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第6話:信じれる人

Sideリンでお送りします。

(すごい…。)


シンが黒い大きな魔物(ナイトメアウルフ)に勝った。


初めて見た時、恐ろしかった。

私には戦う力がないことを自覚したばかりだ。

不安でしょうがなかった。

全身が震えてしかたがなかった。


でも、シンは大丈夫だと言ってくれた。


あの時と同じように…。


僕を助けてくれた声。


僕が信じたいと、思えた人。


いや……。


信じると、そう決めた人。



そして彼の言った通り本当に勝った。しかも無傷だ。

この人なら(魔王)がそばにいても大丈夫。

心からそう思えた。





感嘆に浸っているとシンは魔物に何かしだした。


・・・気になる。


僕からちゃんと話しかけるのは初めてかも。ちょっと緊張する。


「それ…何してるの?」

「んー?血抜き。簡単にだけどな。」


シンは普通に答えてくれた。


「血抜き?」

「おう。こうするとで肉とかから臭みが取れやすいんだ。」

「魔物って食べれるの?」

「え?食ったことないの?」

「多分…。」

「そっか、結構うまいぞ?今度食ってみろよ」


美味しいんだ…初めて知ったかも。


「なんであの時、目を瞑ってて欲しいって言ったの?」


シンは少し言い淀んだ後、


「え~と、リンは魔法というか魔力が制御出来てないだろ?」

「例えばリフレクトシールド…ぁあ、リンが使った魔法な。あれとかが戦いの最中に暴発でもしたら大変だ。」

「どうして?」

「う〜ん…なんて言ったらいいかな…。」


ちょっと考えた後……すまんと言った後に


「変な言い方だけど、戦闘中リンに邪魔されないため…だから?」

「じゃ、邪魔?」


確かに僕は無力だ。

つい先程、戦う力がないことを自覚したばかりだ…。


「ごめん。ストレートに言い過ぎた。回りくどい言い方苦手でさ…理由を説明させてくれ。」


落ち込んでいると思われたかな?

シンはすぐに謝罪した後、理由を話してくれた。


「リフレクトシールドだが、俺の動きが制限されてしまう可能性がある。なんせ盾だからな。立ち回りの障害になったかもしれない。」

「仮に攻撃系魔法だとしても同じだ、どんなことが出来るかわからない以上俺が巻き込まれたり、最悪リンが狙われる可能性があった。」


「僕は魔法の使い方が分からないのに?」


「人ってのは防衛本能から出来ないことが咄嗟に出来しまうものなんだ。」


それのお陰で助かることもあるんだがな、とシンは続けて言った。


「まぁなんだ。要するに目を閉じて欲しかったのはリンに魔法を使わせないため。」

「俺が自由に動けないと守れるものも守れないだろ?」


僕に魔法を使わせないため…。

あの一瞬でそこまで考えてたんだ。


僕を守るため…?


『どうして?』


「ん?」

「どうしてそこまで守ろうとしてくれるの?」


ずっと気になってた。


「どうしてあの時、僕を助けてくれたの?」


どうしても聞きたくなった。


「君は勇者で僕は魔王だった。敵だった僕を、なんで助けてくれたの?」

「俺が決めたことだから。」


即答だった。


「俺さ、誰かが不幸で終わる物語(バットエンド)が嫌いなんだ。」

「一応、苦難とかを乗り越えるのは好きだよ?絶望から成り上がっていくのとか。」

「物語も人生も、楽しい話、嬉しい思い出があって、つらいこと、もしかしたら悲しい別れとかあるかもしれない。」



「でも最後は幸せ(ハッピーエンド)で終わってほしい…。そう思ってる。」


これはきっとシンの本音だ。

そして少し悲観的で…それでいて優しい声で…


「俺は物語の主人公に憧れてたんだよ。」

「ご都合主義と言われてもいい。強くて人を助けられる。世界を救い、全てを救う。そんな英雄にね。」


「でも世界は甘くない。幸せの数以上に不幸がある。」

「全てを救うなんて夢のまた夢だ。」

「俺は勇者になったが、全てを救えた訳じゃない。」


「結局、俺の手は…この距離しか届かない。」


そんなの…当たり前だ。

全てを救う。それはきっと神様にだってできないことだ。

それでもそう言うのはきっと過去に何かあったからなのか…。



何か伝えたい。そう思った。

でも言いたい言葉が思いつかない。

そんな中シンは「でも」と言葉を続ける。


「でも…それでも…いや、だからこそ。目の前で誰かが苦しんでいるならさ、助けたくなるんだよ。」


自己満足な偽善者って言われたことあるけどね…と、


「要するに俺のエゴだ。」


シンは苦笑いしながら言った。


「シンは…」


言葉が見つからない。でも伝えたいことがある。


「僕はシンに救われた。」


こんなことしか言えないけど、伝わってほしいと思う…。


「僕にとってシンは英雄だ!」


伝われと願う!


「『たから、ありがとう。僕を助けてくれて。』」


「・・・その言葉だけで救われるよ。」


そういって笑ってくれた。

Topic : シン

転生者であり、物語の主人公になりたかった少年。

バッドエンド嫌いで見ているだけで気分が悪くなる。

そのためかたとえ偽善者と呼ばれようと、全力でハッピーエンドを目指す。


Topic : 魂の同化

簡単に言うとリンの魂にシンの魂が混じっている状態です。

滅多に起こることではありません。

主にリンの性格や能力が少しシンに近くなります。

ほかにもいろいろあります。

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