白の遺跡 椅子の男
「おい、あれって」
「ああ」
「信じられない」
そっと顔を出し、曲がり角の先の光景を見ていた三人は小さく驚きの声を上げた。
そこでは男が一人椅子に座っていた。少し距離はあったが、聞こえた声は低く、重い大人の男の声であった。
男はこちらに背を向けるよう椅子に座っていたので、顔つきや体つき、その背丈の程などは分からなかった。ただ唯一、背もたれから見えた男の髪の色はここらではあまり見かけない黒髪で、それを短く刈り上げていた。
彼の周りにはいくつかのガーディアンが飛びまわる。下で見かけたそれと色は違うが、飛び交う際にあげる甲高い羽音やその空中を自在に動く様子は下で見かけたガーディアンたちと全く一緒のモノだと思えた。
がしかし、彼の周りを動き回るそれらは自分たち三人を探し出し、捕まえるという目的を与えられた下のガーディアンたちとは違い、また別の目的を与えらたものに思えた。それらは椅子に座る彼からある程度、距離を取るとそれ以上は離れようとはしなかった。その様子は、椅子に座る彼を守っているようにも、彼に従っているように見えた。
飛び交うそれらが動き回るの止めると、今度は男の座っている椅子がそのまま動き出した。椅子は誰の手を借りることなく、椅子自身が自分の意志も持っているようにゆっくりと動き始めた。三人が驚いたのはその椅子の動きを見ての事であった。
「ど、どうする?」
「おいか、いや、うーん、ちょっと」
「待って、静かに! 」
三人はその不思議な光景を見て、迷う。
今まで遺跡の中で見てきたものとは、明らかに違う様子のそれ。もしかしたら現状を突破する手札、切り札になるかもしれないし、その逆になるかもしれない。判断する情報は少なく、そして限りなく怪しいものである。
ここで三人は大いに迷った。そんな三人のことなど知らないそれはそのまま遺跡の奥に向かおうとする。それが余計に迷いを加速させる。
迷った末にセンは判断を他の二人に任せた。ロックはそれを受け二人分迷い始める。そんな二人を尻目にアールは迷いながら男の様子をずっと見続けていた。そして、男の周りが急に不審な動きを見せたことに気づいた。
椅子が急に停止し、ガーディアンから声が響く。
―挙動の不審を検知しました。動作に不備、もしくは、何か不都合はございましたか?
「いや、動作はいいのだけど……、」
男はガーディアンに普通に話をしている様子であった。その様子に三人は息をのみ、じっと視線を送る。
―動作に不備、不都合はありませんでしたか。では、何か別に問題がありましたか?
「これからどこに向かうのか、それを教えてほしい」
男はこちらが聞きたいことをまるで知っているかのように、自分たちの代わりに訊いてくれた。そしてガーディアンは男の質問にすぐに返答を返した。
―建物の外に出ます。既に通報しましたので展開する警察に保護を求めます。
「外に出るのね」
その言葉を聞いて三人は走り出した。




