白の遺跡 粉砕
「ロック!」
勢い良くぶつかったはずのロックが弾かれるでもなく、床にゆっくりと倒れ込む。その様子を見て、アールは直感的に大きな声を上げた。そして、倒れ込んだロックのもとに駆け寄った。
「ロック、ロック、起きて!」
倒れ込んだロックに向かって声を掛け、その体に前後に揺さぶる。ロックはそれに何の反応も返されない。彼は目をつぶったままであった。
「え、なんで?」
声は扉の向こうにいるセンは驚いた表情を浮かべて、小さく疑問を口にした。
アールが叫んだ声は彼の耳にも届いていた。その切迫した響きに、恥ずかしさから逃げる事ばかり考えていた彼の頭は思考を止めて、声が聞こえた方向に体をゆっくりと向けた。
「……おい、ロック? おい、大丈夫か、ロック!」
振り返ると、そこには倒れ込むロックと叫ぶアールの姿が見えた。彼の足は先ほどとは真逆の方向に、扉の向こう倒れ込む二人の方に駆けだした。
「ロック! おい! ロック! 大丈夫か! アール、なんで、ロック倒れてんだ! おい! 揺さぶるな! バカ!」
センはガラスの扉にドンと体をぶつけ、右手をその扉にガンガンとたたきつけながらアールに向かって大声を上げる。
「あんたが逃げるから、ぶつかったのよ!」
「何に!」
「このガラスによ!」
「なんでだよ!」
アールはロックを揺さぶるのを止めて、センに向かってどうにもならない感情を込めたヒステリックな色合いを含んだ大声を上げる。それを受けて、センも怒鳴り上げるように言葉を返す。
「さっきまで、なにもなかったのに、なんでガラスがあるんだ!」
「そんなの知らないわよ!」
「……!」
「……!」
センの言葉の意味を考えず、アールは言い返す。両者は互いに冷静さを欠き、倒れるロックの頭上で激しい口喧嘩を始めた。
「扉を抜ける方法なんて分かんねーよ! その鉈でぶっ壊しちまえよ! デカブツ!」
「言ったわね、もう逃げないでよ。臆病者!」
アールは大鉈を拾い上げて、ガラスの扉の前に仁王立ちして、その大鉈をガツンとフルスイングした。ガラスの扉に一瞬で白い細かなヒビが走る。その瞬間、大きな音が鳴り響く、アールはそれを無視して、再度、同じように全力でフルスイングするとガラスは完全に粉々となった。




