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3045  作者: みむめも
38/204

????/??/?? 中庭

 車いすが進んだ先は、中庭を見下ろす一面がガラス張りのちょうど空港のラウンジのような場所であった。


 中庭は病室から見た外の景色と違い、人の手が入り、丹念に手入れされた整った美しさがあった。

 少し傾斜がつけられた小高い丘には柔らかそうな芝、場所によっては、真っ白な花や黄色い花が咲き乱れる。そして、その丘の一番上には一本の木が青々とした葉を茂らせ、中庭を走る風がその葉を揺らしている。


 おそらく、ここは長い病院生活をおくる人のために設けられた中庭だと思うが、初夏を思わせる柔らかな日差しの下、そよぐ穏やかな風の中でとても心地よい景色がそこにあった。 


 車いすはその景色がよく見える場所に向けて進み、三人掛けの椅子の横で止まった。後ろに続く三人はその景色に一旦足を止め、少しして、ハッと気が付いたように私の後を追いかけてきて、車いすが止まった隣の椅子におそるおそる腰掛けた。


―少しお待ちください。


 三人が腰かけると、それとほぼ同時にアガートラムからそう言われた。


 その言葉に何か言おうとする前に、ザッザッザッザッとアガートラムとは違う音が複数コチラに近づくのに気付いた。私がそちらに目を向けると、一緒に隣に座る三人もその音の正体を知るためにそちらを向いた。


 音の正体は動く箱であった。 


 箱はこちらが見ているという事を全く気にせずに近づいて来た。数は四個、その大きさは三十センチ四方といったところだろうが、それを見て三人、六つの目がこちらを一斉に向いたのが分かる。


 騙したな! その眼はそう言っている。


 しかし、何かを三人が何かを言うより早く、箱は各自の目の前に来て止まり、そして、いきなりその箱が腰のあたりまで浮かび上がった。その急なの動きに三人からは声に出ない悲鳴が上がり、私はそれを無視して浮かぶアガートラムを睨みつける。


―軽食となります。箱を開けてください。


 これはなんだと訊ねるより先に、アガートラムからはそう指示が出された。その箱についての説明は一切なく、軽食だと言い切られる。隣に座る三人の目が先ほどまでと比較にならないほど曇ったものとなって、こちらを見つめている。


 その眼に気づいていながら、私は無言で箱を開けた。

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