第2話:わりとだいじなこと
「落ち着いた?」
魔王に問いかけると頷いてくれた。
どうやら泣き止んだらしい。
「よし、そしたらまず最初に・・・服を着ようか...。」
「・・・えっ?」
「えっ?」
・・・まさかこいつ、気づいてないのか?
そうそう、自分の今の状態よ~く見て。
俺のコートしか羽織ってないよ?
「う、うわあぁぁぁぁ!!」
顔を真っ赤にしてその場でうずくまってしまった。そんな大声出るんだ。
そしてまた魔法が発動してる。
・・・よし、服出すか!
予備くらい持ってたはずだ。
「ストレージ!」
・・・あれ?
「ストレージ!!」
おかしい...何も起こらないぞ?
ストレージは魂の勇者としての能力を用いた収納魔法だ。
使えない訳が...あ?
-勇者としての能力を一部封印します。
もしかして、女神さまに封印されてる?
「お、俺の便利魔法がぁぁああ!!」
「うわぁなにごと!?」
膝から崩れ落ちた。
魔王に心配されたがちょっとすぐには立ち直れそうにない。
だってストレージだよ?アイテムたくさん持ち運べてどこでも出せる異世界定番の魔法だよ?
急に使えなくなって中身が取り...中身どうなったんだ?
封印と一緒に消滅してたりでもしたら...。
・・・地面に突っ伏した。
「ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァァ...」
「・・・怖い」
すまんな。人は感情を抑えられないものだ。
さて、服をどうしたものが...。
てかそもそもなんで着てないんだよ?復活の時に着せてやれよ女神様...。
いや、担当したのは別の神様だっけか?何か理由でもあったりするのか?
自分の格好を確認する。魔王と闘ってた時に着ていた服だ。
あれ?少しほつれている。
どうやら最後に着ていた服が再生されたらしい。
「そういえば魔王?お前魔王の時って服とか鎧とかどうしてたの?」
「魔王の時?」
しばらく考え込んだ後、
「曖昧だけど、魔力や瘴気を固めたものを纏っていた気がする。確か魔装って呼ばれてた」
「魔装?」
「うん。身体の動きに合わせて任意で形を変えられるから見た目の割に軽くて動きやすかった気がする」
あれ?それって魔装以外は何も着てなかったってことでは?
これ以上は考えてはいけない。
「と、とりあえず今は服がないからそのコートの前を閉じといて」
「・・・わかった」
さて、これからどうするか。
「ねぇ、閉めたけど...」
「ん?なにか問題があったか?」
「・・・前が苦しい」
・・・そう言われても俺にどうしろと?
「ぉ、男用の服なので我慢してください」
「むぅ...」
裸よりマシだけどこれはこれでなんか危ない気が...。
これ以上は考えてはいけない!
話題を変えよう。気を取り直すために一つ咳払いをして、
「コホン、そういえば自己紹介をしていなかったな」
「俺の名前はシン。魂の勇者だ。いや力を封印されてるからおそらく「だった」が正解かもしれないな」
「シン...」
「あんたの名前は?」
「僕は...僕は...?」
なにやら魔王は考え込んでしまった。
『名前?』
また、声が聞こえた。
「もしかして名前、覚えてないのか?」
「っ! うん...あった気がするけど、今までずっと魔王って呼ばれてきたから...」
まじか、参ったな。
「もう魔王じゃなくなったんだ、その呼び名は要らないだろ。そうだ!この際新しく名前を決めちゃおうぜ!」
「新しい...名前?」
「おうよ!」
名前がないなら名前を付ける。よくある話だろ。
「名前...名前...。ねぇ?」
「おう、どうした?」
「シンが付けてくれないか?」
「おう、ぉう?」
「シンが付けた名前がいい。」
・・・まじか、参ったな。
俺のネーミングセンスは賛否両論だぞ?
かつて仲間にセンスがあるのかないのかわからないといわれた始末だ。
んでもって人の名前なんて付けたことがない...いやあったか。
「あまり、期待するなよ?」
名前か・・・。
しばらく考えた後、
「リン」
女神曰く、魂が同化している。イコールで繋がっているようなもんだろ。
繋がるの英語:Linkから取ってリンだ。
「リン...うんそれがいい。気に入った。」
そう言ってリンは初めて笑った。
Topic:ストレージについて
この世界の人は心域と呼ばれるものがあります。
ここには実態の無いものをしまうことができます。
一般的に魔術式などが該当します。
記憶との相違点は補完するということ。
忘れることがなくいつでも引き出せる点です。
要するに心の魔術書みたいなものです。
広さに個人差がありますが、大きいほど多くの術式を補完できます。
優れた魔術師は心域が大きいのです。
シンはこの心域のサイズが魂の勇者の能力によって無限に等しい状態です。
そして実態のあるものも収納できます。
心域を用いたアイテムボックス、それがストレージなのです。
Topic:復活・再生を担当した神様
実は別世界の神様。身体情報を読み解き再生を行う。
魔王の場合は瘴気の影響なのか情報が断片的にしか得られなかった。
「服の情報?そんなもんなかったんじゃが?」




