。麹菌は麦の穂とかに付いていることがあるってどこかで聞いたな」


「物知りだな」

「自称商人だから」


「ふん、怪しいやつめ。商人の大半は詐欺師同然だ」

「そうかも知れないな」


「自分から認めるとはますます怪しい奴だ」

「ええっ、どう言えば、正解なんだよ。どうせ否定しても怪しいって言うんだろ」


「良く分かったな」

「そりゃないよ。疑わしきは罰せずって言葉はないの?」


「ないな。疑わしきは斬る」


 勇者教ってこんな奴らばっかりなのか。

 でも、村人は不安そうではない。

 悪人を退治してくれる有難い存在なんだろうな。

 目を付けられた俺は、諦めるしかないってことか。


Side:アンドリュー


 タイセイという男には驚かせられた。

 なんのへんてつもないスープが高級なスープになった。


 なんと言うのか深みがある。

 いっぺんで虜になった。

 これを作る事ができれば。


 聞けば豆から作るらしい。

 豆はこの村でも作っている。


 よし、作るぞ。

 まずは小規模からという事で、小さい樽で始める。


 分量のレシピはタイセイがどこかから読めない本を出してきた。

 何語で書かれているのだろう?

 まあいい、たぶん知らない程遠くの国なんだと思う。


 豆を煮て潰して、コウジというのと塩を混ぜる。

 後は寝かしておくだけなのだとか。

 カビが生えたりすると失敗らしい。


 結果は半年後。

 今から楽しみだ。


 魔法で飛ばされて来たと聞いた。

 タイセイはもっと色々な知識を知っているはずだ。


「半年は長いな」

「ええ、酒造りもそうだけど、長い」


「豆から作る他の物はないのか?」

「すぐに出来るのなら納豆とか」


 出されたナットウという物を見る。

 まず匂いが臭い。

 これはたまらん。

 腐っているんじゃないか。

 木の二本の棒でタイセイがかき混ぜる。

 うわ、糸を引いているじゃないか。

 これは駄目だ。


「食うと美味いんだけどね」


 タイセイが平気な顔でナットウを食う。

 食えるのは分かったが、これは特産品にはならないな。

 やっぱり楽な道は駄目だ。

 すぐに真似される可能性もある。

 地道に行くとするか。


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