????/??/?? 無人
正面ロビーにはすぐに到着した。それまでの病室や通路に比べて、圧倒的にひらけたそこはごく普通の病院のロビーに思えた。
いくつも並ぶ少し背の低い座席とそれを取り囲むようなカウンター、調度品のたぐいは見当たらず、時計などもなかったが、大きなモニター置かれたそこはまさしく病院のロビーであった。しかし一点、どうしようもないほど違和感を覚える点があった。
座席にも、カウンターにも人が全くいない。アガートラムから正面ロビーという言葉を聞いたとき、もしかしたらと多少は期待したことは叶わなかった。がっかりという気持ちはさほど湧かなかった。そういう意味では、予測していた通りのロビーを車いすはそのまま進む。
いくつも並んだ座席の一つに近づいて、車いすはそこで停止した。三人はずっと後ろをついていたが、車いすが止まるとそれぞれ行動を開始した。
「よし、じゃあ、俺、伝えてくるね!」
「え? あ、セン、」
車いすが止まるのを確認すると、早々にセンはそう言ってきた。彼はこちらが返事をするより早く、ガラス張りの正面ゲートに向かって走っていく。おーい! と大きな声を上げて、外にいる人に向かって説明を始める。
その素早い動きに振り回されていると、気づけばアールとロックは一番手近な座席に腰掛け、私に初めて正面から向き合い、話しかけてきた。
「で? タダサンは何を聞きたいの?」
「僕たちが分かることはきちんと話します」
二人の声が重なる。センの方に向けていた意識を二人に向けるために、ゴホンと軽く咳払いをして話を始めることにした。
「センからも聞いたけど、ここは成人の遺跡でいいのかな?」
「はい」
「白の遺跡や森の遺跡とも呼ばれてます。」
自分の中で集めた情報を再確認するように二人に質問を始めた。ロックとアールはそれぞれ素直に答えを返してくれ、更に質問を続ける。
「遺跡っていうのは分かったけど、成人というのは何か儀式をするための場所なのかな?」
「マナを与える場所だって、聞いたけど」
「マナを調べる場所です。儀式の内容は秘密なのでわかりませんが、」
センとの会話で遮られていた部分についても、いまは二人に深く尋ねることができた。出会った当初と比べると格段の進歩であり、話はさらに深い部分、新たな情報を含んだものになっていく。その新しい言葉に興味がわいた。
「マナ? その、マナってなに?」
「?」
「なにとは、マナというのは、えっと、月の力だっけ? 」
二人の反応はいきなり歯切れの悪い、おかしなものとなった。




