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3045  作者: みむめも
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3045/05/01 バスへの乗車

「おお! 開いた」 「開いたぞ!」 「ほんとに乗れるんだ」 「うわぁ! なんだ、これ!」


 車体のちょうど中央あたりにあるドアが開いた瞬間、子供たちはそれぞれ一斉に声を上げた。


―多田様、バスの準備ができましたので移動を開始します。


 子供たちが声を上げたのほとんど同じタイミングで、私の隣に浮かぶアガートラムもそう声を掛けてきた。次の瞬間、止まっていた車いすがバスに向かって動き始め、私は慌ててアガートラムに向けて声を出した。 


「いや、ちょ、ちょっと待って、さっきの話を詳しく教えてくれ!」


 私がそう言うと動き始めた車いすは急に止まった。先ほどからずっと空を飛ぶバス向いていた子供たちの視線がこちらに集まった気がしたが、それに構うことなくアガートラムに向けて、少し強い言い方で先ほどの話の続きを要求した。それに対してのアガートラムの反応は少し予想していた物と違う反応であった。


―多田様。公共の交通機関を利用する際、乗り降りに関しては安全に速やかに行いませんと、他のお客様のご迷惑になります。お急ぎの内容でなければ、後程、お答えいたしますが?


 まさかの社会規範、乗車マナーで返されるとは想定していなかったので、アガートラムからのその言葉にぐうの音も出せずに納得させられた。


「うっ……、分かった。分かったから、後で必ず教えてくれ」

―はい。分かりました。それでは、バスに乗車しますので、そのままお待ちください。


 言質だけは取って、後は全て任せた。再び車いすは動き出し、バスの中央部分、開かれたドアの前で一旦停止する。突き出たスロープに前輪を乗せると車いすはそのまま一気に進み、バスに乗り込んだ。


 乗り込んだ先、車内にはいくつもの座席がずらっと並び、ラッシュの際に使うのかつり革や手すりも見える。車いすはそのまま車内を進み、座席がないぽっかりと空いたスペースに停まった。


 私はぐるっと一通り車内を見渡して、一言だけ吐き出した。


「……誰も乗ってないじゃん」


 車内には誰も乗っている人はいなかった。

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