????/??/?? 酸味
二人とも無言であったが、その味を気に入ってくれたようであった。
先に口をつけたセンがいちいちその喜びを言葉にして報告するタイプなら、ロックとアールはそれと全く違うタイプなのであろう。表面的には何も変わらないし、変化は見えない。しかし、よく見ていると言葉以上に雄弁な反応を見せてくれた部分があった。
ピクピクと動く感情豊かな二人の耳が、ひと飲みごとに面白いほど上下左右に忙しなく動いていた。そこだけはセンと変わらない、いや、セン以上に素直な気持ちが表に現れた部分であった。
そんなそれぞれの反応に心を和ませた。まるで動物動画や遠縁の子供を見ているような、愛情でも親愛でもない、自分と関りのないところにある可愛らしさに思わず目を細め、優しい気持ちを抱いた。
しかし、コチラがどのような気持ちであっても、じろじろと見られながらの食事は気分がいいものではない。三人から目を外し、ふと先ほどセンが口にした味がまた変わったという言葉を思い出した。
膝の上に置いていた中途半端に口をつけたパックをもう一度くわえる。口に広がる味は先ほどと変わらずかすかな塩気と噛み締めるほどに感じる真っ白な甘み、白米のおにぎりそのものであった。
(センのだけが特別? ん!?)
二段階目の変化が味わえず、そのように考えたとき、ものすごい違和感を覚えた。強い塩気、刺すような酸味、明らかなそれまでの味わいと違うそれを体は吐き出そうと反応した。
「げっほ! ごっほ! っほ!」
ガタッと大きな音がする。
「タダサン、おい! 大丈夫か!」
「ど、毒?」
「だ、大丈夫?」
三人がそれぞれ声をかけ、動く音がする。
咳は止まらず、そちらに気に向けることはできなかったが、ふと誰かが背中に触れる。そして、優しく、上下にいたわるように撫でられる。その動きでようやく体が落ち着き、呼吸が楽になる。
「あー、ありがとう、」
―何か問題がありましたか?
背中越しにアガートラムの声が聞こえた。
(問題あったよ! なんだこれ!)
パックの中身、酸味についてのクレーム、そんな言葉がのどまで出かかって、三人の目がこちらに向いていることを思い出す。
ここで騒ぎ立てることは正解なのだろうか? 少しだけ冷静になって、それを考える。
「だ、大丈夫、変なところに詰まっただけ」
結局、そう言うことだけしかできなかった。




