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「ん。すごくおいしい」
そう言って幸せそうに微笑むユリウス先生。
その笑顔に、胸のキュンキュンが止まらない。
(ああ! こんなに近くで推しの笑顔を拝めるなんて⋯⋯)
あのあとはどうなることかと思ったが、ユリウス先生は今、私が手土産として持参したケーキを食べ、幸せそうな表情を浮かべている。
その表情に私はにやけそうになるが、そんなだらしない顔は見せられないと、表情筋に力を入れなんとか耐えていた。
「これもローズウッド嬢の手作りなんですよね?」
「はい。お口に合いましたか?」
「うん。すごくおいしい。それにすごくいい匂いもする。これはもしかしてブランデーですか?」
「正解です」
今日のお茶会のために私が用意したのは、ブランデーケーキだ。
パウンドケーキを焼いたあと、水と砂糖を煮詰めたシロップにブランデーを加えたものをたっぷりと塗る。
そしてそれを一日置けば、しっとりと芳醇な香り漂うブランデーケーキの出来上がりだ。
前世の私はあまりお酒を飲まなかったが、これは好きで自分でよく作って食べていた。
子どもには少しお酒がきついかもしれないので、学食には出していない。
けれど大人であるユリウス先生の口には合うかと思い手土産にと選んだが、喜んでくれてよかった。
「本当においしかったよ。⋯⋯もうなくなっちゃったのが残念ですけど」
そう言って、空になった皿を寂しそうに見つめるユリウス先生。
その姿すらも様になるなぁと心のシャッターを押しまくりながら、私は平然を装い口を開いた。
「ふふ。実はもう一本お持ちしているので、よかったらあとで食べてくださいね」
「!」
私の言葉にキラキラと目を輝かせるユリウス先生。
これはきっとこのあとすぐにでも食べてしまいそうな勢いだ。
「あっ。でも明日の方がよりケーキがしっとりとしますし、ブランデーの香りも柔らかくなるので、今日とはまた違った味わいを楽しめますよ」
だけどせっかくならもっと楽しんでほしいと、もう一日待ってくれと伝えた。
(いや、好きに食べるのが一番なのは分かってるよ? でも先生には、私の好きな味も食べてほしいな、なんて)
おいしいのはたしかなので、ちょっとの邪な願望は見逃してほしい。
「そうなんですな。分かりました。明日まで我慢します」
少し残念そうな、でもどこか嬉しそうな、そんな表情のユリウス先生。
「⋯⋯ふふ」
まるで子どものような表情に、思わず笑みがこぼれた。




