????/??/?? 感情
その突然、背中からかけられた声に内心は驚きつつも、短く了解と返した。
起きてからここまで一番多く聞いたはずのその声に多少は慣れを感じていたが、アールとロック、ここにはいないがセンという生身の人と会話をすると、その平坦で特徴がない声、というよりも音声に改めて違和感を覚えた。正面にいる二人はその声にどうしても慣れないのか、アガートラムからの音声に体をビクッと過剰に反応させていた。
こちらの了解という返事を聞いて、何かアガートラムが反応するより先に今度は別の方向から声が聞こえた。
「おーい! みんな準備出来たぞー!」
外にいる仲間たちとの交渉という大役を終えたセンの嬉しそうな声と彼の聞きなれた元気のよい足音が軽やかに近づいてくる。それを聞いて、正面にいる二人は先ほどと似ているようで全く違う方向に反応した。
「セン!」
「タダサン、行きましょう!」
アールとロックの二人はセンからの声に私よりずっと素早く答え、私を促しす。そして、私が何かいうより先に彼らはセンを迎えに向かった。
「タダサン! 俺、ちゃんと伝えたよ。みんな武器は手放して、火は消したよ」
「ありがとう、セン」
二人に迎えられたセンはその歓迎もそこそこにこちらに改めて近づいて報告にした。その内容自体はアガートラムが伝えたものと一緒であるが、その様子に自然とこちらも温かい気持ちを抱き、お礼の言葉が口から出てきた。
―正面ゲートより外に出られますか?
また突然、すぐ隣から声がする。音もなく近づいたアガートラムがそこに浮かんでいた。おそらくはその位置が、全体を観察するのに一番いい位置なのだろうが、何となくその輪から離れた場所にポツンと存在する様子はこちらを寂しそうに眺めているように見えた。
「ああ、そうだね。お願いするよ」
―……、それでは向かいます。
「じゃあ、先に行くね! タダサン」
返事を返すと、少しの間を開けてアガートラムは答える。そして、すぐに小さな唸り声をあげて車いすがゆっくりと動き出す。その様子を見てすぐにセンは体を反転させ、正面ゲートの方向に走り出し、他の二人もセンに遅れないようにそれに続いた。
その後姿を眺めて、先ほどのアガートラムの返事の間を考えた。それは言葉の意味を理解するための間であったのかもしれないが、どうしても先ほどから寂しそうにしているようしか思えない。
三人がこちらからだいぶ先行した位置にいることを見て、彼らに聞こえないように小さな声でアガートラムに言葉を伝えた。
「ありがとう。アガートラム」




