白の遺跡 曲がり角
遺跡の中を出口を求めて逃げる三人は、とりあえず入ってきた大きな広間がある場所をめがけて走っていた。しかし、追いかけられた際に右に、左にと逃げ込んだために現在どこにいるのか正確にはわからない。
だから、三人はほとんど出たとこ勝負で遺跡の中を走り抜けていた。
遺跡の中はどこまでも広かった。窓のない廊下がいつまでも続き、時折、道が二手に分かれ、そのたびごとに直感で右、左と選択する。後ろからガーディアンたちの甲高い羽音が迫る恐怖を覚えながら三人は走り続けた。
「待って!」
三つか四つ目かの曲がり角、アールが一緒に逃げる二人の足に少し遅れ始めた頃、ロックは突然、鋭い声を出し、その場で動かなくなる。
「なんだ」
「しっ!」
足を止めてセンがロックに問いただそうとするより早く、ロックは口元に人差し指を立て、壁にぴたりと身を寄せた。その様子に、アールもセンもそれ以上、何かを聞くことはしなかった。ロックと同じように、壁に体をくっつけて息を殺す。
ゆっくりとロックが壁に身を貼り付けたままギリギリまで進み、手に持ったナイフを分かれ道の先に少しだけ突き出して、まるで鏡のようにそれを覗いた。そこに映っていたのは、赤い光を明滅させる先ほど浮かんでいたガーディアンと同じものであった。
自分たちを探しているのか、待ち伏せされたのか、それとも、道を塞いでいるのか、ガーディアンそこにいる理由、目的は不明であるが、コチラが見つかる前に気づくことができたのは幸運であった。
ロックはその姿を確認して、また静かに二人の元に戻る。来た道を戻り、別の道からどうやって逃げるかそれだけを考えていた。
あと少しの距離でロックは足を止めた。彼の後ろ、先ほど覗き込んだ曲がり角からコチラに近づくあの甲高い羽音が聞こえた。彼はゆっくりと頭をそちらに向けて、息を殺し、少しでも小さく、見つからないように体をかがめた。
ロックの不審な動き、そして、近づく羽音にアールもセンもすぐに気づいた。そして二人はそれぞれ別の反応を返した。
アールは周囲を見渡して、何とかやり過ごせるような場所はないかを探す。すぐに何もないとわかると、今度は来た道を振り返り、迫る者はないか目を皿のようにしてみる。彼女もロックと同じように逃げる事を考えていた。
しかし、ただ一人、センだけは別の事を考えていた。ブーンと甲高い羽音を耳にして、センはギュッと大鉈を握ってロックのもとに静かに駆け寄り、そのまま飛び越して、迫る羽音の方に近づく。
「(待て、何する気だ)」
ロックはセンの動きに小さく声を出した。
「(しっ。いいから、静かに)」
「(おい、まさか、止めろ。下手に刺激したら)」
センはロックからの質問に答えず、口元に指をあてて、音を立てるなと口にした。それにロックは猛烈に嫌な予感を感じた。すぐに、音量は抑えていたが早口に抗議する。ざわざわと繰り返される二人の会話に、いかにしてに逃げるかを考えていたアールもようやく気づいた。
その瞬間であった。
曲がり角の向こう、ガーディアンはいきなり姿を見せた。
アールはその場で動けなくなり、ロックはセンを止めようと体を動かし、センはそれより少しだけ早く、そして、力強く床を蹴り上げて、空飛ぶガーディアンガーディアンを目がけて大鉈を振り回した。
ガーディアンは下からまっすぐと迫るセンを理解しているのか、彼と同じ速度で天上の方向、上に向かって距離を取ろうとした。空を飛べるものと、飛べないもの、やがて下に落ちるしかないセンには届かない距離であったはずだが、彼はその距離の分を伸ばした腕と握っていた大鉈で埋めた。
大鉈の刃先、ちょうどかぎ状となった尖った部分がガーディアンの胴体を突き刺し、そのままガーディアンを吹き飛ばした。




