3045/05/01 反応と行動
対立を続ける彼らの中で、それに最初に気付いたのは目立たない役割を押し付けられた人たちであった。
「聞こえる。また、聞こえた」 「おい、止めろ、聞こえないのか! また、鳴き始めた!」 「ああ、大変だ!」 「みんな止めろ。まただ、また鳴いてるぞ!」 「ああ、今度はなんだ。何が起きるんだ」
彼らがそれまでよりも強く必死になって、周囲を黙らせようと大きな声を上げる。その言葉に、それまで激しくぶつかり合った感情派と理論派の人々が続々と音の存在に気付き始める。
「な、なんで……、何が起きてるんだ」 「こ、今度はいったい?」 「なんで今日はこんなに立て続けに、」 「町長たちはまだ戻らないのか?」 「お、落ち着け! と、とにかく、ここは祈りを、」
その反応を注意深く観察しながら、少し、想定外の思いを抱く。
(なんで、そんな反応をするんだ?)
当初思い描いていたのは、もう少し穏やかなものであった。
人々がここに集まった理由を考えると、普段は起きないことが起きたと想定するのが妥当であった。何が起きたのか、その時、その場にいない私が分かるはずはないが、一つヒントがある。
バスから降りる際、ここが警察署前という場所だと告げられた。そして、目覚めてからこれまでの自分の行動の中で何度か警察という組織を頼ろうとして動いた事を思いだし、ここに一つの仮説が立った。つまり、私、正確にはアガートラムからの警察への通報が何か引き金となって、町の大人をここに集める何かが起きたはずだと考えた。
そんな風に仮説を立て、それを検証という訳ではないが、現状の混乱をどうにか落ち着かせるために利用したのだが、結果として、それは効果のほどは凄まじく大きかった。
今にも殴り合いのけんかを始めようと激しくぶつかり合った人々はみな押し黙り、やがて沈黙した。小さなざわめきはある。しかし、既に互いにぶつかり合うほどの情熱は完全に冷め切っている。彼ら既に別の状態に移行していた。
そこまで眺め、いろいろと考えていると、ハッと気づいて声を上げた。
「通報を止めて、今すぐ!」
―はい。警察への通報を終了します。
私は何のために彼らを落ち着かせたかったのか、その目的を思い出した。




