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第11話 火点け道具・チート

Side:タイセイ

「ふぁー、よく寝た」


 悪夢は見なかった。

 チューハイの特殊能力だろう。


 寝台は硬かったが、疲れていたので熟睡できた。

 少し虫に食われて所々がかゆい。

 衛生状況が悪い所のあるあるだな。


 この辺の改善も後々にやっていきたい。

 ぐがっ。

 起きたら腕が猛烈に痛い。


 筋肉痛だなこりゃ。

 今日は力仕事を絶対にしないぞ。


「タイセイ、起きた!?」


 クロエちゃんが起こしに来た。


「うん、ばっちりだ」

「行こ、行こ。早く」


 クロエちゃんに手を引かれて家に入る。


「おはようございます」

「おはよう」


 シンタさんはリビングで水を飲んでくつろいでいる。


「おはよう。クロエ、朝ごはんの支度手伝って」


 ジェシーさんはそう言って席を立った。


「ええー」

「文句、言わないの。いいお嫁さんになれないわよ」

「いいもん。将来、タイセイと結婚する」

「あらあら」

「子供の言う事ですから。シンタさん、睨まないでくれます。クロエちゃん、朝ごはんの支度を一緒にしよう」

「やる」


 三人で炊事場に入った。

 ジェシーさんは灰が入った壺の中を鉄の棒でかき回し始めた。


「火種が消えているわね。クロエ、火熾しやってみなさい」

「分かった」


 クロエちゃんが火打石をカチカチやり始めた。

 木をほぐして綿状にしたものに火花を浴びせるが、一向に点く気配がない。


「できない」

「もっと力を入れて」


「できないよ。無理」

「もう、根気が無いんだから」

「俺のスキルの出番がきたようだ。【スマイル100円通販】。出でよマッチとライター」


 ライターは100円。

 マッチは12箱で170円。


「これどう使うの。教えて、教えて」

「ライターは少し握力がいるからマッチにしておこうな。赤い方を箱に当ててシュッと擦る」


 クロエちゃんはマッチを一本取り出すと火を点けた。


「やった、簡単だ。炎の中にキュラスのドライフルーツが見える」


 スマイル100円頂きました。

 幻を見せるマッチか。

 たしか、キュラスのドライフルーツはクロエちゃんの好物。

 となると、童話のあれかな。

 欲しい物が見えるって奴。

 結末が悲劇にならないと良いけど。

 俺には関係ないな。


「タイセイさんのスキルに頼りすぎるとクロエが堕落しそうね。見た所マッチだと半年ぐらいしか持ちそうにないわね」

「それなら良いのがある。ファイヤースターターだ。一万回ぐらい使えると聞いた事がある。少し高いので今は買わないが、マッチとライターでスマイルを稼げばすぐに買える」


「ライターの使い方を教えて」

「このボタンを強く押すだけだ」

「うんっしょ! 硬いー! 点いたぁ!」


 クロエちゃんが苦労して、ライターのボタンをカチっと押し込む。

 ボっと火が点く。

 ライターの特殊能力は分からない。

 炎に変なところはない。


「便利なのね。近所に貸し出すようにするわ。クロエ、マッチを配って歩きなさい。説明もちゃんとするのよ。それぐらい出来るわよね」

「うん、任せて」


 クロエちゃんのおかげで4100円が貯まった。

 俺がおすそ分けした事をちゃんと説明してくれたんだな。


 よし、ファイヤースターターを買おう。

 ファイヤースターターはマグネシウムの棒に缶切りみたいな形状の着火器が付属している。

 前にキャンプで使った事がある。

 使い方は簡単だ。

 着火器でマグネシウムの棒を擦れば良い。


 やってみると盛大に火花が散った。

 火打石など比較にならない。

 うんっ、火花が空中を漂っている。

 念じると火花が動いた。

 火花魔法だな。

 これなら、本来の着火もできる。

 攻撃にも使えそうだけど。

 魔法スキルはないけど、魔法使いの気分が味わえる。

 ちょっと楽しい。


「うわ、きれい」

「クロエちゃんも、やってみるといい」

「うん」


 盛大に火花が散り、空中を泳がせ、クロエちゃんは木の綿に火を点ける事が出来た。

 クロエちゃんは、にぱっと笑い。

 スマイル100円ゲット。


「ファイヤースターターなら湿気ないし、かなり長い間使える。クロエちゃんの嫁入り道具になるぐらいにね。この村に滞在してる間の納屋の使用料と、食事代だよ」

「ありがとう」


 ジェシーさんからもスマイル100円頂きました。

 おお、これで宿代と飯代がなんとかなった。

 ファイヤースターターの999円ぐらい惜しくない。


「さあ、クロエ、スープを作るわよ」


 朝飯の支度が始まった。


Side:クロエ


 火種が消えていたので、火熾しする事になった。

 火打石を打ち合わせるけど、ほとんど火花が出ない。

 なんで、こうも上手くいかないのかな。

 見かねたタイセイがマッチとライターと言う物を出してくれた。


 マッチは不思議だ。

 赤い所を箱ですると火が点く。

 どういう仕組みなのかな。


 マッチを配って歩く事になった。


「ごめんください。おすそ分けにきました」

「ご苦労さん。ジェシーによろしく言っておいてね」

「おすそ分けはタイセイからだよ」

「ああ、あの巡礼者の」


「マッチの使い方を教えるね。赤い方を箱のざらざらした部分でこするの。そうすると火が点く」

「やってみてもいいかい」

「うん」


 隣のおばさんがマッチを使う。


「こりゃ、便利だね」


 にこっと笑って、家族を呼んでもう一度やる。

 隣の家族全員が笑顔になった。


 タイセイの周りは笑顔が絶えない。

 だから好き。

 でもタイセイは私なんか気にしてない気がする。

 決めた。

 タイセイの便利な道具をみんなに紹介して回るんだ。

 きっとタイセイも喜んでくれるはず。


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