????/??/?? 中身
アールとロックがそうやって戻すのを横目で見ていると、いつの間にかセンとの会話は終了し、気づけば誰も喋らない無言の真空が生み出されていた。
全てが上手に重なって、いや、全てが均等に足りなかった結果、生まれた気まずい沈黙の中で、次に切り出す会話の始まりを懸命にひねり出す。手にしたペットボトルを口もとに運び、水でのどを潤し、考え抜いた末の言葉を放った。
「センのはどんな味だったんだい?」
できる限り、普通を心掛け、イントネーションも、アクセントも普通を意識して、そう切り出した。
「俺の? 俺のはみそ汁と鮭のおにぎりの味がしたよ。あ、ロック、アール、お前らのはどんな味がしたんだ?」
「私のはツナマヨ」
「お、……僕のは昆布の味がした」
センがその質問を深く考えることなく受け取り、そして、それを仲間に絶妙に自然な形で拡散してくれたことには感謝したが、それ以上に、彼らの返した言葉の中で気になるモノがあった。
「お、おにぎり?」
「うん。あれ? タダサンは知らない? ほら、ご飯の中にいろんな具を入れて握って、塩を振ったり、海苔を巻いて食べるやつ」
「あ、うん、いや、おにぎりは知っているんだけど、」
聞き間違いではなかった。
もちろん先ほどから、普通に日本語で会話しているのだから、おにぎり、みそ汁など日本の伝統的な食事のメニューが出てくるのは不思議ではないが、頭に耳をはやした人間が口にすると違和感がものすごい。
その衝撃に頭の中が揺らされていると、センでも、アガートラムでもない声が掛けられた。
「あ、あの、タダサン、さっき酸っぱいのを食べたって言たわよね?」
声の主はアールであった。
急に彼女が会話の中に入ってきた。これまでの少し距離を取った丁寧なものの言い方ではなく、もう少し近い距離での話し方、年齢に見合った彼女本来、等身大での口調で話しかけてきた。
「あー、うん、酸っぱいものが入っていて」
「それって、梅干しじゃないのかな?」
「あー、なるほど。鮭にツナマヨ、昆布と来ると梅干しはあるかもね。確かにおにぎりの定番だ」
「でしょ? タダサン、安心して、あなたがさっき食べたのは毒ではないわ」
「タダサン、梅干し食えないのか? あははは! 意外とうまいぜ、あれ」
(梅干しもあるの!?)
その言葉がのどまで出かかった。一体ここはどこなんだ? そう彼らに問い詰めたい衝動にかられたが、ワイワイと楽しそうに会話する三人の姿を見てその気持ちは削がれてしまった。




