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3045  作者: みむめも
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3045/05/01 無人バスの乗車注意

 右を見ても、左を見ても、前にも、後ろにも、誰も人が乗っていなかった。無人の車内を見回して、これを利用していいのかな? と改めて考えようとしたとき、ガヤガヤとした声が耳に入ってきた。 


「おお、広い!」 「凄い!」 「進んで! 止まらないで!」 「危ない、押さないで!」 「タダサン! これ、この輪は何?」 「タダサン! これ何! これ押してもいい!」


 私が乗り込んだのを見て、安全だと判断したのか、セン達三人を筆頭に他の子供たちも次々に乗り込んできた。


「ああ、広いね。まだ乗っていない子もいるから、奥に詰めて座って」

「それは、吊り輪といって立っているときに掴むものだね」

「そのボタンは降りるとき押すものだから、今は触らないでね」


 彼らの目にはこのバスがよほど不思議にあふれているのか、全員興味津々といった表情で車内を見回し、口々にそれぞれが思った事、疑問をつぶやく。あれは何? これは何? そういった声に私は考えることを中断するしかなかった。


―バスの車内は公共の空間です。他の乗客様の迷惑になりますから、おしゃべりは控えていただき、空いている座席にお座りください。繰り返します。バスの車内は公共の空間です。他の乗客様の迷惑になりますから、おしゃべりは控えていただき、空いている座席にお座りください。


 そうしていると急に天井から声が響いた。その声は、先ほど外で聞いた声と似ている声でアガートラムからのモノではないと分かる。私には聞き覚えのあるその車内アナウンスは一般的なバス、電車のマナーを告知する内容であった。


 やっぱり、バスなんだよな。その放送を聞いて、これがバスなんだと改めて認識した。


 子供たちも慣れたものでそのいきなりの声に驚いたり、慌てることはない。それでも、初めてのモノに触れるのが楽しいのか、怖いのか、なかなか椅子に座ろうとしないので、私は全員に向けて声を掛けた。


「ほら、みんな。座らないと発車しないらしいから、座ってちょうだい」

「はい」 「はーい」 「そっち座りたい」 「いいよ」 「届かない……」 「降りるとき……、降りるときに押す……」


 私の言葉に、全員きちんと反応してくれた。一部は私の声を聞いていたのか怪しい反応をしていたが、それでも周りにいた子供がそういった子を席に座らせるように動いてくれたおかげですんなりと全員が席に座ることが出来た。


―バス動きます。座席より、立たずにそのままお待ちください。


 全員が椅子に着くと、再びあの声が車内に響き、次の瞬間、シューっとガスが漏れるような低い音が聞こえ、ガクンと大きく揺れと同時に外の景色がわずかづつ変化し始めた。

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