緋眼の少女
続きです。
よろしくお願いします。
「誰かの部屋に住まわせてもらえ」
確かにあいつはこう言った。ルームシェアと考えれば心優しい人は住まわせてくれるかもしれない。
しかし、問題がある。
ここには女の子、しかも自分と同年代の子しかいないのだ。つまり、住まわせてもらうということは同時に女の子との共同生活を送るということになる。
いや、別に何もしなければ何もないのだ。
たださっきから何人か女の子とすれ違っているのだが、皆こっちに視線を向けてくる。
それはそうだ。女の子しかいないはずの学院に男が1匹混じっているのだから。
いやそれはいいんだ。問題は…
ここの女の子って可愛い子ばかりだな!?
そう、みんな揃って可愛い子しかいないのだ。自分の好みやタイプというものを抜かしても可愛いと思う。スタイルがいいのは天使と契約をしているからか。
天使と契約をすると、天使に契約者である人間の身体の中にある力の源『マナ』を供給し、この世界に顕現させ戦う。
そしてマナを消費して戦っているとそれだけで相当な体力を消耗しているらしく、つまりマナを使うと激しい運動をしているのと同じ状態なのだ。だからみんなスタイルがいいと言うわけ。さて、どうしたものか。
もう1度ベアトリスにかけ合ってみるかと考えていると、後ろから数時間前に聞いた声がした。
「あなたここで何してるの?」
「あぁ、あんたか…ちょっと困ってて」
「アリス・エルレージュよ。あなたは?」
「カミヤ ハヤト」
アリスって言うんだな
この子も相当可愛い。てかさっきの子達よりもめちゃくちゃ可愛い。
「そう、ハヤトね。で?困ってることって?」
「え…いや、その…大丈夫だ!」
「何が大丈夫なのよ。なんでも言ってみなさいって!」
はっきり言ってしまっていいのだろうか。だが他にあてがあるわけでもない。なのではっきり言ってみることにした。
「実は俺、このアルレイシア学院に編入する事になったんだ」
「そうなの?おめでとう!でもなんでそれが困る事になるのよ?」
「あぁ…実は空き部屋がないらしくて。で、ベアト……学院長に誰かの部屋に住まわせてもらえと…」
「えっ…それってつまり…?」
「頼む!部屋に住まわせてほしい!」
「…!?な、ななななに言ってるのよ!?無理に決まってるじゃない!!」
まぁこうなりますよ、でももう後には引けない!もうひと押し!
「ここで知り合いはアリスしかいないんだよ!家事はやるし、料理だって結構得意なんだ!」
「…家事と料理?それ…ほんと?」
アリスの美しい緋色の目がキラキラと輝いている。
「あ、あぁ本当だよ。前まで1人で暮らしてたからだいたいの事はできるかな」
「そ、そうなの…いいわ!住まわせてあげる!」
「本当か!?ありがとう!だったら早速…」
「でも1つ条件があるわ」
「な、なんだよ条件って…」
「…家事と料理はやってほしいの…べ、べつに家事や料理ができないわけじゃないのよ!?ただ少し苦手なだけで…」
まぁなんとなく想像はついていた。たぶん、この子は家事全般がまったくできない。我ながらあのひと押しは完璧だったな。
「まかせろ!住まわせてもらうんだからそのくらいはしないとな」
「そ、そう!ならいいの!…じゃあこれからよろしくね、ハヤト!」
花の咲いたような笑顔で思わずドキッとしてしまう。
「あ、あぁ…これからよろしく」
部屋の中に入ってまず驚いた。1人部屋にしては広いと言うのもあるが、、、汚い、いや散らかっている。服や本さらには下着まで。やっと足場が確保できるくらいだ。
しかしキッチンは新品そのもの(恐らくは使っていない)。それなのにゴミがないのはどうしてだろう?あれだけ散らかっていればゴミくらいありそうなものだが…
するとアリスの右手の甲が紅く光り、、、
アリスの目と同じ緋色のキツネが現れた
「紹介するわ。私の契約天使、カーディナルよ!属性は火。大体のものは燃やせるわよ?」
自慢気にふんっと鼻を鳴らし、斜め上をむいている。いわゆるドヤ顔というやつだ。
「なるほど、その子がゴミを燃やしてくれてたのか。ありがとな」
そう言って頭を撫でてやると最初は少し警戒していたがしだいに落ち着き、キューンと愛らしい声も出し始めた。
「カーディナルは偉いでしょっ?」
「あぁ、契約主とは大違いだ」
「そ、そんなことないわよ!」
「さて、まずはこの部屋を片付けるか。手伝ってくれるかカーディナル?」
「コンッ!」
「あのねー、私の契約天使なんだからね!なんでハヤトが…」
「じゃあアリスが手伝ってくれる?」
「うっ…カーディナル手伝ってあげて…」
「コンッ!」
カーディナルの手伝いもあり片付けにはさほど時間はかからなかった。たまに出てくる下着に関しては大変だったが…
「よし、終わったな」
「すごいわね!ここまで綺麗になるなんて…ちょっと感動よ」
「だろ?これからは俺がいるから散らかることはないと思うから安心してくれ!…ただ下着だけは自分で…」
「わ、わかってるわよ!あーお腹空いちゃった。ハヤト料理できるんだったわよね?」
「あぁ、簡単に作るから待っててくれ」
そして使われた形跡のないキッチンへ向かう。食材はあるのかと疑うが、なぜかテーブルの上に置かれてあった。
「さっき掃除してる間に買いに行ってきたの!これで大丈夫かしら?」
野菜から肉、調味料まで揃っている。どこで買ってきたのかはわからないが、これだけあれば結構いいものが作れそうだ。
「これだけあれば充分だよ。すぐ作るから座って待っててくれ」
そして、簡単ながらもサラダにステーキ、スープを作りテーブルに並べる。
アリスはそれをじっと見つめ並べ終えるのと同時にパクリ
「ハヤト…なんでもできるのね」
「いや今日は時間もなかったから簡単にだけど明日からはもうちょっと凝ったものができると思うぞ」
「それは楽しみね!このスープとても美味しいわ!」
今まで自分のためにしか作ってこなかったがこうして人に喜んでもらうのはなにか新鮮で嬉しい。
すると食べ終わったアリスは立ち上がり
「先にシャワー浴びてくるわ。ハヤトも私のあとに入っていいわよ」
あー、同じ部屋という事はシャワーのときも一緒の部屋なのか…まぁ気にしなければなんともないだろう。
そんな事はなかった。気になった。人がシャワーを浴びてる音はどうしてこんなにも気になるのだろう!?
想像力もはたらきとんでもないことになっている。
「ハヤト入っていいわよ〜」
よし、こんな時はシャワーで洗い流そう。そうすれば忘れられるだろう。
そう思いバスルームへ向かうとそこには、、、タオル1枚のアリスがいた。しかもバッチリほとんどない膨らみがわかるほどだ。
アリスもいまの状況がわかっていない様子でお互い固まっていると、ようやく状況を、理解したアリスが顔を真っ赤にして一言
「この変態!!!」
見事な平手打ちをかましてベッドのある方へ走って行ってしまった。後ろ姿を見た時にきれいな桃が見えたことは黙っていた方がいいだろう。
とりあえずシャワーを浴びた。その間先ほどのアリスの姿が何度も蘇ってきて大変だったが、よくよく考えてみればタオル1枚でいるアリスも悪いのだ!だって入っていいよって言ったし!
しかしまず謝らなければいけないことに気づき、さっさと身体を洗いバスルームをあとにした。
アリスはベッドに座り下を向いている。
相当怒っているのだろう。
正直躊躇ってしまうけれど、意を決してアリスのもとに歩み寄る。
アリスも近付いてきた事が分かったのか、少し肩を震わせた。
怯えている。
そう感じてしまったのはなぜだろう。アリスが怯える要因がない。
正面に立ち、心の底から謝る。
「さっきは悪かった!この通りだ」
深々と頭を下げる。許してもらえなくても気持ちが伝わればそれでいい。そう思ってアリスの言葉を待っているが、なんの返答もない。正直、出てけや許さないくらいの言葉を予想していたが無視は考えていなかった。
どうすればいいのかわからずアリスの顔を覗くと、、、泣いていた。
「っ!?ご、ごめん!そんなに嫌だったのか!?なんでもする!だから泣かないでくれ…」
アリスが首を横に振る。
じゃあどうして泣いているのか?俺にはわからなかった。
しばらくして落ち着いたアリスが話し始める。
「私…あなたにひどい事言った。頰を叩いた。もとはと言えば私が悪いのに…あなたは謝りに来てくれた…。絶対出て行くと思ってた…なのにあなたはここにいてくれてる………… 私の方こそごめんなさい」
そう言ってまた泣いてしまった。
そうかこの子は寂しいんだ。繋がりが欲しいんだ。近くにいてくれる人が…
そう思ったら胸がすごく痛い。
この子の過去にはなにかがあったのだろう。繋がりを求めるなにかが。
俺とは違うな…
「どこにも行かないよ。まず俺はここを出て行っても他にあてがないし、泣いてる女の子を1人だけ残しておけないからな」
そうやって、にっと笑ってやる。
すると顔を上げ俺の顔を見たアリスがまた泣いてしまう。
「お、おい。なんで泣いちまうんだよ」
「う、嬉しいの…どこにも行かないって言ってくれた事が…嬉しいの…」
なんだろう、すごく胸が熱い。アリスが可愛く見えてしょうがない。俺は本当に変態になってしまったのか!?
俺が頭の中で悶えているうちにアリスは泣き止んだらしく、こっちを見て笑っている。うん。可愛い。
「ありがとう。落ち着いたわ。…そのさっきのは忘れてね!」
「あぁ、善処するよ」
おそらく無理だ。わずかな膨らみとチラッと見えた桃は忘れられない。
「はぁ〜!泣いたら疲れたわ。今日はもう寝ましょう?」
確かに今日はなにかと疲れた。早めに休んだ方がいいだろう。明日からは本格的に学院での授業や訓練が始まるだろうし。
「そうだな。じゃあ俺は床で寝るよ」
「なに言ってるのよ!そんなのダメよ!私が許さない!」
「じゃあどうするんだよ。ベッドは1つしかないだろ」
そうこの部屋にはベッドが1つしかない。まぁ当たり前だが2人いるということは1つ足りないのだ。
しかしアリスは顔を赤らめ
「じ、じゃあこのベッドを2人でつ、つかえばいいじゃない!」
「んなっ!?なに言ってんだよ!いいわけないだろ!」
「なによ!私と寝るのが嫌なの!?」
「い、いや…嫌じゃないが問題があるというか…」
「私がいいって言ってるんだからいいの!ほらさっさと寝るわよ!」
そう言ってベッドの左側をさしてくる。恥ずかしがってたくせに今はすごい剣幕で俺をベッドで寝させようとしてくる。
それからも少し抵抗したのだが、結局アリスの剣幕に負けてしまいベッドで寝ることになった。…頼むぞ俺の理性!
「じゃあ…おやすみ…」
「あぁ、おやすみ」
この夜、すぐ近くから聞こえるリズムのいい寝息のせいで俺の寝不足が決定した。
次からちゃんと戦闘いれていきます。




