3045/05/01 口座の中身
ピー! ピー! ピー! バス到着となります。光線の枠内には立ち居らないでください。ピー! ピー! ピー!バス到着となります。光線の枠内には立ち居らないでください。
空飛ぶバスの警告音と音声の案内はいよいよ大きくなった。しかし、あれだけの大きさのモノが地上に向かってきているのに、大きな駆動音や風などの強い圧は感じることはなかった。なんと例えればいいのか、本当にふんわりとそれはこちらに向かって降りてきている。周りの子供はその様子を本当に不思議そうに眺め、それから目を離せないでいる。
その様子を私も子供たち同様に本来はもっとワクワクした気分で眺められただろう。しかし、それが迫れば迫るほどに、私の心は散り散りになりそうな程、不安でいっぱいとなる。小市民たる私には死活問題になる金銭に関わる問題を何とか言葉にまとめて、アガートラムに尋ねた。
「……500マ―ナって、私の口座にお金はあるの? 足りるの?」
―はい。問題はありません。
アガートラムからは短く簡単に返事が返される。その返答にとりあえずは安心できたが、お金という現実的すぎる問題が出てきて、様々なことが思い浮かぶ。バスはいい、しかし、これから先の生活、また、これまでの入院していた分の料金が請求されたら、果たしていくらになるのか少し考えるだけでも気持ちが真っ暗になる。
千年もあの会社が持つはずもないし、無職になった私は果たして何をして金を稼げばいいのだろうか?
「あ、あのさ、問題ないって、今いくら入っているの、その口座? あと、病院のお金ってどのくらいかかるのかな?」
アガートラムに再度尋ねる。特に後半は、本当に蚊が飛ぶよりも小さな声で早口にしゃべりきった。
―多田様の銀行口座には現在約10兆マーナ分のお金が積み立てられております。また、入院に関わる費用に関しては、特定先天性遺伝子研究財団からの寄付によって全て支払いは完了しております。
「」
10兆? なにそのバカそうな数字? いや、それより、特定先天性遺伝子研究財団? 寄付? なにそれ?
アガートラムからの説明に出てきた単語一つ一つに疑問符がつき、頭の中をそれがぐるぐると駆け巡る。
「そ、それって、どういう」
―ドア開きまーす。乗車口付近のお客様は離れてお待ちください。ドア開きまーす。
気づけば目の前に空を飛んでいたバスが降り立ち、聞きなれた感じの言い方でそのドアがプシュッと音を立てて開かれた。




