????/??/?? 外の空気
車イスはゆっくりと進み、ある位置まで来るとセンサーがそれを検知したのか、自動で目の前の透明なドアが真ん中から左右に音もなく開いた。そして、車イスは止まることなく、そのまま外へと出た。
その瞬間、ぶるっと体が震えた。外に出たという刺激は思いのほか大きく体の中の何かを揺さぶった。最初に気づいたのは、予想外に湿っぽく肌寒い風、濃厚な土と植物、それと何かが交じり合った匂い、生い茂る葉の間から差し込む太陽の光、それは肌で、鼻で、瞳で、全身で感じた久しぶりの外の世界であった。
その後、本格的に体が震えだした。
なにせ着ているのは薄いうすーい病衣である。完全に屋内での活動、いや、冷暖房が管理された病室で長期入院する人が着る服なのだから、活動することはおろか、寒さ厚さを凌ぐという衣服本来の役割を十二分に果たせる服ではない。この建物、おそらくは病院、セン達の言葉を借りれば遺跡がいかに快適な空間であったのか、外に出るという事で初めて知ることが出来た。
―外気温、12.3度。上に何か着こむことをお勧めします。
上空を飛ぶアガートラムから遅すぎる情報と警告がもたらされ、自分の感覚にズレがないということを改めて知った。
私は聞きなれたその音声、セン達三人も何度か聞いたその声の主になにか羽織るものはないか聞こうと言葉をかけようとすると、自動ドアの向こう正面で三人を歓迎していた集団が初めて聞いたアガートラムの声に気づき、その正体を知るためにこちらを向いた。そうすると、同時にその下にいる私の存在に彼らは気づいた。
「だれ?」「ん?」「あれ、何?」「なに?」「あれ、誰?」
初めに気付いた人は数人であった。気づいた彼らが口を開き、それ聞いた人がこちらを見て、また同じ意味合いの言葉を口にする。それほど時間はかからずに、三人を歓迎していた全員がこちらを向いていた。
彼らは全員、背は低く、セン達と同じように頭には耳をはやし、顔にも毛が生えていた。流石に少しは長く顔を合わせたセンたち三人の顔や姿かたちは判別ができたが、それとほとんど変わらない特徴をそなえた顔、十数人分の情報は多すぎた。
もう少し近くに寄ってみれば、それぞれの違いというものを理解できたのかもしれないが、三人を歓迎していた集団と私との間には二、三歩分の距離があった。そしてそれは、実際の距離よりも遠く感じる距離であった。
「こ、こんにちは? は、はじめまして?」
集まる目、視線の力に上ずった声であいさつを返した。




