白い遺跡 昔話
「閉じ込められた?」
「はぁ? どうすんだよ! ロック、さっき後で話すって言ったよな! お前あれ知ってるのか? ガーディアンとか、なんかうるさい声の正体を!」
「……ガーディアンって、古い遺跡には必ず存在する魔物の名前なんだよ」
「魔物? なんだそれ? おとぎ話か?」
「いや、分かんない。昔話なんだ」
ロックの実家は害獣駆除を生業にしている。彼はアールやセンのように町で生まれたのではなく、その近隣の村で生まれた。
村では、大人たちが共同で作業をすることが多く、子供たちは手の空いた人が預かることが多い。そして、農作業や林業、狩猟など、肉体的な作業が多い村社会では若い男女の区別なく駆り出され、自然と子供の面倒を見るのは村の長老的な役割の老人が見ることが多い。そして、老人の多くは子供たちに語ることことができる昔話をたくさん知っていた。
空を飛ぶ乗り物、海の底の町、月に届く柱、言葉一つで全てを操る人、幼いロックが聞いたのはそういった夢広がる物語で、その話はどれもが彼の心をワクワクとさせた。そんな話の中にあった一つ、その話の枕はこう始まる。
古い遺跡には、ガーディアンという魔物がおる。
ガーディアンは遺跡の奥で、遺跡を守るためにずっとずーっと昔から眠っている。
「……悪い人間が遺跡で悪さをするとガーディアンは起き上がってきて、その人間を捕まえて、最後は、……」
「最後は?」
「なんだよ! それで、最後は、どうなるんだよ」
「……、食べられると聞いた気がする」
「た、たべる?」
「なんだ、それ、ふざけんな!」
「いや、ちょっと待てくれ、落ち着いて」
ロックが話した内容は二人を恐怖させるには充分であった。
もともと老人たちが話す昔話は教訓を含めたものが多く、因果応報、愚か者や悪さをした者は例外なくバッドエンドな展開に向かう。
今回であれば、禁じられていたこの遺跡に無理やり侵入した自分たちは間違いなく悪さをした者だ。このまま物語が進めば、必ず捕まって、食べられてしまう。二人は展開を想像して顔を青くした。
「二人とも、落ち着いて聞いてくれ! 話には続きがある」
話を聞いて、大きな声を上げる二人に向かって、ロックはまた話を始める。
「ガーディアン、魔物は遺跡の中にしかいない。おそらく、あいつらはここでしか生きられないんだ。ここから出れば、たぶん、あいつらは追ってこない」
「ど、どういう事?」
「ほ、本当か?」
ロックの話は劇的な特効薬であった。
「おかしいだろ? 遺跡の奥で眠っている魔物が全部、悪さをした人を食べるなら、この話は誰が伝えたんだ? 多分、逃げ切った人間がいるはずなんだ」
「そ、そうね」
「確かに、そうだ! ここから逃げ出せばいいんだな」
わずかな希望が見えて、二人の顔色が明るくなった。ロックは手にしたナイフをギュッと強く握りしめて、更に言葉を続ける。
「そうだろ。みんなでここを抜けだすんだ」




