????/??/?? 緊張
今度の道中は胸が苦しくなるほど静かであった。
確かに自分は多少人見知りであるし、しゃべるのも決して得意とは言えないが、沈黙に強い人間ではない。無言で続く、三つの足音だけを聞きながら、どうしようか、それだけを考えて時間を潰していた。
―停車します。強い緊張状態を確認しました。何か問題がありましたか?
道を戻り始めて4,5分くらいたったあたりだろうか、アガートラムが自分の顔辺りまで高度を下げ、そのように問いかけて車いすがとまり、その動きに後ろに続く三人も続けて足を止めたのが分かった。
「え、あ、いや、なにも、……いやー、おなか空いたなーって」
いきなりそう問われて、考えもまとまらずに適当に返事を返した後、急いで三人に聞こえるような大きな声でバカっぽく言い換えた。
不審の元凶たるアガートラムと何か会話することを、後ろの三人は特に警戒していた。いや、それはもう警戒を通り越して、完全に一触即発の緊張状態の視線を浴びて、下手な芸人、大根役者のように声を上ずらせながら、なんとかその緊張緩和に努力した。
―確認を致します。食事等の制限指示は担当医師より頂いておりませんので、すぐにご用意できますが?
「え!? いや、」
苦し紛れの言い訳を受けて、アガートラムからは予想外の返しがされる。本当にそんな事を言われると思っていなかったので、ほぼ無意識的に三人の方に体を向けた。
「な、なにか食べたい?」
食事と聞いて、三人の反応もバラバラであった。
一番良い反応は、やはりセンが見せてくれた。彼はコチラからの言葉に顔を上げて首を上下に振って返してくれた。逆に反応が小さかったのはアールであった。彼女はその言葉が聞こえていないのか顔をコチラに向けようとはせず、ずっと俯けていたが唯一、頭の上にある耳だけはぴくぴくと小刻みに動かしている。最後にロックはその中間の反応を返してくれた。食事と聞いて、こちらをじっと見た後、センとアールの二人の動きを見て、代表して返事を返してくれた。
「はい。いただけるなら、頂きます」
「そ、そう。えーっと、何か簡単に食べられるものをみんなの分も合わせて、」
―はい、では用意します。少し先に進みます。
三人の反応が思いの外よかったので、アガートラムに食事を用意するように言うと、再び車いすは動き出した。その動きに、三人も遅れないようについてくる。まだ距離はあるが、少し近づいた気がした。




