3045/05/01 タイミング
「徴税? 税務署の人? 公務員?」
「ぜーむしょ? こーむいん? いや、徴税官だよ。ハクロおじさん」
「そう。ハクロさん。町の徴税官」
「いや、違うよ。町だけでなくて、ハクロ様はここら辺全ての担当しているだ」
返事を聞いて、呟いた言葉は三人から微妙な訂正を受ける。徴税官とはなんだろうか? いや、仕事の内容よりハクロという名前の方が大切な情報だろうか? そもそも、解放とは?
セン達にこそこそと話を聞く間、ハクロという男はこちらに向かってずーっと頭を下げ続けた。すると突然、彼の後ろで動きがあった。また、一人、前に出てきて大声を出す、今度は女性の声であった。
「お、お願いします。必ずお支払いいたしますから、子供たちは許してください。」
それが呼び水となった。
次の瞬間、厚い人の輪をすり抜けて何人もの人が飛び出してきた。
「頼みます。必ず、必ず、支払いますから、子供たちだけは、」
「まだ、うちの子はマナを得ていないんです。許してください。お願いします。」
「不足しましたマナは必ずお返しします。ですから、どうか、子供たちには、」
全員が全員その様な内容だったわけではない。中には単純に返せという短い言葉だけだったものもあったが、そのどれもがこちらに対して真剣に訴えるものであった。そして、声を出した人は全て、言い切ると同時に頭を石畳にぶつけるような勢いで頭を下げた。
あの人たちはみんなおそらくこの子たちの親や親せきなのだろうか?
そんな疑問が頭を巡った。セン達以外の子供たちは明らかなその異様な雰囲気の中、頭を下げる大人たちとこちらを交互に見てくる。その表情はなんといえばいいのだろうか、明らかな困惑という表情であった。
(そんな目でこっち見るなよ。何もしなかったろ?)
そう言葉を出したかったが、下手なことはとても言えない。子供たちも困惑しているだろうが、一番困っているのずっと私のままであった。
そもそも、分からないのは、なぜ私に “子供たちを解放しろ” というのか? 支払ったマナを返してくれるという言葉は魅力的だが、正直、この雰囲気で受け取るのはとても罪悪感がある。
このままでは一方的な悪役を演じなくてはならない。私は子供たちに何かするつもりはない。だから、大きく息を吸い、勇気を出して声を張り上げようとした。
「あ、あのー」
「全員、落ち着け! 騒ぐな! 儂が話をつける。……ゴホン、大変、申し訳なかった。」
どうやら、私はどうしても人とタイミング重なるらしい。ハクロさんの迫力ある一喝の声に私ものみ込まれてしまった。




