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悪役令嬢ですが、気づけばヒロインのお助けキャラに迫られていました  作者: Na20


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5

 

『花より団子』


 前世の私が、友人によく言われていた言葉だ。自分でもまさにそのとおりだと思う。

 恋に興味がないわけではなかったのだが、恋よりもおいしいご飯の方が、人生において重要度が高かった。

 おいしいご飯を食べるのが好きだったせいもあり、料理は割と好きだったし、腕もそこそこだったと自負している。

 まぁ結婚はだいぶ遅くなってしまったけれど。

 それでも『おいしいね』と言って、食卓を笑顔で囲める夫と出会えたの幸運だったと思う。


 ⋯⋯なんて、前世を思い出して少し感傷的になってしまったが、今の私が生きているのは間違いなく『恋レシ』の世界。

 屋敷内の改革はすぐにできるはず。だからまだおいしいご飯を諦めてはいけない。

 ただ貴族令嬢が厨房に立つのはダメだと、父や母には言われそうではある。

 まぁそんなことは知ったこっちゃないが。



「屋敷の中はそれでいいわ。でも一年後には、学園に入学するのよね⋯⋯」



 私は再び頭を抱えた。

 たとえ屋敷の中の改革ができたとしても、今から一年後には、ゲームの舞台となる学園に入学しなければならない。

 そこで発生するのがランチ問題だ。

 朝と夜は家でおいしいご飯を食べられたとしても、昼がまずかったら、それはトータルして最悪な一日になる。

 そんなことはあってはならない。



「学園でもおいしいご飯を食べる方法⋯⋯」



 私は考えに考えた。

 この問題が発生するのは一年後。だからまだ時間はある、なんて思ったら大間違いだ。

 この世界に魔法はない。今から土台作りを始めなければ、いざという時に間に合わなかったなんて事態になりかねない。

 幸いローズウッド公爵家には権力もお金もある。

 それならば、前世の私ではできないような方法だってできるはずだ。



「⋯⋯うん、これだ。これならいける!」



 そしてランチ問題を解決するべく、思いついたある方法。

 善は急げ、思い立ったが吉日。

 私は部屋から飛び出し、走り出した。



「お嬢様!?」



 すれ違う使用人たちが驚いている。

 そりゃそうだ。貴族の令嬢は走らないのが常識。

 けれど今はそんな常識なんかより、大切なものがある。


 え?私が今から何かしちゃうとストーリーが狂うって?

 そんなの私の知ったこっちゃない。


 ヒロインと攻略対象たちが結ばれないかも?

 一刻も早くおいしいご飯を食べる。申し訳ないが、そのために必要な犠牲です。



(だって生きるのに必要なのは、愛よりご飯だもの!)




 ――バンッ!



「お父様!」


「うおっ! ⋯⋯なんだアンゼリカか。驚かさないでくれ」


「それは失礼しました!」


「あ、ああ。⋯⋯いや、そもそもノックも無しに扉を開けるのは淑女としてだな」



 もちろんそれは分かっている。ただ今は急いでいたから忘れてしまっただけ。しかしそう言い訳する時間すらも惜しい。

 それに何やらお説教が始まりそうな気配だ。それはいけない。



「お父様!」



 ずい、と父の前へと進み出る。



「っ、な、なんだ?」



 父はこれまでにない娘の様子に戸惑っている様子。

 なんせ今までのアンゼリカとはだいぶ性格が違うからね。

 まぁ少しずつ慣れてもらうしかない。



「お願いがあります!」


「お願い? ⋯⋯ああ、王太子殿下との婚約のことか。えっと、アンゼリカ。何度も言うがそれはもう少ししてからでも⋯⋯」


「いいえ! そんなつまらない話ではありません!」


「え⋯⋯? 今、王太子殿下との婚約をつまらないって言った? 殿下にゾッコンの娘が!?」



 父が何やらうるさいが、今はそんな腹の膨れない話なんてどうでもいい。

 たしかに前世の記憶を思い出す前のアンゼリカは、王太子殿下にゾッコンで、どうにかして彼の婚約者になりたいと父にねだっていた。

 結果として学園入学と同時に婚約が結ばれることになるのだが、今の私は別に王太子なんてどうでもいい。

 なんてったって私の好みは『おいしい』と言って楽しく幸せそうにご飯を食べる人。

 いくら見た目がよくても、無愛想かつ、私を断罪する可能性のある男なんて御免なのである。



「それはもう過去の話です。 なのでキレイさっぱり忘れてください!」


「えぇ⋯⋯?」


「今はそんなつまらないことより、こっちの方が重要です!」


「⋯⋯一体、そのお願いとはなんなんだ?」



 まだ戸惑いはうかがえるものの、さすが公爵様だ。

 話が早くて助かる。



「はい。お願いというのは――」

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