第29話 見舞いという名の鍵
カルヴェ子爵家の庭は、手入れが行き届いていた。
春の花が、花壇の縁に沿って等間隔に並んでいる。土の色が新しい。昨日か一昨日に植え替えたか、あるいは水を入れたばかりか、そのどちらかだ。庭師がいることがただ庭を見ればわかる。花の種類も、高さも、配置も、誰かの意図で選ばれている。
ヴォワール家の庭には誰の意図もない。指示を出す者がいなくなって七年が経つ。蕾は自分でできて、咲く日も自分で選ぶ。
比べることを今は意図してはいない。ただ並んで見えた。
カルヴェ家の庭師と、フォンテーヌ家の庭師は、別の指示を受けている。その指示を出した人間の違いが、二つの庭の違いだ。庭を読めば、指示を出した人間が見える。この春にそれを覚えた気がする。ヴォワール家の庭を窓から見続けていたせいかもしれない。
カルヴェ子爵夫人、ソフィーの母は、玄関で笑顔だった。ソフィーに似た背の高さで、ソフィーより声が大きい。「まあ、ヴォワール家のお嬢さん」と言って、私を出迎えた。初めて会ったが、初対面の重さがない人だと、最初の一言でわかった。
「フォンテーヌ家のマルグリット様が心配で、ご挨拶だけでもと思っておりました」とソフィーが言った。
夫人はすぐに頷いた。「あら、それはもちろん。私もね、イザベル様のことが気になっていたの。一緒に参りましょう」と言って、もう外套を手に取っていた。ソフィーが何かを言い終える前に、夫人はすでに動いていた。
ソフィーがこちらを見た。短い視線だった。「お母様はこういう人です」という意味の視線だと、読んだ。言葉にする必要のないことを、ソフィーは言葉にしない。
カルヴェ子爵家とフォンテーヌ侯爵家は、塀を一枚挟んで隣接している。
通用口から入ると、庭が広がっていた。フォンテーヌ家の庭は、カルヴェ家の庭とは別の整然さを持っていた。カルヴェ家の庭が「明るく整えられた」整然さなら、フォンテーヌ家の庭は「管理されている」整然さだ。花壇の縁が鋭い。芝の刈り込みの端が直線をなしている。春の花は咲いているが、どこかに遊びがない。来客に見せるための庭ではなく、あるべき姿を維持するための庭だと思った。
庭師の仕事は確かだ。しかしその庭を誰かが楽しんでいる気配は、今のところ見えない。
マルグリットが三週間、窓からこの庭を見ていたとすれば、毎日この整然さの中にいた。出られない庭を、庭と呼ぶかどうかは別の話だ。
フォンテーヌ侯爵夫人イザベルが、屋敷の扉のところで出迎えた。カルヴェ子爵夫人を見て、笑顔を作った。「まあ、クロティルドさん」と言った。友人に向ける笑顔だと、形の上では読める。
扇を持ったまま、開かなかった。今は開かない。庭から屋敷への動線を確認している。屋敷の扉から右に廊下が伸びている。廊下の先に、階段が見える。二階に上がれば、マルグリットの部屋に近い位置になる可能性が高い。
夫人がこちらに視線を向けた。笑顔で応じた。夫人も笑顔を返した。
侍女がいた。
廊下の途中で、小柄な若い女性が壁際に立っていた。手に布を持っている。掃除か、あるいは何かの用事で廊下にいる体裁を取っている。その目が一瞬、こちらを見た。確認するような目だった。ソフィーが事前に連絡を入れていたのだろう。
ソフィーの友人の侍女が、この廊下にいる。
夫人たちが挨拶を続けている間、侍女に近づいた。周囲への自然な視線の動かし方を維持しながら、侍女のそばを通る。一言だけ、低く言った。「マルグリット様のお部屋へ案内いただけますか?」
侍女が頷いた。声は出さなかった。
「少しお手洗いをお借りしてよろしいですか?」とカルヴェ子爵夫人に告げた。夫人が「どうぞ、どうぞ」と言った。フォンテーヌ侯爵夫人は笑顔を保ったまま、特に反応しなかった。ソフィーの視線がこちらを追った。「後で」という意味で、ほんのわずかに頷いた。ソフィーが頷き返した。
侍女の後について、廊下を進んだ。
廊下は静かだった。屋敷の下の階から夫人たちの会話が微かに届いている。それだけだ。侍女の足音は軽く、速い。迷いがない歩き方だ。この廊下を何度も往復してきた人間の歩き方だ。マルグリットの部屋へ食事を運び、鍵を開け、閉め、また開けてきた。その繰り返しを、この足音が知っている。
扉の前で、侍女が立ち止まった。
廊下の突き当たり。窓のない廊下の端に、木の扉が一枚あった。
扉に外から鍵がかかっていた。
南京錠ではない。扉の取っ手の横に、外付けの金具が取り付けられている。最初からあったものではない、という作りをしている。後から付けたものだ。三週間前か、あるいはマルグリットが逃げようとした後に付け直されたものか。どちらにせよ、外から施錠するために誰かが意図して設置した。
侍女が鍵を取り出して開けた。
扉を開けると窓際に人影があった。
マルグリット・ド・フォンテーヌが、窓の外を見ていた。振り向いた。
やつれている。三週間の部屋の生活が、顔の輪郭に出ている。頬の肉が薄くなっている。しかし目は澄んでいた。目が合った瞬間、表情に何かが走った。「助けに来た人」という顔ではなかった。「この人は何かわかっている」という顔だった。
扇を開いた。
少し、待った。
部屋の中に光がある。窓が南向きで、春の昼の光が真っすぐに入っている。フォンテーヌ家の整然とした庭が、窓の下に見える。マルグリットはずっとその庭を見ていたのだと気づいた。三週間、窓から庭を見ていた。庭には出られない。
扇を持ったまま、マルグリットの輪郭を見た。
何も見えなかった。
待った。夜会では一瞬で見えた。記録院の書庫でも見えるときはすぐに見えた。今回は待った。待っても何も見えなかった。この少女には綻びがない。
扇を閉じた。
手の力が気づかないうちに緩んでいた。気づいたのは扇を閉じた後だった。扇が手の中で軽く転がるほど、握りが緩んでいた。
ソフィーはまだ下の階にいる。夫人たちと一緒にいる。自分の判断でそこに残っている。頼んだのではない。ソフィーが察して動いた。
侍女が廊下に出て、扉を引いた。完全に閉じず、わずかに開いたままにした。聞こえないが、外に誰かが来ればわかる、その程度の隙間だった。
部屋に二人きりになった。
部屋は思ったより明るかった。
三週間ここにいる人間の部屋だ。閉じ込められた空間として想像していたが、窓が大きく、光は十分に入っている。本が数冊、椅子の横に積まれている。手芸の道具も見えた。閉じ込められていても、時間を使う手段は残されていた。
マルグリットが立ち上がりかけた。「どうぞ、座ったままで」と言った。マルグリットが座り直した。
マルグリットが口を開く前に、先に言った。
「聞かせていただけますか。何があったのかを」
マルグリットが、小さく頷いた。




