3045/05/01 サイレン
―はい、了解しました。通報いたします。
「……頼む」
アガートラムはすぐに返事し、そのまま警察署に通報する。私はその反応に少しためらいを覚えたが、そのまま、アガートラムに任せた。結果として、それは上手くいった。もしかしたらという程度の発想であったが、まずはやってみることが一番大切なのだと痛感した。
(どうして、町の人は警察署の前だという広場に集まっていたのか?)
発端となる疑問、それを改めて考える。
(空飛ぶバスが見えたから集まってきた? どの段階でバスを見つけた? 日は落ち、夜の中、空を飛んでいるバスを見つけてすぐさま町中の人間をかき集めた? できなくないだろうが、多少、不自然だ。バスが降りてくるであろう場所に検討をつけて、そこに集まれるのだろうか?)
次々と浮かんだ疑問を整理し、まとめ、道筋をつける。
(仮に、バスを見つける前、別の事で人が集まっていた可能性はないだろうか?)
一塊になった疑問を一旦は横に置いて、大胆な仮説を組み立てる。
(警察への通報はできた。少なくとも、繋がらないや出来なかったとアガートラムは言わなかった。これは、通信設備は動いているという事である。通信設備というものは発信側と受信側、少なくとも両方が存在する必要がある。発信側はこちら、アガートラムの方ならば、受信側は警察の方である。警察という機能が残っているいないは無視して、ここには通信設備は残っている可能性がある。つまり、人が集まった理由は、)
初めそれは、空耳のように感じられた。おそらく、私が一番早くそれに気付けたのは、場所的なものかもしれない。もしくは、そうなると事前にわかっていたから、注意がそちらに向いていたのだろう。
ウー、ウー、ウー! ウー、ウー、ウー!
低く唸るような音。サイレンや災害時の警報に似たその音は地の底から這い出て、じわじわとにじむように広がっていく。想像していたよりもだいぶ不気味なものに集まった理由を察した。
「タ、タダサン? これ? これ何?」
すぐにそれは私以外の人も気づき始めた。初めて聞いたのであろう、にじみ出たそれに触れた子供は、皆不安そうは表情でこちらを向いてきた。
「大丈夫。これは何も問題ない。大丈夫」
自分に言い聞かせることも含めた言葉で、子供たちを安心させる。そんな言葉をかけている間も、音は休むことなく広がり続け、ハクロを含め三つの極に分かれてぶつかり合う人々のもとにもきちんと届きはじめた。




