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学園の食堂を手に入れた私は、その後目まぐるしい日々を送ることとなった。
人材を集め育てつつ、新たな料理に調理法、調味料を製作するなど、それはまぁ精力的に動いた。
時には睡眠時間を削ってまで作業をしたりもしたが、それもすべては己がおいしいご飯を食べたいがため。
だから全然辛いとは思わなかった。
むしろその逆で、いつしか人材育成も開発も楽しくなってきてしまい、これでは時間が足りないと悩むようになった。
『別に学園に行かなくてもいいのでは?』
よく考えてみれば今の私には前世の記憶もあるし、断罪される可能性のある学園にわざわざ通う必要はない。
それならこうして好きなことに時間を使ったほうが有意義ではないか。
そう結論を出した私は、父に伝えた。
たださすがに反対されるだろうと思っていたのだが、父のみならず母も兄までもが、学園に入学しなくてもいいと言ってくれたのだ。
そんなまさかの結果に、さすがの私も苦笑いするしかなかった。
まぁ要するに、おいしいご飯は正義なのだと証明されたのである。
◇
入学式から三カ月後。
「ローズウッド嬢。どうか私と!」
「いいや俺と!」
「どけ! ああ、あなたはこの世に舞い降りた女神!」
「ぜひ次期商会長である私の妻として!」
「我が国で最高の女性の地位を捧げたく!」
「彼女は私との婚約を望んでいる! だからお前らは諦めろ!」
「⋯⋯えーっと、皆さま。まもなく食堂を開ける時間なので、帰ってくださいます? 邪魔です」
私は何度目ともなるこの光景に、ため息をついた。
一体何事かって?それはこっちが聞きたいくらいである。
私の目の前には、我こそはと名乗りを上げる六人の男性。みな制服を着ていることから、学園の生徒だということが分かる。
そしてその誰しもが、国宝級と言わんばかりのイケメンで。
もうお気づきだろう。何を隠そう、この六人は『恋レシ』の攻略対象である。
⋯⋯しかし六人もイケメンが揃うと、うるさく感じるから不思議だ。顔面が。
「そんなつれないことは言わず、どうか私の妃に」
「「「「「私(俺、僕)の」」」」」
それに邪魔だとはっきりと言ったのに、しつこい。
今は最後の準備で忙しい時間だというのに。というか授業はどうしたのか。
(この人たちは何やってるのよ⋯⋯)
いや、たしかに『恋レシ』的には、学園はヒロインとの愛情を育む場ではある。
でもその肝心のヒロインが入学してくるのはまだ先のこと。
それなら今は学生らしくしっかりと学業に邁進してほしい。
え、私? 私は学生じゃないから例外だ。それにきちんと自分の仕事をこなしているからね。
目の前のイケメンたちはまだ飽きないようで、言い合いを続けている。
けれどもういい加減迷惑だ。
王太子や王子もいるが、ここはローズウッド家の領域。その領域で騒ぐのであれば、覚悟してもらおう。
私は静かに口を開いた。
「⋯⋯仕方ありません。授業をサボるような生徒には、食事は無しということに」
「「「「「「そう言えば用事が!」」」」」」
はい。皆さん息ぴったりですね。
というか用事ってなんだって感じだけど、あえてそこには触れません。だって面倒なので。
「あら、そうなんですね。それじゃあさようなら」
そう言って笑顔で手を振れば、蜘蛛の子を散らすように攻略対象たちは去っていった。




