3045/05/01 14個の数字
(何やってんだ、俺!)
ざわざわと波立つように騒ぐ声、先に降りた子供たちの輪の更に向こう、取り囲むように集まった人々は何かを話ながらこちらを見ている。その数え切れない人の眼、その眼が私をじろじろと観察している。
忘れてはならなかった。忘れたつもりではなかったが、明らかな自分の犯した失敗に気づき、胸中はとても穏やかではない。
子供たちがバスから無事に下りてきたという事を喜ぶ雰囲気はそこになく、最後に出てきた知らない男をどう判断するべきかという厳しい審査の眼がそこら中から向けられていた。頭は自然とそのままゆっくりと自分の足元の方に動く、その向けられた圧力、自分は何もできずに屈していた。
先ほどまで胸の中で吹きすさんだ暴風雨のような感情はその傷跡だけ残して完全に消失し、今は自分がやらかしたことへの反省と後悔、そして、この場をなんと取り繕うかそれだけでいっぱいになる。
―多田様、こちらが明細になります。ご確認下さい。合わせまして、こちらの明細には決済後の多田様の口座残高も一番下に記載してありますが、こちらは今後、表示の際、記載されないよう設定することが出来ます。どうされますか?
突然アガートラムからの声が響いた。声がした方向に頭を動かすとアガートラムが以前、契約書を映した時のように四隅に広がり空中に細々と多くの言葉と数字が並んだ明細が映し出された。
その瞬間、子供たちはおろか、その奥に広がる人の輪はまた大きな反応を見せた。
「タ、タダサン、それは何?」
「なに、なんて書かれてるの?」
「あ、あの、やっぱり、何か問題があったんですか?」
私に近い位置にいるセン達はそれを言葉にする。セン達から少し離れた位置にいる子供たちは少し後ろに距離を取り、それよりも奥にいた大人たちはざわざわと大きく騒ぎ始める。
「ああ、いや、これは、」
何か思いがけないその反応になんとするべきか迷う。
映し出されたそれをとても確かめる余裕はなかったが、一番下、残高の部分、いくつもの数字が並んだそこを見た時、前に言われたあることを思い出した。
“―多田様の銀行口座には現在約10兆マーナ分のお金が積み立てられております。”
一番下の数字を左から順番に数える。数字は14個分きちんと並んでいた。




