3045/05/01 明細と残高
(え? なにこれ?)
空中に映し出された明細書の一番最後、並んだ数字をもう一度、左端から右に向かって数える。一、二、三、……、十四個の数字が並んでいる。数え間違いではない。
「一、十、百、千、万、」
「タ、タダサン? おい、どうした? 大丈夫?」
「タダサン? 大丈夫? ねえ? こっち向いて?」
「あの、そこになんて書かれているんですか? タダサン!」
「百億、一千億、兆、十兆、……本当だ。本当にある」
数字に強くない私は、今度は口から声を出して並んだ数字の桁を数え始めた。その様子にセン達三人からもいよいよ気味悪がられてしまったが、それを完全に無視して私は最後まで並んだ数字の桁を数え切った。
アガートラムが言ったことが嘘ではないという事実を初めて理解し、そして、同時に全く分からなくなった。
とりあえず、90万という数字が全く問題ないくらい自分に財産があるという事は理解できたが、それがなぜあるのか理解できない。分からないまま、ただ、その空中に映し出された数字を眺めるだけの私の耳にようやくセン達三人の言葉が入ってきた。
「おーい、タダサン?」
「聞こえてる? ねえ?」
「待って、タダサンの様子がおかしい。あまり、近づかないで」
「あ、ああ、いや、大丈夫。大丈夫。落ち着いたから」
何も落ち着いていないがセン達の方に顔を向け、改めて、こちらに向けられた大量の目を相手する現実を思い出した。
「」
今度こそ、何も考えられなくなった。ホワイトアウト、ノックダウン、連続したアップダウンに頭は完全に切り替えられず、本当に目の前が真白になった。
ただ茫然とした結果、私は無言で集団と向かい合っていた。そのことが、相手側にどういったメッセージとして伝わったのか、その声がかけられるまで気づかなかった。
「そ、そこの方」
「おじさん?」
飛んでいた私の意識を揺り起こしたのは、知らない人の声であった。その声の主は一人、取り囲むように広がった人の輪のから前に出て、まっすぐに大きな声でこちらに向かって叫んだ。
「その子、子供たちを解放してくれないか?」
「解放?」
その声にほとんどオウム返しのような返事を返した。しかし、吐き出した言葉は向こうに届くほど大きなものではない。だから、向こうからは、こちらの反応を無視して提案が続けられた。
「分かっている。必ず、先ほど支払ったマナ分はお返しする。必ず、絶対に、お返しするから、虫のいい話だが、先に子供たちを返してくれ!」
代表して出てきた男はそう言い切ると大きく頭を下げた。彼の後ろに広がる人の輪はまた大きくざわついた。
「あの人って、誰か知り合い?」
「おじさんだよ」
「知ってる」
「センのおじさんで徴税の役職についている人です」
私の質問に三人はきちんと答えてくれた。




