????/??/?? 報告
―本当に問題ありませんでしょうか? 何かありましたら報告をお願いいたします。
背中の方にいたアガートラムが目の前に動いてきて、先ほど咳き込んだ際に落としたパックを拾い上げつつ、いつもの声でそう言われた。
「ああ、うん。大丈夫」
一時湧いた怒りも既に綺麗に消えてしまっていたので、アガートラムの言葉に重ねて何でもないと返答を返した。
―何も問題なかったという事でよろしいですか? 誤嚥に関して放置することは重大な命の危機を招くものとなります。また、同様の事故が繰り返されないよう、販売元、製造元に報告し、使用方法の改善、形状の改良等などを求めることが出来ます。報告は全て個人を特定されない形で記録され、この報告をもって多田様に何らかの不都合、もしくは不利益が生じることはありません。また、……
目の前のアガートラムからは長々とした説明がされる。その様子を三人の子供たちが不安そうに見ているをちらりと確認した。
(とりあえず、報告してほしいという事か? )
「えっーと、味にびっくりして」
―ます。……はい。確認しました。誤嚥については製造元、販売元に報告をします。ありがとうございました。どうぞこちらをお飲みください。
何とか言葉を伝えるとアガートラムはすぐに了解の反応を示してくれた。そして、拾い上げたパックを先ほどの箱に入れ箱は小さくなって、現れた時と同じように床をザッザッザッザッと音を立てて戻っていく。その後、先ほど消えた箱よりも一回り小さな箱が登場し、足元までやって来た。
箱を開けると中には、これもまた見覚えあるモノ、一本のペットボトルがあった。先ほどのパック同様、ラベルには見覚えがないが、見たところ中身は透明な水のようであった。
(これを飲めという事か? )
それを受け取って、ふたを開けて飲む。中身は良く冷えた水、本当に冷たいただの水であった。
「タダサン、大丈夫か?」
そんな冷たい水を飲んでいると、センは本当に心配した様子でそう話しかけてきた。
「ああ、大丈夫。ちょっと、酸っぱくてビックリしてしまった」
「タダサンのは酸っぱいかったのか、俺のは美味しかったぞ」
「そうかい、それはよかった」
(やっぱり、中身は違うものだったのか……、)
センと会話をしながら、自分が大外れのモノを引いたことに少し悲しくなる。センと普通に会話を始めたので、アールとロックの二人はどこかほっとした表情を浮かべ、手にしていたパックを少し名残惜しそうに箱に戻した。




